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第三話

城を出たのはいいものの、俺は何をしていいか分からなかった。元の世界に帰れないんじゃどうしようもない。

いっそ女王の言ったとおり元の世界に戻る方法を探して旅でもするか?いや、とてもじゃないがそんな気はおきない。

「しっかし、ホントRPGの世界にそっくりだな

。」

 考えついでに街中を歩き回ってみたが、どこからどこまでゲーマーの俺にはなじみ深い光景が広がっていた。

石造りの通りに、立ち並ぶ家や店はどれも中世風。まるで自分がRPGの主人公にでもなった気分だ。当然通りかかる人々もそれっぽい格好をしている。

周りがこんなんじゃ自分みたいな格好をしてる方が浮くのではと思い、改めて自分の服装を確かめる。

「なんじゃこりゃ?」

 そこで気がついた。自分の服装が変わっていたことに。確か俺は家に帰ってTシャツに短パンというラフな格好に着替えていたはずだが、今の俺が着ているのは、軽い革製の鎧に指先が出たグローブ、そして革製の靴。そして頭には青いバンダナを巻き、腰には剣を下げていた。

あたかも盗賊のような格好だ。レアハンターだからそれに近い格好なのか?盗むも多用するしな。

まあこの方がこの世界では浮かなくていい。てか家では土足だったのに靴履いてる時点で気付けよって話だが。

 その時、腹が鳴った。そういえばそろそろ夕食の時間のはずだったな。この世界じゃまだ明るいけど。

俺はズボンのポケットに手をやった。何か入ってるか期待したがそんなことはなかった。

結局一文無しか・・・・・。これじゃ何も食べられそうにないな。歩いていると上手そうな食べ物を売ってる店を何軒か見つけたが金がないんじゃどうしようもない。

剣でも売って金にするかと一瞬考えたがやめた。初期装備もゲームによっては二度と手に入らないレアアイテムだかだ。ある意味一番最初に手に入るレアアイテムである。それを売るのはやはりレアハンターとして許しがたい行為だった。

こうなったら自分で稼ぐしかない。俺は街中にある冒険者ギルドっぽい施設へ向かった。




「ようこそ~冒険者ギルドへ~。」

中に入ると受付嬢の姉さんが挨拶してくる。

どうやら本当に冒険者ギルドのようだ。

「あ、あの、俺でもできる依頼ってありますかね。」

普段あまり女子と話さないので緊張する。

「もしかして初めての方ですか?」

「はい。」

「ではまずはこちらで登録を。」

そうしてカウンター横にある小さな机に通された。そこに登録用紙と書かれた紙が何枚も置いてある。

一枚取ると書き始める。名前や年齢、職業などの基本情報から、推薦人や後援団体を各欄まであったがそれらは当然スルーする。すぐに書き終わると用紙を受付の姉さんに渡す。

「カリヤマサトさんですね。現在所属しているギルドなし、推薦人や後援団体もなし。これだと最低ランクからのスタートとなりますがよろしいでしょうか?」

用紙を読み上げながら姉さんが聞いてくる。

「ああいいよ。」

この際ランクはどうでもいい。

「ではカリヤ様はブロンズランクからスタートということで。こちらをどうぞ。」

姉さんは丸い銅盤のついたネックレスを渡す。

「これは?」

「それが冒険者の印であると共にあなたのランクを表すプレートです。どうぞ首にかけてください。」

言われるがまま俺は首にネックレスをかける。

「それで俺にできそうな依頼は?」

「少々お待ち下さい。」

姉さんはカウンター下から数種類の依頼書を持ち出し提示する。

 薬草取りに、害獣駆除、下水道掃除など内容は様々だがどれも報酬が低い。まあ駆け出しの冒険者のできる依頼なんてこんなものだろう。

とりあえず飯一食分稼げればいいわけだがどれも気が進まない。地味な作業ばかりだ。

「うーん。」

「どれもお気に召しませんか?地味な作業ばかりだし、報酬も低いですしね。でもこれはオススメですよ。」

俺が唸ってるのを見て受付の姉さんが助け船を出す。彼女はカウンターに並べた依頼書の内、ある一つを指差した。

「これは・・・ストーンイーター退治。なんでこれがオススメなんだ?他と対して報酬は変わらないのに?」

その依頼の報酬は坑道に湧くストーンイーターという魔物を10体倒して300ラピス。決して他の依頼と比べて割のいいものでもない。

「そう思うでしょ。でもこの依頼、思わぬ収入が得られる可能性があるんですっ。」

姉さんは得意気に言った。

「思わぬ収入。どういうことだ?」

「ストーンイーターというのは主に石を喰らう芋虫みたいな気持ち悪い魔物なんですけどね、そいつを倒すと極たまーにですが、腹の中から赤い色をした非常に美しい宝石のようなものがでてくることがあるんです。凝血石といって、ストーンイーターが食べた石の成分が凝縮されてできたものらしいんです。とても貴重なもので、何でも売れば5000ラピスは下らないとか。どうです?魅力的でしょ?」

俺には別の意味でその話が魅力的に思えた。凝血石、それはつまりレアアイテムではないか!!!これはやるしかない。

「ああ、そうだな。それに決めたぜ。」

即答し、俺は依頼書にサインした。



フッフッフッ。こうなったら何が何でも凝血石とやらを手に入れてやるぜ。

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