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 ある放課後、第三音楽室。焼き菓子のかぐわしい香りに誘われた生徒はそう少なくないだろう。エレノア・フィツェーレが学園内で御茶会を開催していたのだ。音楽室に飾り付けられた花々は初夏を香らせる今の季節にぴったりのものであった。会場を華々しく飾っている。まるで舞踏会のような御茶会であった。


 先日、レベッカを助けたときに思い浮かんだ案が上手くいったわ。これなら、わたしたちの仲間を増やすことができる。何故なら招待客は皆博愛主義の人間しか呼んでないから。ゲルン人差別をしている子、あるいはしそうな子。そういう子達はこの御茶会に招待していない。


 先日から二週間の間、この御茶会を開催するために尽力してきた。まずは博愛主義者を見極めるためにいろんな課外活動に顔をだした。フィツェーレ家の名前もあってか、30人ほど集めることができた。集まった生徒らは焼き菓子とともに談笑を楽しんでいる。これなら孤独に悩んでいる子の出会いの場にもなる。我ながら名案だったわ。


「皆さん、今日はゆっくり楽しみましょう」


 わたしは皆に声をかけ、オーケストラバンドに目線を送った。弦楽器らが滑らかな音楽を奏で出す。


「エレノアちゃん、こんな素敵な御茶会に誘ってくれてありがとう。準備大変だったでしょう?」


 レベッカが赤面し、うつむきながらこちらに近づいてきた。


「このくらいなんてことないわ。公爵夫人である母の真似事よ」

 わたしはそう言いながらも、レベッカの長い前髪が気になってしょうがなかった。せっかく可愛い顔をしているのに、これじゃもったいないわ。


「前髪、切ったらどう? せっかくの可愛らしさが台無しよ」

「そ、そんな。で、でもエレノアちゃんがそう言うなら切ってみようかな……」


 レベッカはその顔を更に赤面させた。


「えぇ、その方がいいわ」

「やぁ、エレノア。それに隣に居る子は?」


 招待客のひとりであるルークがわたしに声をかける。


「この子はレベッカよ。先日友達になったの。レベッカ、こちらはわたしの友達のルーク」

「よろしくね」


 そう手を差し出すルークにレベッカは警戒している様子だった。というよりも、「わたしの友達」という言葉を発してから、あまりルークを良く思って居なさげに睨みをきかせている。その様子は小動物が威嚇しているようだ。きっと、レベッカは人付き合いがあまり得意でないのね。


「よろしくお願いします」


 レベッカはそう手を握り返すと、ぐっとルークに近づき、こう耳打ちをした。


「エレノアちゃんのお友達はわたしひとりで十分ですけど」


 もちろん、エレノアには聞こえていない。ルークは苦笑いを浮かべ、「強烈な子だな」と内心思っていたのである。




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