8話~交易の街
夜が明けたころ、イヴとアーシェが起きてきた。
「おはよ、寝ずの番だけど大丈夫?」
「あぁこのくらいなら大丈夫」
徹夜で本読んだりゲームしたりは日常茶飯事だったからなぁ。それの経験が生きてきているな。
2人がパンを食べているので、ちょうどいいと思い俺は話を切り出した。
「俺さぁ、この世界の住人じゃないんだよな」
「「・・・は?」」
2人揃って同じ反応だった。だけど普通こんな反応だよなぁ。
詳しく話す。
「城で召喚されてな、まぁ他にも勇者やらが召喚されたんだよ。それで俺の職業は聞いたこともないやつだったから少しの金を渡されて街にほうられたってわけだ」
ざっくりと説明してみた。
「マジか・・いやまぁ黒髪とか今まで見たことなかったし、物の知らなさからどこかの箱入りかと思ったら召喚されたとか・・・」
「そうなんだ、けど王国はクソだね。自分で召喚して勇者じゃないからって捨てるなんてありえない!」
アーシェは戸惑っていたけど、イヴは怒ってくれていた。
「だけど捨てられたからこそ今イヴとアーシェに会えたから、その点だけは感謝ですよ。2人とも優しいですし」
そのセリフに2人は顔を赤くして照れ、言った本人も照れて顔を赤くしてしまっていた。
「あたしたちはシンが何者だろうと理不尽なことしたりしないから安心しろよ!」
「それじゃ、君の正体もわかったことだしそろそろ行こうか」
こうして俺の正体は2人に無事に伝えることができたのであった。
馬車に乗り他の街に向かって数日後、3人は目的の場所へとたどり着いたのであった。
「ここが交易の街と言われてるパシアテだよ」
この街は様々な国から物が集まり、掘り出し物も多く集まる街だそうだ。それだけ色んな物があるからか
確かにここならもしかしたら銃っぽいものがあるかもしれないな。
「一度街を見て、求めてるものが無かったらダンジョンにいくのも一つの手だな」
「ダンジョン?そんなものがあるのか?」
「あぁ、ここのダンジョンでは鉱石類がよく取れるからな。最悪作ってもらうってのもいいかもしれないぞ?」
銃の制作か・・・作り方なんてわからねぇよ。てかこの世界に銃系統の武器を広めてはいけない気がする。
けどそれも考えの1つとしておいておくことにしよう。
その後、ギルドに馬を返し街を見て回るが・・・あるのは剣とか槍とかの武器で銃なんぞ1つも見当たらない。連接剣や方天戟など見て回る分には楽しめそうな市場なのだが、今の俺にそんな余裕はないのだ。
「やっぱないな・・・」
俺が呟くと
「仕方ないよ、ダンジョンに行こう」
「ダンジョンなぁ・・・」
渋っているとアーシェが言ってきた。
「一回ダンジョンに行ってからまた見にきたらいいじゃないか。市場がなくなることはないんだから」
イヴもアーシェもダンジョンに行きたい様子だった。
「2人とも行きたそうだな、それじゃ俺はどうせ使えない弓は捨ててピッケル持っていくわ。ちゃんと守ってくれよ?」
男として情けない事を言っているのは分かっている!だが今の俺に戦闘手段がないのだから仕方ないじゃないか。
そうして俺たちはピッケルを買い、ダンジョンへと向かうのだった。