10話
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強姦を匂わしている不快な描写があるのでご注意下さい。
事件から数日経ったある昼下がり、私とアレンは学園の外に出て約束をしていたケーキを食べに来ていた。休日って事もあり、街はいつにも増して賑わっている。
「美味しかったー!!やっぱりあのお店のケーキが一番ね!」
前にロイドにご馳走になったあのお店の焼き菓子も好きだがいつも行く馴染みのこのお店のケーキが一番口に合った。満足気に歩く私はアレンの方を見た。
「いつも付き合ってもらってありがとう。アレンは何処か行きたい所ってある?今日は私の用事は済んだからアレンに付き合うよ!」
そう言ってアレンを見ると少し困った様な顔をしてこちらを見ていた。
「うーん。特に考えてなかったから俺は大丈夫だよ。アイリこそ他に行きたい所はないの?」
事件の時や普段のアレンは好戦的で漫画の世界の主人公じゃないのではないかと考えてしまうけどこの発言を聞くとあの漫画のアレンなんだと実感してしまう。
アレン・クロード。彼について語ってなかったけど正直、彼の人生は波乱万丈の一言に尽きる。その彼について少し話をさせてほしい。
アレンの容姿は無邪気で天使な元気っ子なイメージだけど、性格は彼自体の闇が深くそれ故に内向的である。
まず最初にびっくりするとは思うが彼は自分の事を同性愛者だと思いながら生きてきていた。アイリと言う彼女がいながら何故そう思っていたかは闇が深い彼の過去に起因している。
幼少の頃のアレンは今でも愛らしい顔立ちをしているのだけどもっと可愛い顔をしており天使と称えられよく女の子と間違えられていた。外に出て遊ぶ様な子供でもなかったし、近所の男の子達にもよくからかわれていた。そんな時ある事件が起こってしまう。実に不愉快な事件だけど久々に外に出ていた彼は旅行者の道案内をしていた途中で襲われてしまう。
犯人は無事捕まったが、その時の事が傷になってしまうのは予想するのは容易いが何よりの不幸は彼がその時にそこまで嫌じゃなかったと言う感情が芽生えてしまった事実が自分が汚い人間だと思い込んでしまい彼をこれから苦しめることになる。
漫画で読んでいた時はえっ、元気っ子なのに闇深い系なの…?推せるわぁ…って思っていたが、いざ目の前で推しに会った時にガチ恋勢になっちゃったので絶対に回避してやるって意気込んでいた。
だから私はこの事件がいつ起こるかわかっていなかったので兎に角アレンに引っ付いて回っていたが結局アレンを救う事が出来なかった。いや、もし遭遇していたとしても私はきっと救えなかったな…。自分の傲慢さにどうしようもなく凹みそうになる。
まぁ、何が言いたいかと言えば自分の自己評価が低すぎて自己主張が上手くできないのだ。自分を評価してくれている人間に対して評価を下げたくない思いが強すぎてアレンはどこまでが言っていいか悪いかその区別が自分でつける事が出来ない人だ。だから、知り合いや私には言葉を選びすぎて逆に私に決定権をあげちゃうし、そ知らぬ他人は傷つこうが一向に構わないので思ってる事を全部言うのだ。…あれ?こう考えると告白した時ボロクソに言われたロイドって全く脈なしだった…?
いやいや、原作では徐々に好きになっていっていたから付き合い方が変わってないだけかもしれないし!!これからだよ、これから!
そんな事を考えていたからか目の前に今考えていた人がいた。
「えっ、とうとうストーカーに走りましたか?会長はやな人だけど犯罪はしない人だと思っていたのに…。」
「お前、本当に俺に対して当たりが強いな?まず最初に偶然って思わねぇのかよ。」
だって、タイミングが余りにも良すぎて…。するとロイドから私を隠す様にアレンが前に出た。
「こんにちは、奇遇ですね。何かこの辺りでの用事があったんですか?お互いに良い休日にしましょうね。ーーーでは、俺達はこれで。」
早い早い。せめて私も挨拶くらいはさせて欲しい。これでは私は悪口を言って帰るだけの嫌な奴である。さっき言った事がブーメランで私に帰ってくるわ。
「そう邪険にするなよ。せっかく会ったんだ、俺も混ぜてくれよ。」
あ〜!漫画でよく聞くロイドのセリフベスト10に入る言葉だ!!因みにこのセリフはアイリスに言うセリフだけど私達の仲はそれ程悪くないせいか今回はアレンに向かって言われていた。
このセリフの後、大体がアレンはその提案に乗りたいのでアイリをチラチラ見るんだけど御構い無しにバッサリと断ってアレンを振り回すんだよなぁ…。
特にこの後用もないし、別にいいか。ーーーべ、別に久々に推しカプが見たいからとかそ、そんなんじゃ無いんだからねっ?!
「良いですよ、会長の奢りで美味しいところ連れてって下さい!あ、でもさっきケーキ食べたばかりなんで、どちらかと言うと紅茶な気分ですね。」
優雅に紅茶を飲みながら推しカプを見るなんて我ながらナイスアイデアじゃない?カップに手が当たって意識するとかそういうピュアな感じを所望しますよ、私は。紅茶吐き出さない自信はないけど。
すると、まさか提案に乗るなんて思ってなかったとでも言う様な顔でロイドがこちらを見ていた。思わずアレンの背中からロイドの側まで行った。チャンスを無下にする気かと思い、小声でロイドに話しかけた。
「えっ、会長が誘っておいて何ですかその反応。この前の事件のお礼に好感度上げる機会を作ってるんですよ?!ここはお金払ってでも乗るべきでしょう?!」
「やっぱり、たかろうとしてるな、お前は。いや、それは別に全然構わないが流石にデートの邪魔をする程俺は切羽詰まってないぞ。」
ーーーーーは?
「デート?私はただケーキを食べに……。」
「へぇ、そう。アイリはそう思ってたんだね。俺知らなかったなぁ。」
ロイドには今のアレンの表情を見て顔を青くしていた。本当にこの人はアレンに弱いな、っていやそうではなくって
「いや、昨日アレンが明日デートに行くって言ってたから冷やかしに来ただけなんだが…アレンも楽しそうに話してたしてっきり…」
「ちょっと待って。どうしよう、会長。冷や汗が全然止まってくれないんですけど!!」
「だから、何でアイリは他の男に頼るかなぁ。一回ーーーーーー。」
私はアレンの方を振り向く事ができなかった。ちょっとしたパニックにも陥っていたからアレンが何を言っていたかも聞こえなかった。
だから、ロイドが真剣な顔をしてアレンを見ていたことも私は気づかなかった。