第99話 豪華な電車ですね。
「さて、じゃあ探す場所はこの2階か。」
目白さんのいる車両を出て先ほどの場所に戻ってきた。
二階への階段を登った俺は扉に書いてある文字を読んだ。
『これより先客室専用エリア』
そう書いてあった。
その扉を先ほど拾った鍵で開けて客室の中へと入っていった。
列車の中だからといっても客室はかなりの量があり中もなかなか広く作られていた。
「何もなしか。後はあそこだけ。」
一番奥にある扉。
客室専用のエリアのはずなのに何故か立ち入り禁止になっている部屋。
ギギギギ、と重々しい錆びた音を立てて扉を開けた。
「なるほどな。」
そこは客室で見たものがたくさん置かれていた。
備品倉庫というわけだった。
「これは、列車の地図か。貰っておくか。」
備品の置かれた棚の端の方に置かれた地図を手に取った。
そこには列車の各車両について大まかに書いてあった。
『一両車:車掌室
二両車:一階、貨物車 二階 社員休暇室
三両車:一階、二階ともに客室
四両車:一階 座席 二階 客室
五両車:一階 食堂 二階 キッチン』
そう地図と共に書かれていた。
「豪華な電車だな。さっきいたのが五両車か。ならここが四両車になるのか。」
先ほど開かなかった五両車の扉はおそらく外に繋がっているものだろう。
そんな鍵を管理している場所といえば思いつく場所は一つ。
「車掌室にいくか。」
そう言って俺は四両車の二階から一階に降りて三両目に向かった。
三両車には先ほど剣で切った人が倒れていた。
「いなくなっていたらどうするか迷っていたけど、そのままでよかった。」
その人の横を通って俺は二両車に向かった。
二両車の貨物車は鍵が掛かっていたので俺は二階に上がる事にした。
「ウォッ!アァッッ……」
二階の社員休暇室に入った途端聞こえた声はそれだった。
「何をしている!」
前には黒い何かが男の口に何かを詰め込んでいた。
黒い何かは俺の方を見てペチャリと音を立てて床に沈んで行った。
「アァッッッ!!」
床に倒れている人はそう言って体を暴れさせていた。
やがて男は倒れたまま動かなくなった。
「あの……」
「ウァァ……アァッッ!!」
声をかけた時、男はそう叫んで起き上がった。
その姿は先ほどまで見てきた人たちとほとんど変わらなかった。
「またかよっ。」
剣に魔力を込めて力を乗せ、男に対して斬りかかった。
血しぶきを上げて男はそのまま地面に倒れた。
「それにしてさっきのは一体何だったんだ……?」
黒い何かが沈んで行った場所には穴が空いているわけでもなかった。
床の隙間から中を見てみるもそこは真っ暗で何も見えない。
「こういうの本当に好きだな。」
そう一言呟いて俺は社員休暇室を通って一階に降りた。
「ここが車掌室だけど。」
車掌室の扉に触れて俺は扉が閉まっているかどうかを確かめた。
「まあ、開いてるわけないわな。」
その前の近くにあった鍵を見つけた。
こんなところに無造作に置かれている事に疑問を思いつつ鍵を取った。
「これしかないわけか。」
鍵を顔の前まで近づけてどこの鍵かを確かめた。
「こんなところに無造作に置かれているけどいいのか?」
そこにあったのは目の前の閉まっている扉の鍵。
すなわち、車掌室の鍵だった。
車掌室の鍵穴にその鍵をさしてそのまま車掌室の中に入った。
「酷い有様だな。」
本来列車には車掌がいるはずなのにその車掌は倒れて死んでいた。
車掌室には警告音のようなものが響いていた。
「安全装置を作動させてください。ブレーキが作動しません。」
そう警告音が響いていた。
操縦席のレバーが動かないことを確認した俺はそう察した。
「問題はどう止めるかだよな。」
列車の止め方が分からない俺は車掌室で倒れる車掌のズボンから鍵を取って目白さんのいる五号車に向かった。