7話~旅路
冒険者の朝は早い。起きて宿の外に出ると、既にイヴとアーシェは準備完了で待っていた。
「おはよう、ごめんちょっと遅かった?」
「おはよ。大丈夫だよ、わたしたちも今準備終わった所だから」
「そんじゃ早速行くか!」
俺たちは街の外へと向かって歩き出す。途中でアーシェがよるとこあるから先に行っててくれと別れた。
「これって歩いて行くのか?」
一番の疑問だ。少し遠くに行くと言っていたが歩いて行ける距離なのかどうか・・・
「アーシェが馬車の荷台を持ってるから、ギルドで馬を借りて行くんだよ。さっきアーシェが違うところに行ったのは馬を借りに行くためなんだ。さすがに歩いていくには遠すぎるよ」
なるほど。昨日のうちにギルドに話はしていたらしい。
やっぱ歩いていくには遠すぎるとのことで、馬車を用意しているのか。けど何で荷台のみ?
それが顔に出ていたのかイヴは教えてくれた。
「何で荷台だけ?って思ったでしょ。馬も買うと維持人かがすごくかかるからね、そこまでの余裕はまだないんだよ」
馬なしで荷台だけだと維持費もかからないし、使う時に馬借りればいいだけだからお金の節約になるらしい。
そうこうしてるうちに入り口までやってきた。
そこには既にアーシェの姿があり、傍らには馬車があった。
「きたか、それじゃイヴ運転頼むな!」
「ん、任された」
イヴが馬の手綱を握るそうだ。
「あたしたちは中に入ってゆっくりしとこうぜ」
「流石にそれは俺が本当に何もすることがないから、せめて乗り方教えて欲しいんだけど・・・」
イヴは首を振りながら
「大丈夫。いきなり馬に乗ってもケガするだけだから」
と断られた。それに引き続きアーシェからも
「そうだな。無理すんな、自分じゃ気付いてないかもしれないけど、顔色そんなによくないぞ。中で大人しくしてるんだな」
そう、シンは異世界二日目ということや初日がハードだったからか体調がよくないのだ。今まで大きい生き物を殺すという事もしたことはなかったし、心身ともに疲弊しきっていた。
「・・そうだな、今はお言葉に甘えるよ」
「おう!よくなってから頑張ってくれよ!」
俺とアーシェが乗り込むと馬車はゆっくりと目的地へ向けて動き出した。
馬車は思ってたよりも揺れる・・・想像以上にガタガタと揺れている。
こういうのに乗ると、車とかのクッションやらスプリングやらの技術って偉大だよなってマジで思うわ。
その後何かに襲われるという事もなく無事に夜を迎えることができた。まぁ野宿なんだけどね!
食料は干し肉とパンだ。
「まぁこういう時は保存の効く食べ物だよな」
「食ったら今日は寝るぞー・・・見張りは1人でいいだろ」
「見張りは俺がやるよ。今日の昼はゆっくりさせてもらったからな」
さすがに見張り位やらないと俺の存在価値がない。
「・・・それじゃぁよろしく頼むね」
2人とも何か言いたそうだったが、最後には折れて任してくれた。
「何かあったらすぐに起こせよ」
「おやすみ」
これで今日1日全くいい所がなかった俺でも多少は役に立つことができたな。
「ほんと助けられてばっかりだなぁ・・・」
夜空を見上げながらつぶやき、そのつぶやきは風と共にきえていったのだった。
一方その頃、勇者として召喚された斎藤たちはというと。
「コウヘイ殿たちには魔王討伐をしてもらいたい!この世界から魔王を討伐しなければ我々人間は絶滅してしまうのじゃ・・そのために身勝手ながらお主たちを召喚させてもらった」
申し訳ないと、この国の王は頭を下げる。その態度に周囲の臣下たちは動揺をあらわにした。
「いえ!困ってる人達がいるならそれを助けるのは当然です!僕たちが魔王を倒して平和にできるなら全力でやってみせます!」
斎藤は王の話に全力でやると答えて見せた。
「おぉ!!やってくれるか。お主たちに戦闘の基本などこの世界のことを教える者が必要じゃな・・・ランスよここに」
人の名前を呼ぶと、横に控えていたおっさんが答えた。
「は!ここに」
「王国の武術指南の力でこの者達に教えてやってくれ」
「わかりました・・・これから君たちの指南役として行動するランスだ」
鎧をまとったおっさんランスは僕たちの方を向き紹介してくれた。
「よろしくお願いします」
これでこの謁見は終わり、3人は正式に魔王を倒すために訓練を積むこととなったのだ。