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14話

メル・ナルク以外この時間停止に抗う事が出来ない!


メル一族を滅ぼす悪夢の後半戦が今、始まった。


メル・ナルクは振り上げていた刀をゆっくり下ろし、俯かせていた顔を上げる。


ギンッ! と黄金色に輝かせた瞳をギラつかせ、逃げ惑っていた人々に次々と襲いかかった。


背を向けて停止している人々に向けてメル・ナルクは一人ずつ、背中から心臓を刀で貫いていく。


その速度は見事なものだった。俺でもメル・ナルクのスピードを捉えるのがやっとだ。


50秒ほど経った時、ようやくメル・ナルクは俺達がいる最後列へとやってきた。


この時点で生き残りはたったの13人。メル一族滅亡はもはや時間の問題だ。


55秒、56秒、57秒…………俺は心の中で平静を保ちながら必死に数える。


58秒……とうとうメル・ナルクは俺の目の前に現れ、大きく刀を振り上げた。


その筋骨隆々の巨体と黄金に輝く瞳の迫力は言葉に出来ない程凄まじい。


思わず身が竦んでしまうほどだ……しかし。


ーー賭けに勝った……! 俺は内心で呟いた。


そう、俺はこの瞬間をずっと待っていたのだ。5年間もずっと。


俺はここぞとばかりに今まで溜めに溜めていた力を爆発させる。


全身にオーラを漲らせ、全ての力を瞳に集中させた。朱色だった瞳は黄金の輝きに変化し、瞳孔は蛇のように細長く縦に割れた。


俺は黄金の瞳で今にも凶刃を降り下ろさんとしてくるメル・ナルクを力の限り睨みつけた。



「……何っ……!」



メル・ナルクの小さな驚きの声が漏れた瞬間、ガキンッ! っと金属同士がぶつかり合う音が響き渡った。


メル・ナルクの黒い刀と俺が持つ赤黒い光沢を放つレイピアが停止した時間の中で鍔ぜり合う。


……俺はこの時をずっと待っていた。メル・ナルクが時間停止を使い果たすこの一瞬の隙を!


俺がわざと棋聖院で実力を隠していたのはこの聖地巡礼で最後列を陣取って、殺される順番を後回しにする為だ。


列の最後尾に陣取るという事はメル・ナルクの処刑が最後になるという事。


それはメル・ナルクが力を使い果たす瞬間と同義だ。だから俺は今までずっと実力を隠していたのだ。


さらに俺はメル・ナルクが時間を停止してメル一族を皆殺しにする事を事前に知っていた。


この時間停止に対抗する方法はただ一つ、俺がメル・ナルクと同じ力を手に入れるしかない。


だから俺はこの5年間ずっと死海の森に入っていたのだ。 


メル一族特有のこの時間停止の力を覚醒させる条件は二つ。


自分よりも強い敵を倒し続け、経験値を限界まで上げる事。もう一つはメル一族特有の能力、加速を光速の世界のさらに先の領域まで極める事だ。


そうする事で初めてこの黄金の瞳が発現する。


この黄金の瞳は静止した時を支配出来る者の証なのだ。


現時点でこの瞳を持つ者はメル・ナルクと俺しかいない。


そう、原作ではありえない事なのだ。この俺……メル・キヲラという存在は。



「……小僧……何者だ……?」



鍔ぜり合う中で、メル・ナルクが問い掛けてきた。


だがそれに答える義理はない! 


ギリ……ギリ……! と金属が擦れ合う音が響く。



「くっ……!」



だが強いっ……! メル・ナルクの馬鹿力が刀から伝わってくる。


あまりのパワーに俺のレイピアが押され、俺の喉を切り裂かんとばかりに迫ってくる。


だけどもう少しで……!



「……小僧……貴様……な、に……も……の……」



急にメル・ナルクの刀から伝わる力が無くなり、完全に奴の動きが停止する。


瞳も黄金の輝きを失い、朱色の瞳に戻った。


来た! この時を待っていた! メル・ナルクが力を使い果たすこの瞬間を! 



「メル・ナルク……お前の野望はここで終わりだ。俺がここで始末してやる!」



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