第二十二話
マイコニドという魔物のページに俺は目が釘付けになった。
説明文にはこう書いてある。
”キノコに手足が生えたような魔物。夜行性。夜になると月の光が差す場所に集まる。
稀に胞子核が異常に発達したものがおり、倒した後も月の光を浴びれば胞子を作り続ける。
主に森に生息する”
こ、これは使える。しかも勝手に集まるからレミィも必要ない。これなら一人でやれそうだ。久々に俺の収集欲が燃えさかった。
手には入るかどうかは分からないが、今からなら一狩りしてきても余裕だ。
俺は急いで装備を調え街の近くの森へと出かけた。
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数日前ラバーワームを倒した森に着くと、月明かりが差し込む場所を探して歩き回る。
しばらく散策すると丁度いい場所を見つけた。木の枝が偶然にも重ならず、ぽっかりと穴が開いたような場所があった。そこから暖かな光が差し込んでいる。
そしてその場所には既にマイコニド達が集まっていた。
ラフレシアのような赤く大きな丸い笠の下に丸っこい白い胴体と足がついているその魔物達はどうやら順番待ちをしているようだった。一体ずつ月の光が当たる場所に出て、しばらく光を浴び、後ろに並んでいる奴に交代する。そして光を浴びていた奴はまた列の最後尾に並ぶ。
見ている限りそれを永遠と繰り返している。
順番待ちするなんて人間みたいだなと思った。
その思わぬ愛くるしさに一瞬狩る気が失せかけたが何とか奮い立たせる。
どうやらあまり害のない魔物のようだが俺の物欲のために死んでもらうぜ。
俺は隠れていた木の陰から通り魔のように飛び出し、剣を構えたままマイコニドの列に突っ込む。
俺の狙いはただ一体。一際体が大きい個体に向かって突き進む。
「………!!」
俺に気付いたマイコニド達が驚いて俺を避けていく。
あと少し………。
狙いの個体に刃が届くあと一歩の所で一体のマイコニドが躍り出る。
グサッ。
マイコニドの体に剣が突き刺さった。
だがマイコニドは微動だにせず頭をフルフルと振る。
すると大きな笠から大量の茶色い胞子が飛びだした。
しまった!!
俺は大量にそれを吸い込んでしまい、刑事ドラマでクロロホルムをかがされた人のように一気に倒れこんだ。
急激な眠気が襲い、意識を失う。
しかし鈍い痛みによってすぐに意識が覚醒する。
怒ったのかマイコニド達は俺の体に群がり、背中に乗っかったり、足で蹴るなどしてくる。
一発一発はたいして重くはないが、何発も重なると流石にキツい。
俺は立ち上がろうとするが、その度にマイコニド達は一斉に胞子をばら撒き、俺を眠りにつかせる。
そしてまた暴力でおこす。
その繰り返しだった。
「ぐあー、ぐおー、ぐえー。」
一体一体はそんなに強くないのに、まさか束でかかられるとこんなに強くて厄介だとは。
完全に油断していた。そして俺一人でもできるという慢心もあった。
何とかこの状態を脱しなければ!!レアアイテムどころではない。