第十二話
電気攻撃対策として、耐電性能のある鎧を作ってもらい、これで防御面はバッチリだ。今度は攻撃面を何とかしよう。防御ができても有効な攻撃方法がないと奴を仕留めることなどできないからな。
俺は街中のある店を訪れる。露店で長槍や剣などを取り扱ってる店だが、売り物はどれも年期が入ってる。
店主に俺は爺さんから教えられた合い言葉を言う。
すると店主は俺をこっそり路地裏の人通りの少ない場所へと連れて行く。そしてあるところでピタリと足を止める。
「あんたがジョスターさんが言ってたガキか。」
店番をしていた時の愛想のいい表情と気さくな口調が一転、無愛想な表情と凄みのある声で店主が話しかけてきた。
ジョスターとはあの爺さんの名前である。
「は、はいそうですけど・・・。」
俺はつい身構えてしまう。
「どうもサンダーバードを倒せるような強さに見えねぇんだがなぁ。まあいい。人は見かけによらないというしな。ジョスターさんが言うなら仕方ねぇ。さっさと入りな。」
不機嫌そうに言うと武器屋の店主は右にある木製の扉を開けた。
男が入れと目配せする。
俺は後ろから刺されないか警戒しながら急いで入った。
中はかなり広い部屋で、その隅々に武器という武器が置かれたり、立てかけられたりしている。
そしてどの武器も丹念な手入れがされてるようで、美しく、切れ味も良さそうだった。
露店で売っている武器とは大違いである。
「ス、スゲー。」
俺は思わず感嘆の声を漏らす。
「ようこそ武器商人ギルド自慢の武器庫へ。ここは本来お前のような青臭いガキが入れるような場所じゃないんだがな。」
腕を組みながら店主がやはり不機嫌そうに言う。
「ここの武器、持っていっていいんですか?」
「いいけどあくまで貸すだけだぞ。使ったら返せよ。」
「ありがとうございます。でも、こんな上等な武器があるのにどうして表じゃ古い武器なんか売ってるんですか?」
「ここにあるのは我らが武器商人ギルドの面々が集めたもので、どれも一級品の武器よ。当然俺が集めたコレクションもこの中にある。本当にいい物ってのは手放すのが惜しくなるもんでな、皆手間暇かけて良いもの集めたのはいいが、良いもの過ぎて売るのが嫌になっちまったのよ。だからここにこうして保管してるのさ。」
さっきまで不機嫌だった店主が初めて楽しそうに語った。
そうだったのか。なんとなくその気持ちは分かる気がする。
「大切に使わせて貰いますね。」
「そうしてくれ。それと、必ずサンダーバード倒せよ。伝説の素材で武器を作るのはあの人の長年の夢だからな。死ぬなよ。」
店主は俺の肩をバンっと叩いた。
「頑張ります。ところであのじいさ・・・ジョスターさんと武器商人ギルドはどういう関係なんですか?」
俺は気になっていたことを口にした。
「ジョスターさんはな、昔は俺らと同じ武器商人だったんだ。つまりOBだな。だけど武器を売るだけじゃ飽き足らず、ついには武器を自分で作るようになり、それで武器屋から鍛冶屋に鞍替えしたのさ。そんで今では隣国までその名が轟く一流の鍛治屋になったのさ。」
まさかじいさんがそんな凄い人だったとは思わなかった。
「凄い人だったんですね。」
「そうだな。ジョスター爺のことは俺らも尊敬してる・・・おっとしゃべり過ぎちまったな。さっさと選べよ。」
気恥ずかしそうに店主は言う。
俺は数ある武器の中から弓を選んだ。両腕を横に広げたくらいの長さで、淡い緑色に塗られたそれは俺が扱ってもいいのかと思うほど美しい。
この弓を選んだのには理由がある。サンダーバードは鳥型の魔物だ。飛行してる敵に剣や槍などの近接武器は役に立たない。だから遠距離武器なのだがその中でも俺が使えそうなのは弓くらいしかなかった。
「これに決めます。」
「風の刃か。良いものを選んだな。」
それは矢に風を纏わせ相手に当たるまで追いかける力を持った特殊な弓だと店主は教えてくれた。
なるほどこれは勝てそうだ。
「本当に助かります。ありがとうございました。」
俺は礼を言って部屋を後にした。
オゥ、頑張れよと背後で声が聞こえた。
さて、明日はいよいよサンダーバード狩りに挑む。俺の心は緊張とほどよい高揚感に包まれた。