6話
さて、私は今日の授業が終わり生徒会室にアレンと向かっている途中なのだが、私は少し焦っていた。
理由はこれから起こる事件の事なのだが、私としては知っている以上事件の被害を出来るだけ少なくしたいと考えている。この事件自体が解決するまでに結構な被害者を出すからだ。
「今日もまた、暴れた人がいたね。隣のクラスだったからすごい音だった。」
そう、ここ最近で生徒の気性が荒くなっていて殴り合いの喧嘩や魔法のぶつけ合い、暴行未遂まで起こっている。
今日でとうとう下校途中の一人歩きが禁止された。
喧嘩をするような人じゃない人が暴力を振るったので現在はカウンセラーの人が付きっ切りで治療をしているのだ。
「本当にこれに事件性があるのかなぁ?みんなのストレスが一緒に爆発したとかじゃ無いの?」
これがとある人物が起こしている事件だとは知っているが、今の私は何も知らない状態なのでアレンやロイドから全部口に出して貰わないといけない。
「流石にそんな事はないと思うよ。心理学は専門外だから分からないけど。」
そう言っているうちに生徒会室まで来た。まさか、今日だけで2回もここに来るなんて思わなかったなぁと思いながらドアを開けた。
「まぁ、十中八九事件性があるとみていいだろうな。大体の検討はついている。」
嘘でしょ、早すぎない?!開始早々事件解決なの?まだ始まって10分も経ってないけど?!いや、早期解決で被害が出ないなら良いんだけどさ。
「で、誰なんですか?早くその人を捕まえて拷問ーーんんっ!然るべき所に突き出しに行きましょう。」
今、拷問って言ったよね?アレンのその可愛いお口から少し怖い言葉が聞こえたのですが。
「いや、犯人は分からない。」
「えっ!分かったって言ったじゃないですか。ぬか喜びさせないでくださいよ、会長!!」
なんだ、結局分かってないんじゃないか。全く、そんな奴にまだまだアレンは渡せないね!
「お前は本当に失礼な奴だな、ここが学園じゃなかったら処罰対象だぞ。」
あ、ここってみんな平等だから忘れるけど確か家は騎士の家系以前に公爵家だった気がする。言われて見ればそうかもしれないけど、でもーーー
「会長はライバ…友人の軽口くらいで、そんな事しないって分かってますよ。それくらいには貴方のこと信頼してるんですから。」
危ない危ない。アレンの前でライバルっていう所だった。
すると、ロイドは照れ臭そうに笑っていた。あっ、その表情とても良いですね、是非アレンにもその表情を見せてやってください。恋に落ちる音がしますよ絶対。
「そうだな…友人だからな!もっとフランクでも良いぞ!!親友だからな!」
いや、そこまでは言ってない。私たちライバルだよね?なんでライバルがイコールで親友になるのさ。辞書引いてみな?
って、私がロイドと仲良くしてどうするの?!あくまで好敵手だから!アレンより仲良くなったらだめでしょ!
そう思ってアレンを見るとふて腐れていた。あぁ、嫉妬してる!!ごめんね、すぐにロイドを返すから!
「友人…友人?いや、それ以上になる可能性が高いな…。用心が必要だね。まぁ、奪わせる気は無いけど。」
アレンがブツブツと何か言ってたがきっと、初めての嫉妬に戸惑っている感じなのだろう。ここは、そっとしておこう。
「で、話戻しますけど何が大体分かってるんですか?犯人が分かってないんじゃ何も分かってないのとさほど変わらないと思うのですけど。」
そう、冒頭で私が焦っているのはこれだ。私は物語を知っているので誰が犯人かは分かっている。しかし、どうやって事件を起こしたのかは思い出せないのだ。記憶がぼや〜っと霞がかかっている。
原因は恐らく大元の話を変えることがないようにしているのだろう。被害は少なくしても良いけどなかったことにはするなよってか?ここに私を送った神的な存在がいるなら凄く殴りたい。
「この事件自体は降霊術の後遺症みたいなものだ。恐らくは人間の生命力を贄として何かを召喚してる。弱った身体は精神を摩耗させて情緒不安定になる。理性もなくしやすくなるから、暴行未遂なんて事件も起こる。降霊術を辞めさせないとこの事件は続くぞ。」
そこまで分かっているなら何故犯人が分からないのかと言おうとしたが分からない理由が分かってしまった。それにはアレンも気づいている。
「降霊術の後遺症だという理由は俺も賛成です。今もここに留めておく為にきっと、人間の生命力をずっと奪い続けてるんだと思います。ですが、困りましたね、それが正しいなら疑う人は学園内の人間全員だ。」
そう、この学園で降霊術は入学して結構始めに習うのだ。そして、学園にいる人司書から学食のおばちゃんまで生徒を守る為ということで魔法の習得は必須になっている。ーーーはっきり言って凄い数だ。
ここで言えるなら言いたいその犯人の名前を。でも、彼がそんなことをする動機も証拠だって私にはない。
つまりは、事件の内容と犯人は知ってるけどその人を犯人と全員を納得させる証拠が無いというとてもモヤモヤした状態が出来上がってしまったのである。
流石にここで犯人はこの人だと思うんですー!証拠はないけどね!って言ったら頭がおかしいと思われるのは私である。絶対に嫌だ。
「長丁場になること間違いなしだが、これ以上被害を俺が絶対に出させない。協力してくれないか?」
「当たり前です。学園の安全を守るのは俺たちの務めでしょう?それに、先輩を一人にさせると何かと不安ですからね。貴方の背中は俺が守ります。」
「ーーーアレン…。ありがとう。」
うわーーーー!!漫画のシーンをそのまま再現してくださってるー!素晴らしい!なんて日だ!!まさか今日が私の命日なのか?!
ニヤニヤしてるとアレンが私の方を見てきた。あっ、顔見られてたかな?自分でもちょっと気持ち悪い顔だと自負している表情だから見られてたら嫌だな。
「じゃあ、アイリそう言うことだから分かった?」
何がそう言うことなのか全然わからない。呆けているとロイドはやれやれと言ったポーズをしていた。やっぱりムカつくくらい様になってるな!
「事件解決までの間は俺たちと出来るだけ行動してもらう。嫌とは言わせねぇからな。」
ニヤリと笑う彼の姿にあぁ、やっぱり俺様の方がいいなと改めて思った。