11話
今回は前半と後半で別れます。
思ったより長くなりそうな予感が…
皆さま、こんにちは御機嫌よう。こんな感じの挨拶は久し振りにしますね。さて、今回私はどう言う状態かと言うとーーー
「そ、そこまで言うんだったら……僕の、と、とと友達…っにしてあげても良いけどぉっ?!」
人生で初めてこんなに上から目線で友達宣言された。
元を辿ること数日前、彼との最初の出会いはアレンとお昼ご飯を一緒に食べていた時のことだった。
お昼時の食堂なんて混んでいて当然なんだけど、その日はいつにも増して騒がしかった。
「ねぇ、アレン。今日って食堂で何かあったかな?例えば新メニューが登場したとか。私何も聞いてないけど?」
「それだったら、アイリが気づくだろ?俺も、何も聞いて無いからなぁ…。特に俺たちには関係ない話だと思うよ。」
そう言いながらアレンは気にも留めないで食事を再開した。嘘でしょ…こんなにうるさいのによく平気でいられるな。
食堂が賑やかなのは良い事だと思うけど、うるさ過ぎる。と言うより原因はある一人の男のせいでうるさくなっている。
ある男は
「レネ!君の好きなものを全部持ってきたよ。さぁ、好きなものを食べて?」
そして違う男は
「レネちゃん!君の好きな花を持ってきたんだ。良かったら食べてる間飾っておくよ!!」
と、声をかけられた本人は
「えへっ!ありがとう。とぉーっても、嬉しいよ!後でお礼に頭撫でてあげるね!」
そう言って食事を始めたが、彼が食べ始めても騒々しさは変わらない。
もうちょっと静かにできませんかねぇ?!
余りにもうるさいので文句を言ってやろうと思ったが、どうやら他にも思っていた人がいたらしい。
「食事を楽しくするのは結構だが、もう少し静かにしてもらえないか。ここはお前らだけの場所じゃないんでな。」
そう言いながらロイドが話しかけていた。あれ?何でこの人ここにきてるんだろうとは思ったりはしたけど場を収めてくれるのであればありがたい。
「ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの…」
そう謝ってはいるがこうしてみるとなんだかロイドが悪いみたいな見え方になってくるな…。
「違うよっ!レネちゃんは何も悪く無いんだっ!!」
「そうだよ、俺たちが悪いんだ!罰するなら俺を罰して下さい、会長!」
彼らの言葉でより一層騒がしくなった。どうやらレネの代わりに罰を受ける事で忠誠やら愛やらを示そうとしているみたいだ。えっ、またうるさい茶番劇を見ないといけないの……?
どうやらロイドもそれを察したみたいで呆れていた。
「俺が困っているわけじゃない。ここを利用している生徒が迷惑するんだよ、分かるか?次騒ぐようなら使用の制限もあり得るから心しておけ。」
ロイドがそう言うと、取り巻きたちは静かになった。注意されたら大人しくできるだけの精神年齢ではあったらしい。しかし、ロイドらその足でこちらに向かっている時に彼に聞こえるように悪口を言っていたのが聞こえたがロイドは特に気にした様子もなく私たちの席まで来た。
「よう、美味そうなの食べてるな。オレも一緒してもいいか?」
「いやです。あっちで食べてください。」
間髪いれずにアレンが拒否っていた。はっきりと断られていてロイドは傷ついているのが分かる。
「……お前にはっきりと言われると流石に傷つくんだが?」
「オブラートに包んだ方が良かったですか?はっきりと言った方が伝わりやすいと思ったんですけど。邪魔だって。」
アレンはここ数日、攻撃的な言動が多くなってきている気がしていたが間違いじゃなかった。この前のケーキを食べに行ってから様子が可笑しかったが原因が私だと思ってたから何も言わなかったけどその矛先が私以外に…ましてやロイドに向かったのなら黙っていられない。
私はロイドの前に出てアレンと向き合った。
「ねぇ、アレン。そこまで言わなくても良いんじゃないの?会長に失礼だよ。」
「なに?アイリは先輩の肩を持つの?俺より先輩のほうが大事なの?」
何故かアレンはそんなことを言ってきた。話の話題を変える気?
「今、そんな事関係ないでしょ。会長は私の友達だからアレンによく思われていないままなのが嫌なんだよ。」
「へぇ、よく思ってないのは知ってたんだ。だったら俺のことを思って会長と一緒にいるのはやめてよ。」
その言葉を聞いて頭にきた。なんで、なんでーーー
「なんで、アレンにそんな事言われなきゃいけないの?!会長はアレンをーーー」
心から愛しているのに。そう言いたかった言葉は後ろにいたロイドの手によって塞がれてしまった。
「それ以上は言わないでくれ。あいつに今気持ちを拒絶されたらすぐに立ち直れる自信がない…。」
そう言った彼の言葉と手は震えていた。ーーーさっきまで大人数の中の悪意には平然としていたのにアレンの一言を怖がっていた。
そんな彼を見て何も言えなくなりアレンの方を見て思わず身体が強張ってしまった。
ーーーアレンが親の仇でも見るように私達を見ていたから。
「そう……。アイリは俺じゃなくて先輩に気をかけるんだね。俺は、俺は…」
そう言いながらブツブツと何かを呟いている。よく見ると瞳に光がなくなってきている。
えっ、アレンってヤンデレ属性持ちだったの?ここで新しい扉開いちゃう感じなの?!と、いつもなら悶えている場面なのだが流石にこの時はそんな余裕はなかった。
「少し、一人になりたい。このままじゃ先輩もーーーーアイリも傷つけてしまうから。」
そう言ってアレンは食堂を出て行った。残されたのは私と傷心気味のロイドとチラチラとこちらを見てくる野次馬である。
「取り敢えず、ここを離れましょう。居心地は良いとは言えませんからね。行きましょう、会長。」
「あぁ、そうだな。……お前にはまた世話になりそうな気がするよ。頑張って俺を立ち直らせろよ。」
「憔悴気味かと思ってましたがそんなこと言えるならすぐに元気になると思いますよ。」
そんな軽口を叩きながら食堂を私たちも出た。
この時の私はアイリとしての生に違和感がなかったせいで漫画の世界である事を忘れることが多くなっていた。
だから、物語が歪み出しているなんてこれっぽっちも考えていなかったのだ。