第十八話
「ねぇ、私を仲間に入れて。」
色っぽい声で急にそんなことを言われてもどうしていいか戸惑う。確かに仲間は欲しいけど。
「カリヤさん駄目ですよ、その人と関わっちゃいけません。」
シャーリーさんが必死に訴える。
「どうしてだ?」
「その人は確かに強いけど色々と問題があるんです。絶対に関わらない方がいいですよ。」
まあ、問題がありそうなのはなんとなく分かるけど。
「あなた達、二人とも攻撃魔法が使えないでしょう?それで結構苦戦してるんじゃないかしら?でもこの私がいれば雑魚の大群なんて大魔法一発でお終いよ。」
とうとうシャーリーさんの発言を無視し始めたシェーラという女性。
魔法か・・・。レミィも回復呪文やスキルは使えるが、攻撃魔法は習得してないしなぁ。かくいう俺は魔法なんてからっきしだし。
パーティー的には入ってくれた方が有り難いけど、シャーリーさんの言葉も気になるなぁ。見た感じ確かに押しが強くて問題ありそうな感じだし、かといって魔法の魅力は捨てがたいし。
「なあ、どう思うレミィ。」
俺は迷った挙げ句唯一のパーティーメンバーである彼女に判断を委ねた。
「カリヤさんの好きにしたらいいじゃないですかっ。」
だが彼女はなぜか機嫌が悪い。
「そうか?なら俺の仲間になってもらうぜ。」
仲間にするかどうか迷ったが、こんな戦力をみすみす逃してしまうのは惜しい。彼女が本当に強い冒険者ならなおさらだ。
「本当に?ありがとう!!嬉しいわ~。」
シェーラは嬉しさのあまり俺に抱きつこうとしてくる。
俺は半歩後ろに下がってかわす。
抱擁する手が空しく虚空を掠めた。
「ただし、何か問題を起こしたらすぐにパーティーから追放するからな。」
問題を起こすななんて人に言えたことじゃないが。
「分かったわ。少しは大人しくしてる。」
「ということで新しく俺のパーティーに登録しといてくれ。」
「もうっ。後で後悔しても知らないからね。」
頬を膨らませながらシャーリーさんは書類に書き込んだ。
ひょんなことから仲間が一人増えた。普通なら喜ばしいことだが、素直に喜べないのは何故だろうか。
それからはいつも通りギルドの依頼をこなした。シェーラは最初俺達が最低ランクのブロンズ冒険者であることに驚いていた。サンダーバードを倒していたから自分と同じプラチナランクの冒険者かと思っていたという。
こちらも彼女が俺達より3階級上のプラチナランクの冒険者だったことに驚いた。
だがシェーラは俺達のランクを知っても、パーティーを離れようとはしなかった。強さとランクは必ずしも比例しないそうだし、たった二人でサンダーバードに挑んだ度胸になおさら俺達のことを気に入ったという。
そしてそんな彼女はやはり強かった───
シェーラの職業は大魔導師。スキルはどれも魔法に関するもので、魔法の威力を底上げしたり、範囲を広げたりするようなものが主だ。
つまり火力特化。
魔物を討伐する依頼は彼女の魔法一発で大抵片がついてしまう。
レミィの呪いでおびき寄せたところを派手な呪文を一発ズドンッ。これで大抵は消し炭になる。
おかげで依頼の効率は格段に向上した。今まではこの手の依頼は1日3件程度が限界だったのに、今日だけで一気に20件も片付けてしまった。
おかげで今日の収入は1万ラピスを越える過去最高額となった。
だが俺は殆ど何もしていない。これじゃあ俺の立場が・・・・・。
俺は頭を抱えた。