第十一話
俺はギルドでコツコツと依頼をこなしつつ、サンダーバードを狩る準備も並行して進めた。
もちろん俺達がサンダーバードを狩ろうとしていることはギルドの連中には秘密だ。話したらどんな顔をされるか分からないしもしかすると邪魔が入る可能性もあるからだ。
まあ、そもそも正式な依頼ではないので話す必要もないのだが。
日没後、俺は爺さんに教えられた通りにある場所へと向かう。奴と戦うにはまず強力な電気攻撃を何とかしなければならない。そのためには電気耐性のある防具を作る必要がある。その素材を今から集めに行くのだ。
街の外れにある森は薄暗く、地面はジメジメと湿っている。
「雰囲気悪いですね。」
「さっさと倒して出ようぜ。」
そんな会話をしながら歩いていると、目当ての魔物が向こうからやってきた。
目の前の湿った地面がモリモリと畑の畝のように盛り上がりながらこちらまで近づいてきている。しかも一本ではなく二本、三本と線が近づいてくる。
「来るぞっ。」
俺達は背中合わせに身構える。言った側から地面から土が噴水のように飛び出し潜っていた奴らが出てきた。
茶色く細長いそれは巨大なミミズによく似ている。
名前をラバーワームという。ストーンイーターと同じくワーム類に属している魔物だ。全身を覆う茶色い皮がゴム状になっていて電気を通さないらしい。
俺達を包囲したラバーワーム達は、円状に生えた鋭い歯を剥き出しにして襲いかかる。
その刹那、俺とレミィは同時に動いた。
俺は素早い身のこなしでかわしつつ、剣を横一線に振る。
ブチュっと不快な音をたて、敵の体が両断される。ストーンイーターと違って体は柔らかいがその分弾力があって斬りにくい。だからスピードと力に任せて無理矢理切り裂いた。
レミィは俺より身軽な動きで軽快にかわし、手甲についた刃で切り刻む。
そして後にはビチャビチャと刻まれた体が地面に落ちていく。
レミィは主に回復系の魔法を習得しているが、別に戦いが苦手というわけではない。獣人だからか身のこなしは俺よりも軽いし、身体能力も高い。俺よりかよっぽど戦いに向いてると思うほどだ。
敵軍をあっという間に片付けるとすぐに第二波がやってきた。
「こんなにいらねぇんだけどなぁ。」
素材は今ので十分なのだが、やってきた以上仕方がない。レベル上げの糧にさせて貰おう。
さっきと同様奴らを瞬殺する。続いて第三波、第四波とやってくるが今の俺らの敵ではない。
「ひゅー狩ったなぁ。」
「狩りましたねぇ。」
俺達の周りは死屍累々としていた。あちらこちらにラバーワームの死体が転がっている。とても気持ち悪く目を覆いたくなる光景だ。
「さっさと持って帰るか。」
俺は持ってきた白い袋にラバーワームの死体を容量一杯まで詰め込む。そしてサンタクロースのように袋を背負い、街へと戻り鍛冶屋をやってる爺さんのところに持って行った。
できれば皮を剥いで持ってきてくれと爺さんは小言を言ったが、これで例の鎧が作れるそうだ。大急ぎで2日で仕上げるという。
これでサンダーバードを倒すための準備が一つ終わった。
俺達は心地良い疲労感を感じながら宿へと戻った。