表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/40

19話


ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン。


まるで隕石が地面に衝突したかのような轟音が何回も響き渡った。


その音に合わせ、ハチ型の鬼蟲はまるで巨人に踏み潰されたように次々とぺしゃんこになる。


な……なんだ!? これは!? 


俺は訳が分からないまま、呆然とする。わずか数秒で何百といたハチ型の鬼蟲が全て踏み潰されたかのように、紙

のようにペラペラになっている。


こんなのは……知らない! いったい何がどうなっているんだ!?



原作でも一瞬で鬼蟲をぺしゃんこにする能力者などいなかった。これは未知の事態だ。


俺は呆然としながら立ち尽くしていると……。


フワリ……と俺の目の前に一体の鳥が舞い降りてきた。


その鳥は体長2mほどで真っ赤の羽毛に覆われており、金色の冠のようなトサカは見る者を圧倒する。


まるで黄金のようなオーラを発し、俺を真っ直ぐ見据えていた。


なんなんだ!? この紅い鳥は!? 鬼蟲をぺしゃんこにしたのはこの紅い鳥なのか!?


俺はパニックに陥りながらも思考を巡らせた。


この世界には鬼蟲以外に、ペガサスやドラゴンといった幻想上の生物が存在している。だが鬼蟲よりも強い生物は

極稀で普通は鬼蟲のエサになるはず。


しかしこの神々しいまでの紅い鳥は一瞬で最強格のハチ型の鬼蟲を全て殺した。


まさか……この紅い鳥も鬼蟲なのか……!?


原作では登場しなかった未知の生物の降臨に戦々恐々としていると、紅い鳥は俺を見つめながら一歩、一歩近づい

てきた。


その足取りは自信に満ち溢れているかのように力強い。


この紅い鳥……めちゃくちゃ強い……!


対峙すると分かる。この紅い鳥の発するオーラは尋常ではなく、あのメル・ナルクを彷彿とさせる。おそらく今戦

ったら絶対に敵わない……。


この紅い鳥はそれほどの存在だ。


内心焦りまくる俺の目の前に紅い鳥はやってきた……。


俺と同じ黄金の瞳は俺を全て見透かしているかのように鋭い。


時を止めた反動で動く事が出来ない俺は、冷や汗をかきながら鳥を見つめる事しか出来ない。


するとおもむろに紅い鳥はクチバシを突き出し、俺の右肩へと突き刺してきた! 


「……っ!」


……が、一向に痛みはやって来ない。俺は恐る恐る右肩を見ると、真っ赤に腫れた右肩は元に戻っており、張り裂

けそうだった痛みも完全になくなっていた。


紅い鳥は俺を見つめたままそれから動く様子もない。


……まさか、この鳥が肩を治してくれたのか!? 


紅い鳥は俺を攻撃する素振りは全く見せず、むしろ俺を労っているようにも見えた。


俺は動かせるようになった右手をゆっくり鳥へと伸ばし、紅い鳥の頭を撫でてみた。


紅い鳥はまるで喜んでいるかのように目を細める。


「お前が……助けてくれたのか?」


恐る恐る問いかけると、紅い鳥は俺の言葉を理解しているかのように羽を広げて応えた。


真っ赤に燃えるような羽に覆われた紅い鳥は毛並みが非常に美しく、肌触りも最高級の絹のように滑らかだ。


まさかこの世界にこんな鳥がいたなんて……。


原作では登場しなかった存在。これほどの強者ならば原作で登場していてもおかしくはないが、何故か原作では全

く登場しなかった。


俺が知らなかっただけなのか、それとも原作のラストで登場する幻想生物なのか……真相は分からないが、どうや

らこの紅い鳥は俺に危害を与えてくる様子はないようだ。


紅い鳥は俺の瞳を覗き込むようにじっと見つめてくる。


「そ、そうだ……! お願いがあるんだ! ゾフィーを! ゾフィーを助けてやってくれないか! お願いだ!」


俺は紅い鳥に必死に頼み込む。この紅い鳥は俺の右肩を癒してくれた。それにこの危機的状況も助けてくれた。も

しかしたら俺達の味方なのかもしれない。


いや! ゾフィーはトゥーンランドまで保つ体力は残っていない。もうこの紅い鳥に頼むしかゾフィーが助かる方

法はない! 


すると……。


紅い鳥は俺を見つめた後に、ゆっくりと歩を進める。


俺のすぐ横を通り、絹のように滑らかな羽毛が頬に触れた。赤い鳥は後ろで横たわっているゾフィーへ一歩一歩進

んでいく。


そのまま赤い鳥はゾフィーの元に辿りつき、気を失っているゾフィーを見下ろした、その瞬間ーー。


「なっ……なにぃっ!?」


徐ろに紅い鳥は自身の美しい翼を首に当てて……なんと自身の首を切り落とした!


首の切り口からは夥しい程の血が流れ、ゾフィーに全て降り注いだ。


俺はあまりの衝撃的な光景に身動きをとることが出来ない。


紅い鳥は頭を失い、力尽きたようにゾフィーの上に崩れ落ちた。


その瞬間、急に紅い鳥の体が炎上し、青色の炎でゾフィーの体が包まれる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ