第四話
「ここが依頼の場所か。」
俺は貰った地図を頼りに、街から少し離れた場所にある坑道に辿り着く。数年前まで採掘が行われていたらしいが今はただの魔物の巣窟となっているらしい。
中には一応明かりがあるが薄暗く、ピチャピチャと雫が垂れる音が不気味だ。
ここにストーンイーターとかいう魔物がいるのか。よく考えたら俺は魔物と闘ったことがない。ゲームでは散々戦ってきたのだが、実践は初めてだ。今更だが緊張する。だが依頼を受けた以上やるしかねぇ!!
自分を奮い立たせ奥へと進む。
坑道内は意外と広く、道が幾重にも別れている。迷路を進むような感じだ。そしてしばらく歩いていると、ガリガリ壁を削るような不気味な音が聞こえてきた。恐る恐る進んでいくと、そこに奴はいた。
全長1メートルはある白く巨大なミミズのような生物が先端を左の壁に密着させ、円状に生えた鋭い歯で削っている。しばらくすると土を吐き出し再び壁を削り始める。どうやら土に含まれる石だけを食べているようだ。
こいつがストーンイーターか。食事に夢中なのか奴は俺のことには気付いていないようだ。
これならいけるっ。
剣を抜き俺は渾身の突きを放つ。
だが剣が奴の体を貫く瞬間、分かっていたように奴の頭である先端部分が反転し、剣は先程奴の頭があった場所に突き刺さる。
そして奴はその隙に体を俺の方に向けると口をガパッと開く。黒い虚空と円状にびっしりと生えた鋭い歯が姿を現す。俺を敵と判断したのかそれとも獲物とみたか、そいつは俺に襲いかかる。
俺は急いで壁に突き刺ささった剣を抜くと襲いかかる胴体をかわし、そのまま斬りかかる。
だが予想外に固くてはじき返される。
なっ!?かてぇ。石ばっか喰ってるのは体を固くするためかよ。
くそっ。こうなったら斬れそうな箇所を探すしかねぇ。
次々と迫り来る攻撃をかわしつつ俺は体の至る場所を斬りつけていく。体は硬いがこうしてクネクネとしなやかに動けるということは、どこか硬質化してない部分があるはずだ。
そしてついにそれを見つけた。
頭と尻尾の中間あたり、恐らく奴にとって腹に当たる部分が斬れることを発見した俺はそこに全力の斬擊を叩き込む。
ブチュッという気色悪い音をたてて奴の胴体が真っ二つになった。
切断面から緑色の血液が流れだし、奴の体がのたうち回る。そしてしばらくして動かなくなった。
「ふう、何とか一匹倒せたな。」
俺は額の汗を拭った。倒せたはいいが目当ての凝結晶はなかった。まあ、こんなに簡単に手に入るわけないよな。
さて、依頼達成には後9匹。そして凝血石を手に入れるにはもっと狩らなければ。まだまだ先は長い。俺は更なる獲物を求めて先へと進んだ。