7話
おめぇ、常に一緒に行動しろよ!命令だからな!と傍若無人な生徒会長様の一言で私とアレンは一緒に生徒会室でご飯を食べている。正直言って気まずいし私だけ場違い感がハンパない。何が楽しくてライバル認定を受けてマイルドになったとはいえ修羅場予定の人たちとご飯を食べないといけないのだろうか。余計な心配が増えなければいいんだけど。
さて、転生したからには当て馬女アイリス・フローラのまま人生を泥沼修羅場エンドで終わらす気は更々ないけど、私は転生によくある前世の知識を使ってチート!とか出来ない。前世での勉強嫌いが身についていて全く頭に入らないし、すぐに眠くなる。
勉強嫌いが魔法学であれ豆知識であれ文字ばっかりの本を読むとお思いか、すぐに寝たよ。お陰でこの学校でついていくので必死だよ。
そして、転生したのを思い出した時に覚えてる事書き起こそうと頑張ったは良いものの、いざ見返したら登場人物しか書いてなかった。いや、大事だけども!事件の中身はもっと大事だったよ!書いたの5歳くらいだからもう10年くらい前のことを思い出すのは結構難しいんだよ。
取り敢えず、危なくなったら逃げればいいかと呑気に考えていたのも悪かった。正直、アイリスは殆ど事件に関わらないからいけるって思ってた。
この漫画自体は恋愛漫画だけど仲を深めていく重要な鍵である様々な事件の危険度が高すぎる。
今回は何でかは分からないが他の事件のもののよりもまだ覚えていた。けど、通用するのはきっと今回だけだと思う。だって他の事件のことなんて殆ど思い出せないし。
長々と言い訳じみた事を言ってしまったけど、だからといって予定調和に終わる気はない。だって、私はアイリスとしての一人の人間としてここで生きているから、私と関わった人たちがその事件で最悪命を落とすかもしれない。それを黙って見て入れるほど私は無情になれない。
そんな事をうんうんと唸っていると、アレンが心配そうにこちらを見ていた。
「アイリ大丈夫?何か悩み事があるの?俺で良かったら話聞くよ?」
天使かな?天使だったわ。首を傾げて少し上目づかいなのがあざといですね。これを無自覚にやってのけるのでやっぱり天使じゃなくて小悪魔だった?
「事件のことだろう?それじゃないなら小テストのことか夕食のことだろう。お前それくらいしか悩みなさそうだし」
「お気遣いありがとうございます。今の言葉の9割が要らなかったと思いますが。」
それ能天気な奴って事だよね。この会長様は私を貶さないと喋れない病気か何かなの?そう思っているとロイドはしゅんとしていた。うわぁ、めんどくさい…。
「アイリ、先輩は君を先輩なりに心配しているんだよ。分かってあげて?」
えっ、ここで彼氏を庇っちゃう系なの?今から最高のシュチュエーションを拝めるかもですね?!よし、なら私だって一肌脱ぐよ!!
「会長、それでは本来の言いたい事は伝わらないですよ。私だからいいですけど大切な人に言うときは偽りや強がりもなく言った方が良いですよ。後悔しない為にも」
これからアレンと苦楽を共にするのに邪魔なプライドや虚勢はすれ違いの原因になるからね。未来の君たちを見てきた私からのアドバイスだよ!しっかりと受け取ってね!!
「…軽口のつもりだったんだ。許されると思っていったのだか傷ついたのなら謝る。」
「いや、さっきのは私も軽口だと思って軽口を返したんですけど…。」
軽口を言って軽口を返された言葉を本気にとってしまうならもう言わないほうがいいよとは流石に言えない。言いたいけど。
「そんな事はいいんですよ。会長、そろそろ本題といきましょう。今回は何についての議題ですか?」
私は気にしてないですよ感を出す為に強制的に本題に入ることにする。実際、早く本題に入りたかったし。
「あぁ、犯人像がはっきりと分かれば良いんだが今回はこちらの知っている情報が圧倒的に少ない。だから、知ってる情報を掘り下げていこうと思う。」
さっきまで、何故か落ち込んでいたのにもう調子を取り戻している。この人は落ち込むのも立ち直るのも早いな。
「つまりは、今回は何を召喚しているか…ですかね?」
「そうだ、何を呼んだのかが分かれば目的も分かるし犯人像も見えるくるはずだ。」
まぁ、確かにただ呼んでみたいだけって線は少し薄いだろうけどさ、目的までは流石にわからんだろう。
そんな私の気持ちを察したのかロイドが説明してくれた。
「確かに痕跡がある訳ではないが他人の生命力を自分の維持に使うとなると意思疎通が出来る者を召喚したと考えるのが普通だろう。それも、この学園規模なのだから相当の上位の魔族だろうな。」
あの犯人ってそんな大物呼んでたんだ。と言うより大物だったら尚更探しにくくなるじゃん。
アレンも同じ事を思っていたのか少し渋い顔をしていた。
「困りましたね、上位の悪魔となると人間に紛れる事だって出来る者も多い。探すのには骨が折れそうですね。」
アレンの言葉を聞いてだから言っただろと会長が口を開いた。
「だから長丁場になるって言っただろ。そもそも、この件は少し前から先生方でも内密に調べていたらしいが思っていたよりも被害が出てきたから俺にも回ってきたんだ。」
普通に危ない件を何故生徒であるロイドに任せるのか問いただしたいが、ストーリー上仕方ないのだけどやっぱりここの生徒として思う所がある。もうこうなったら、さっさと悪魔を見つけるなり犯人を捕まえるなりして終わらせよう。
「アレン、さっさと終わらせようね!」
するとアレンはきょとんとした顔をこちらに向けた。
「何か案があるの?」
ふっふっふっ、そんなの決まってる。
「無い!けど大丈夫だよ!!きっとなんとかなるよ。」
するとアレンは苦い顔をしていた。何故?
「昔からアイリがそう言って無事に済んだ事ないからなぁ…不安になってきた…。」
アレンの様子を見てロイドはこいつやっぱり要らなかった…?と小声で言っているのが聞こえたので軽くお腹にグーパンを入れた。痛くはなかったと思うがいきなりでびっくりしたのか変な声が出ててアレンに奇妙な顔で見られてた。ざまぁ。
そんな事を思ったのが悪かったのでしょうか?
それともーーーロイドとの関係を変えてしまった事がここに来て関係してしまっているの?
「アイリス・フローラ!!貴様をこの事件の容疑者として拘束させてもらうぞ!!」
アイリス・フローラ、当て馬女から悪役女に何故か切り替わってしまった。