奴隷王チブヤ 1
これ10万字以上書いたけど、作者がおもしろさを見失っちゃいました。
チブヤくんのモデルは有名なろう作家です。
こんにちわ、庶民の皆さん。
奴隷です。
いや、正確には戦奴隷って言うのかな?
俺は今、戦場にいます。
戦奴隷だからね、当たり前だけどね。
「すわ、かかれ! かかれえーッ!!」
後ろの方から甲高い声が聞こえる。
それと同時に周囲から巻き起こる雄叫び。
それは『ウオー!』とか『ガオー!』とか、獣の声に近い。
数百もの男たちが叫び、駆け出す。
空気が震え、地面が揺れる。
この戦場に銃器はない。
俺のようなマトモな装備を持たない貧民、ややましな武器防具を持つ正規の兵隊や傭兵、そして遠巻きに見るキラキラした金属鎧やマントを身に着け馬に乗ったヤツ、いろいろだ。
それらがゴチャッと固まり突撃する。
「オラオラァッ!! オリャアアアッ!!」
俺も周囲に負けないように声を張り上げ、木の盾をかかげて走り出す。
言葉に意味はない、ただ自分を励まして止まらないようにするだけだ。
敵陣から石やら矢が飛んできて盾を鳴らす。
一緒に走り出した隣の味方がすっ転んだ。
矢が当たったか、足がもつれたか。
かわいそうだが転んだら後続に踏まれるか矢の的になるか……まあ十中八九は死ぬ。
この矢が当たるかどうかは運任せだ。
盾が割れても、転んでも、矢が当たっても死ぬ。
とんでもないクソゲーである。
走るうちに周囲の味方がまばらになる。
だが、敵は目の前だ。
「オリャオリャアアァッ!! いよいしょおぉぉぉいっ!!」
俺は奇声をあげて盾ごと敵の隊列に突撃した。
十分に体重を乗せた体当たりを食らった敵兵はぶっとび、後続を巻き込んで隊列を崩す。
「ドラァッ! コイツがっ! 死ねっ! 死ねいっ!」
繰り返すが言葉に意味はない。
俺は怯んだ敵をひたすら棒で殴りつける。
ゲームやなんやでは最弱武器になりがちな棒だが、不思議なもんでコイツが便利だ。
人間、剣で斬られたり槍で刺されたりすれば死ぬ。
だが、たまに致命傷を負いながら相打ち狙いで暴れるガッツがあるヤツがいるのだ。
こういうヤツは大抵ヤバい。
その点、ガッツがあろうが棒でぶん殴れば骨が折れて動かなくなる。
腕力があるなら棒が便利だ。
殺し合っているコイツらがなんなのか、奴隷の俺は知らない。
だが、殺さなきゃ死ぬ。
逃げても殺される。
死にたくないから殺す、シンプルでいい。
「死ねやコラあっ!」
「お前が死ねっ!!」
俺に向かって突き出された槍に盾を叩きつける。
バキィッと木材が割れる音がして槍がへし折れた。
そこをメチャクチャに殴る。
一撃、ニ撃、三撃、とにかく速く、たくさんだ。
どれほど殴っただろうか。
隣のヤツも、その後ろのヤツも殴り倒したころ、不意に敵が背を向けて逃げ出した。
「逃がすなーっ!! 追い首を稼げえ!!」
さっきの甲高い声が聞こえた。
あまり言葉の分からない俺でも戦場の指示は理解できる。
単純に慣れたのだ。
追撃、これはボーナスタイムだ。
味方が『ウワアーッ!』と歓声をあげて敵にくらいつく。
戦場で敵からはぎ取った略奪品は自分のモノになる。
そして背を向けて逃げるヤツは殺しやすい。
(よし、アイツがいい!)
俺は走りながら鉄兜を被った敵の後ろ襟を掴んで引きずり倒した。
普段なら装備がいいやつは避けるとこだが追撃は別だ。
後はいつも通り、動かなくなるまでぶちのめす。
死んだふりができないよう、執拗に。
(やったぞ、鉄兜に革のブーツ、剣まで持ってやがる!)
ヤギの角ような悪趣味な飾りのついた兜だが、ほぼ無傷で手に入った。大戦果だ。
「ウホォォーッ! 勝った! 俺のだっ!」
頭の悪そうな声が自然と口をついて出た。
戦いのアドレナリンでハイになりすぎてるのを自覚するが、どうにもならない。
俺の名前は渋谷集一、異世界に来て2年目の日本人だ。