第97話 サンドイッチ
「またかよ……」
「どうかしたの?」
石の奥の道は思っていたよりも長く五分程度したところで俺は違和感に気づいた。
その違和感とは魔法が使えなくなっていたことだ。
「魔力がどんどん吸い込まれていって魔法が使えないようになってます。」
「本当ね。」
目白さんも何かを確認したのか頷いた。
「てことはここが古代の先人の言ってたダンジョンで間違いなさそうだな。」
「魔力を使えなくしてどうなるのかしらね。」
目白さんは腰に携えていた剣を抜いて言った。
「何かあるわね。」
道を歩いていくとその先に何かがあった。
歩いて行き近くによるとそれが何かがよく分かった。
「古代の先人は本当にこれが好きだな。」
前にあったのはゲートのようなもの。
俺と目白さんが未来のセツシートに飛ばされた時にも見たものだ。
一応確認のためにゲートの中にコインを投げ入れてみた。
地面に落ちると共にそのコインは両側の壁に押されて潰された。
「今回はそうなるのね。」
前回はレーザーのようなもので焼き切っていたが今回は潰されたようだ。
そのまま何も知らずに入っていけば潰された肉塊のようになっていただろう。
「これじゃ、サンドイッチになってしまいますね。」
「何言ってるのよ。バカ……」
そう言っている目白さんの口元は少しだけ笑っているように見えた。
「でも、魔力もないから上からの石も止めれませんね。目白さんの剣なら行けるんじゃ……」
「これを見てから言ったらどう?」
剣を抜きゲートの近くの石向かって攻撃をするも剣は弾かれた。
対する石は目白さんが攻撃したにも関わらず傷一つなかった。
そこで俺は石を触って何かあるのかどうかを調べてみた。
「防御結界ですか?」
「そのようね。本当に面倒ね。」
石が壊さないことを知った俺たちは大人しく前回と同じようにした。
近くにある箱の中に金属製のものを全て入れてゲートを通った。
「今回はどうなるんでしょうかね。」
「さあ。行ってみてからのお楽しみね。」
目白さんはそう言って前へ進んで行った。
「これは剣ですか?」
「随分と錆びているけど強度は十分ね。」
目白さんは棚のようなところにある剣を一本取った。
俺も適当に剣を選んで目白さんが行った方向に進んだ。
先を歩いていた目白さんを追って歩こうとした時、俺は急に目の前が明るくなった。
「全く……なんでいつもこういう風に強制的に分かれるのよ……」
目白さんは辺りを見回しながら言った。
「ここは電車の中なの……?」
窓の外を見てみると雨が降り荒れているが外の景色は動いているように見える。
辺りの座席は木でできて灯りもレトロで豪華さを演出している。
その景色を見て目白さんは前回と同じようなダンジョンが始まったことを察した。
「随分と綺麗なようだけど。今回は何があるのかしら。」
座っていた席を立ち通路に立って前を見た。
「魔力は相変わらず使えないようね。」
先ほどの確認と同じように軽く剣を一本作ろうとするが魔力は相変わらず使えなかった。
次に腰に携えている剣を抜き少し力を込めて前に振り下ろした。
数メートル先にまで斬撃は届き木でできた地面はバキバキっと音を立てて割れた。
「剣に魔力を込めるのは大丈夫なのね。」
剣を振り切って鞘に収めながら目白さんは言った。
剣を使えない人にとってはこれは何の力にもならないが目白さんは違う。
恐らくこの世界でも類を見ないほどに剣の才能を磨き上げて来た。
そんな目白さんの剣に魔力を込めるのことが出来るとはどういうことか。
負けるのは逆に珍しい。
目白さんは前へ歩き前方の扉を開けた。
バタン、と音がして席に座っていた男が地面に倒れた。
「大、丈夫です…か……?」
警戒しながら近づき男の体を顔が見えるように回した。
男は見た感じ寝ているだけのように見えたので、椅子に戻して目白さんは先に進む事にした。
「何なのよ。全く……」
扉に手をかけたが扉は開かなかった。
すると突然目白さんの首は後ろから誰かに掴まれた。
「クッ…アッ……ンアッ…………」
息ができない中で目白さんが見たのは先ほど地面に倒れていた男だった。
目の前がどんどんと暗くなっていった。
もう終わりかと思って諦めかけていた。
しかし後ろから誰かが来て男の腕を切り落とした。
それによって目白さんは地面に足をつけることが出来て息を整えた。