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 エレノアは特訓の毎日を送り、とうとう7年の時が過ぎ去っていた。


 エレノアの魔力は凡人ながらも努力した結果、ノアにもその上達を褒められていた。


 そして、エレノアはヒロインに負けないほど美しく育っていた。白の巻き毛は腰くらいまで伸び、背筋はピンと伸びている。トレードマークの真っ赤な瞳も、曇ることなく健在であった。


 14才の冬。町中は雪と氷で覆い尽くされ、吐く息まで、何もかもが真っ白である。次の春から、エレノアはクロサリア魔法学園へと通うことになる。今日はその制服を仕立てに街へと来ていた。


 お母様と共に馬車から降り、仕立屋に入る。そこには、カナリアと彼女の母親の姿があった。


「ごきげんよう、ガーランド夫人、そしてカナリア」

「ごきげんよう、フィツェーレ夫人、エレノア」


 不思議なことに、カナリアとの対面はあの日ぶり、つまり7年ぶりであった。なぜそんなにもわたしたちは会わなかったのだろう。ヘンリー王子やカインとはちょくちょく会っていたというのに……。きっとわたしたち2人、どちらも再会を特別望んではいなかったからだろう。わたしもカナリアもお互いにまったく会おうとしていなかった。


 お母様たちは天気のことや社交界の話に花を咲かせていた。

 その間、わたしはじっくりとカナリアを眺めていた。なんせ、彼女は美しいのだ。やはり、この乙女ゲーム内で一番の美貌を持つのはカナリアだろう。つい、うっとりと見入ってしまうような魅力が彼女にはある。


 金の髪はまっすぐ伸び、黒いカチューシャがよく似合っている。雪のように白い肌は彼女の可愛らしい鼻と唇を引き立たせていた。そして、翡翠の瞳はどこまでも透き通っている。


「しばらくね、カナリア」

「えぇ、そうね、エレノア。会いに来てくれても良かったのよ」

「それはこちらの台詞でもあるわ」

 

 なんだか気まずい空気が二人の間に流れていた。7年ぶりの再開だからか、それともこれがヒロインと悪役令嬢の運命である為か……。


「エレノアは今から仕立てて貰うんでしょう? わたしは済んだから、速く仕立てて貰えば? 話したかったら、いくらでもこれから話せるのだから」


「えぇ、そうするわ。またね、カナリア」

「えぇ、また」


 お母様たちはまだ話していたけれど、わたしは早速店の奥へと足を進めていった。採寸だけでも先に済ませてしまえばいいかも。お母様に怒られるより、今はカナリアと笑いあう方が苦痛であった。



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