表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/41

4


 幼なじみのメンツで中庭に移動すると、そこには同年代の1人の少年がいた。


 身なりから同じ貴族であろう。青色の髪に褐色の肌を彼は誇っていた。


 「じゃあ、始めるか」


 ヘンリー王子はそう言うと、少年の腹に蹴りを入れた。


 それを見たわたしは思わず呆気にとられてしまう。


 ――何してるのよ。こいつ。


 それに続き、カインも倒れた少年に蹴りを入れる。少年は抵抗もせず、苦しそうに耐えていた。


 「なんでこんなことするの!?」


 わたしは思わず、声に出してしまった。隣にいるカナリアがふふっと笑いをこぼす。


 「エレノア、忘れちゃったの? 今はクロサリア人がこの土地を統治しているのよ。ゲルン人なんて、好きにしていいのよ」


 カナリアはまるで小鳥が囀るようにそう言った。


 おかしい。そんなのはおかしいし、わたしはそんなこと知らない。ゲームには国勢状況など一切描かれていなかった。


 わたしは戸惑いのままに少年が蹴られていくのを眺める。


 こんなのおかしいじゃない。

 人を蹴って、それが正しい?

 人を蔑んで、それが正しい? 

 人をいじめて、それが正しい?


 そんな正しさなんて、絶対間違っている。

 わたしは一歩前へと歩み出た。


 「やめなさい」


 わたしははっきりとした輪郭を持って声を出した。


 2人は一瞬蹴る動作をやめ、驚いたようにこちらを見る。


 「エレノア、どうしたんだよ」

 「常識じゃないか、こんなこと。今日の君はおかしいよ」


 常識? これがこの国の常識なのか?


 わたしは絶対に許さない。少年に向けて歩み寄る。


 「立ちなさい」


 戸惑うカインとヘンリー王子を尻目にわたしは少年に向き合う。


 「立って、今すぐ立ち去りなさい」


 「エレノア! 僕たちは正しいことをしているんだよ!」


 ヘンリー王子の声にわたしはかっとして、振り向く。


 「そんな正しさ、こちらから捨ててやるわ」


 そう言って、きつくヘンリー王子を睨みつけた。


 そうだ。わたしはそんな国の正しさを通すほどなら、正義とは逆の道を行ってやる。自分の正しさを通して、反吐を吐くほど嫌だった悪役令嬢にだってなってやる。


 そして力を持った悪役令嬢となったわたしの思う正しさをこの国の基準にしてやるのだ。


 わたしは少年の腕を掴み、中庭を去っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ