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9話

事件の犯人として捕まえられて数日が経ったある日私の無実がアレン達の手によって証明された。アレンが来たのがごろごろと寝転がっているところだったのでなんとも言えない雰囲気が流れてしまったのはご愛嬌である。


先輩が生徒会室で待ってるからと手を引いて歩き出してるけど放課後とはいえ人が全然いない訳じゃない。はっきり言って皆からの視線が痛い。いや、いつも皆からの冷やかしの視線は受けてはいるけれども。


「(今回は冷やかしの視線だけじゃないだろうなぁ。)」

いくら無実とはいえ真実を知らない人間からしてみれば犯人として捕まえられていた人間が野放しになっていると思っていても不思議ではない。アレンは最後まで無実を主張していたから、もしかしたら私の逃亡の手伝いをしていると思われているかもしれない。


「ねぇ、アレン。ちょっと視線が気になるから手を放してくれると嬉しいかなー、なんて。」

私のせいでアレンがとばっちりを食らうのは死んでもごめんだったのでそれとなく手を放してくれと催促するとアレンの頭上にはハテナが飛んでるように見えたが周りの視線がいつもの冷やかしだけではないと気付いたのか周りを睨み付けている。



「さっきからアイリに不躾な視線送ってる奴いるけど何?全員まとめて目を潰してやろうか?」



前から思っていたことなんだけど漫画原作よりもアレンの性格が好戦的になっている。アイリの性格はもっとキツかったしアレンは内向的な性格のはずだ。当て馬女になりきれてなかった代償はここに出てきているのだろうか?


「ア、アレン。私の事はいいから!早く行こうよ!会長待ってるんでしょ?」


周りの人達が青ざめているのをみると何だかこっちが罪悪感が湧いてきたのでさっさとぬけることにする。何だか他の事件もアレン一人で相手をやっつけるんじゃないかと思い始めているのはきっと間違いじゃないと思う。


「それよりも、助けるのに時間が掛かっちゃったね。どこか身体の可笑しい処はない?大丈夫?」


そう言って気にかけてくれるアレンの方が大丈夫には全然見えないんだけど。目にめっちゃクマが出来てますよ…寝る間も惜しんで頑張ってくれていたのにグータラしてただけの私は一体…罪悪感が半端ない。



今回の私のあまりの役の立たなさに生徒会室まで行くのに気が重たくなるのを感じながらも足を進めた。







「で、お手手をつないで仲良くここまで来たってか?見せつけてくれるじゃねぇか、なぁ?」


生徒会室では会長が待っていて私の無罪を心から喜んでくれたが未だに繋いでる手を見て急に不機嫌になった。仕方ない、迷惑かけたしアレンと手をつなげる機会を作ってあげようじゃないか。



「ふふん。羨ましいでしょう?なんてったて私とアレンは恋人ですからね!早く会長も恋人が出来たらいいですね!なんだったら、手を繋ぎますか?」


アレンと、と言う前にアレンから駄目!って大声で言われた。普通にびっくりした。


「恋人って宣言してくれたと思ったら今度は他の男に手を握るかなんて言って…!アイリはどっちに嫉妬させたいの?!」


「うん、人の話は最後まで聞いて欲しいな。」

すると、ロイドが申し訳なさそうにこちらを見ていた。あれ?これ前も見なかった?

「俺はお前とは手を繋がないぞ。」

ロイドがアレンを好きなの知ってるのになんでそう思ったんだよ。どっちの得にもならないわ。この手の類は長引かせたら駄目だと私の第六感が告げているので、早速本題に入ろうと思う。



「で、あの私を犯人にした人が今回の犯人だったんですか?私、あの人と面識ないですし恨まれるような事されて無いんですけど。」



私が言った後にロイドが言いずらそうにしているところを見るとアレンが口を開いた。


「あの人、会長に自分を好きになってもらいたかったんだって。魔法に頼るのはあまり理解出来ないけどね。」

いくらこの世界が同性愛に理解が無くとも男同士が惹かれあってしまうところを目の当たりにするとあぁ、ここBL漫画の世界だったなぁと実感させられる。

そんなことを考えていたら会長が苦虫を噛んだようにしながら口を開いた。



「俺は同性云々はどうでもいいのだが、正直あいつの気持ちが理解出来ん。人の心はその人だけのものだ。自分の勝手で操作していいものじゃないだろう。」

まぁ、ここで同性間の恋愛を否定したら自分の否定ですもんね。だけど、このセリフを聞いて何でアイリがこの事件だけ覚えていたのかが分かった。



本来ならばこの事件はもっと大々的に暴かれるはずの事件だったはずで野次もたくさんいた。その中にアイリもいたのだ。


グラハムのなりふり構わずただひたすらにロイドを自分だけのものにしたいと言う感情にアイリは影響を受けてしまう。違和感に気づくイベントの後だった筈だから精神の余裕も無かったのだろう。この時からアイリは手段を選ばず自分だけを見てもらうように動き出すんだ。



そう、ここからが本番である。アイリス・フローラの人生の転落劇が始まってしまう。

そう考えると不安から思わず右手で左腕をぎゅっと握っていると頭に手が添えられていた。見るとロイドだった。えっ…あいつが私の頭をポンポン……だと?


「何かあったら俺を頼れ。何を溜め込んでるかは知らないが一人で背負い混みすぎんなよ。」


それはアレンにするものでは…?そう思ってはいてもロイドの顔面偏差値はめっちゃ高いので一言で言うと


「えっ。会長カッコ良いですね?アレンがいなきゃ惚れているところでしたよ…っ!」


すると、ロイドはカラカラと笑っていた。絶対にからかっているだけだと思ったので、不貞腐れているとアレンが私の十倍は不貞腐れていた。いや、何でだよ。私と目が合うと可愛らしい笑顔をこちらに向けてくれた。



「大丈夫だよ、何があっても俺が絶対にアイリを守るから。アイリは何も心配しなくていいんだよ?」

アレンの言葉に嬉しくて私も微笑み返した。




「ありがとう!何かあったらアレン達に遠慮なく頼むから。特に会長に。」



思いっきりこき使ってやろうと言う意味で言ったのが伝わったのかロイドは呆れた顔をしてこちらを見ていた。



「また先輩を頼ってる…俺がアイリの恋人のはずなのにやっぱり二人の仲に異変が…?取り敢えず、恋人がいるのに他の男に頼る宣言が出来なくなるようにしなくちゃ…。」




アレンが何かぶつぶつ言っていたけどきっとロイドに頼っているのが面白くないのだろうとあまり気にしないことにした。友達が知らない間に違う人と仲良くなっててなんとも言えない気持ちになるあの感じと殆ど同じだろう。すると、ロイドが心配そうにこちらを見ていた。




「お前、俺が言うのもなんだがアレンの気持ちがしんどくなったらいつでも相談しろよな?」


「会長…。心配してくださっているんですか?」

何で心配しているのかは知らないがジーンとしてしまった。



「しんどくなったら、アレンとの恋人の座をすぐに交換できると思ってな。」




そう言うところだよ。とタックルをかましてしまった私は決して悪くないと思う。









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