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#クラクション(雪日向渓國はコンテニュー出来ないらしい)_2

[###]


 どういう訳か、女を押し倒す格好になっていた。

 それは良い。問題は、俺の顔がやたら柔らかい部分にあったという点だ。

 反射的に手で柔らかい部分を確かめる……ふむ。

「D……いや、C+だな」

 仕事柄、服の上からでもサイズを当てるくらい簡単な俺としては、今回も容易だった。スーパーゼノはユーザーの細かな身体の情報をトレースするため、胸のサイズもかなり正確に算出されるらしい――って

「いったぁー……なんなんですか今の挙動は……ぶつかった瞬間かなり強引に身体が倒れ……って、ん?? ん? ん!?」

 素っ頓狂な声が驚きに変わった。

「あ、あ、あの、あの! なななな何をされてるんです!?!?」

「下着のサイズが合ってないぞ。もう少し小さいサイズの方が」

「待て待て待て待てえええい! 何をしてるかと訊いてるんです! そんな人のブラのサイズをご明察しなくても――って、そうじゃない! 早く離れてくださいよ! あ、ちょっ、や、だめっ、今の手つきはアウトですからあ!!!」

 ドゴっ、と思い切り蹴飛ばされ、ようやく解放される。女の方は今の衝撃でガスマスクを落としたらしく、素顔が見えており涙目になっていた。かなり若かった。

「ぐっ、まさか勝てないと踏んでこんなセクハラ行為をされるとは……」

「すまん。触っただけでカップ数特定するのはもう職業病なんだ」

「そっちの謝罪ですか! ていうか何ですかその職業……あーいや、なんとなく察しがついたので答えて頂かなくて結構ですけど。と、とにかく! これはこれでハラスメント行為で通報しますからね!」

 あわあわとしながらメニューを開き通報の画面を開こうとするガスマスク(マスクしてないけど)。けど、セクハラ通報のページはグレーアウトしていたようで唖然としていた。

「なんで……! なんで通報出来ないんですか!?」

「ここはR18マップだからな。入った時点でセクシャルな行為は容認したものとされるんだ」

 このマップは新参者なのか、知らなかったようで「そんなぁ」と落胆される。俺に言われてもしょうがないので辞めてほしいが……いや、それよりも。

 ――このマップでも、学園と同じくラッキースケベが起こる方が気になる(そっちか)

 これはどういう事だろうか。学園内の機能だと思っていたが、サーバーを違えていても起きるだなんて。

 ふむ。あとでロニに訊くべきだな。

「女。今のはすまなかった。別に俺の意思であの体勢になった訳じゃないが、他マップだとハラスメント行為だ。謝る」

 とりあえず襲撃者であるにせよ、ニュービーに無理矢理セクハラしたのは後が怖いので謝罪だけしておく。下衆な仕事をしているが、ユーザーに恨まれるの事はしたくない。あくまで合意の上がモットーだ。

「ああいえ。私もちょっと浅学が過ぎましたし、事故でしょうがないという事にします。騒いじゃってすみません。では戦いの続きを――あれ? なんか誤魔化されてる気が」

「ほら、マスク落としてたぞ」

「あ、ご丁寧にありがとうございます……んん? 上手く丸め込まれてません? これ」

 だいぶちょろいだけだろうが、とりあえず恨みを買われたりは無さそうなので安心していいだろう。気を取り直してハンドガンを構えると、向こうもいそいそと武器を構え直した。一応襲撃者としての任務は全うするつもりらしい。

「いいでしょう。近距離戦に持ち込み辛い相手なら、イマジンを中長距離対応に変形させるのみゅ――のみ、です!」

「噛んだな」

「……触れないでください」

 バツが悪そうにしつつ、ガスマスク女が切り替えてイマジンを変形させる。手元のスイッチを指で器用に押し、ガンシールドのような形になる。デカい見た目をしているが、重そうにはしていない事から、かなり使い慣れているんだろう。

「装填――これで終わりにしますよ。覚悟してください」

 ガンシールドの銃口部分に光の粒子がフラクタル図のように重なり、集まる。実弾ではなくエネルギー砲のようだ。見た目範囲も広くなりそうだ。

「これは逃げるしか」

「もう遅いですよ――イマジン形態Ⅳ、発射まで3、2、1」

 まずい。エネルギー砲の影響か空気に熱が帯び、動こうとすると肌が熱い。身動きは取れるがどこかに身を隠さないと確実に死ぬ。けどさっきの暴発のせいで隠れられる場所がない。建物に入っても建物ごと壊される!

 くっ、ここまでか。


「発射!砲撃"天帝 天馬の道"!」


 その言葉に顔を上げた瞬間、俺の目の前には隕石のような巨大なエネルギー弾と、輻射熱によって周りが赤くなっていたのが分かった。

 ああ、死ぬんだな。そう思って目を閉じる時、どこか見覚えのある小さな羽虫が俺の前に飛んでいたのが見えた。


 それ以外の情報はもう、何も無かった。


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