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黒鬼の話

 久しぶりに喚ばれたと思ったら、流れてくる黒い感情は少なく、その大半が寂しい、というもので首を傾げつつ姿を現すと、そこにいたのは小さな少女だった。

 魔女と呼ばれていた凶悪な前の主とは随分違うなとは思ったが、私にとって主が全てということに変わりはないため主の望む通りに動いた。


 凜という名の新たな主は孤独だった。

 その孤独を埋めて欲しいという望みの通り家族のように過ごし、外で上手くいっていないらしかったので、人間が恐れているらしい形の赤い鬼を生み出し、それを使っていじめっ子を襲わせた。

 自分は鬼だと最初に伝えた筈だが、凜はその赤鬼に私が関係していると気付かなかったらしく怯えた様子だった。

 しかしそれが幸いし、周りとの関係が改善されたようなので、作戦を変更した。

 赤鬼がいじめっ子を襲う前に偶然を装い赤鬼を追い払うふりをして峠へ誘導、その後は定期的に赤鬼の姿を見せるようにした。

 赤鬼を峠に連れて行った後のことについては、新たに赤鬼に自身の素子を少し混ぜた初老の男を作り、彼に管理を任せた。


 そんな生活を続けていたある日、凜が学校を辞めた。

 どうやら私をこの世界に留めることに力を使い過ぎて、自身を成長させる力が不足したことが原因のようだ。

 ならば私を帰せばいいだろうと思ったが、凜が自身の成長より私を望むというのなら私はそれに応えるだけだ。


 小さな凜は働くことが出来ない。そのことに悩んでいたようだったので、私が何とかしようと思った。

 といっても、見た目こそ成人男性であるが鬼である自分がまともに働けるとは思えなかった為、鬼らしく鬼を利用することにした。

 まず各地で鬼に暴れてもらい、ある程度人々に知名度と恐怖心を植えつけたところでそれらを解決する組織をつくる。

 鬼を出現させるのは私にとって容易いことであるし、すでにこれまで凜の為に出現させた鬼のおかげで知名度も恐怖心も大分与えられている筈だ。

 赤鬼だけではつまらないので、青鬼と緑鬼と、更にそれぞれに相原と田口という管理者も作った。その過程で自分の姿を変えることができる珍しい個体もできたが、あまり見た目が気に入らなかったため数体で作るのをやめた。

 赤鬼より青鬼、緑鬼の方が知能があるせいか、その管理者である2人があまり私の指示を聞かなくなってしまったがまあいい。


 そろそろ組織を創ろうと準備を始めた時、想定外の出来事が起きた。神の使いを使う人間が鬼を駆除し始めたのだ。

 元々鬼は神の使いと似たものである為、それが出来ることは分かっていたが、これまで彼らが動くことがなかった為今の時代には凜以外に神の使いが使える者はいないと思っていた。

 このままでは計画が破綻してしまう。そう思い、鬼の中では特に頭の良い青鬼を統べる相原に彼らの処分を頼んだ。

 相原はあまりいい顔をしなかったが、方法は問わないという条件で渋々引き受けた。

 数日後、相原から完了したと連絡があった。詳細を聞いても処分したとしか言わなかったため、目的は達したのでいいかと思い計画通り組織を発足した。


 思いの外組織の経営は順調だったが、相変わらず凛は孤独なままだった。

 組織として雇った人間もいるが当然大人であるし、それ以前に成長しない凛はそれを気にして長期的に関わる人と会うのを嫌がった。

 凛は星が好きなようだったので、鬼の視察時にたまたま見つけた天体観測場に連れていくと気に入ったらしい。それから定期的に連れて行くようになると、ある日変わった人間に出会った。


 黒崎千秋と名乗るその人間は、鬼の調査をしていると言った。

 気まぐれに私は黒鬼だと教えると、その人間は興奮した様子で明日もここで会えるかと尋ねてきたため、凛が気にしているようだったので承諾した。

 その可笑しな人間は私が黒鬼だということを簡単に信じた上、臆することなく話を聞かせてほしいと言い出した為、交換条件として、母親のいない凛が大人になるまで一緒に暮らして世話をしてくれるなら、というとあっさりと了承した。

 そのまま組織に連れて行こうとすると、家族に話をしてから行きたいと言い出した。面倒なので却下すると、ならば手紙を書くので渡してほしいと言われた。了承し手紙は預かったが渡してはいない。


 凛は黒崎千秋を気に入ったらしい。

 寂しそうな顔をすることがほとんどなくなり、笑うことが増えた。しかしそれと同時に悩むことも増えた。

 凛は前の主と違い優しすぎるためとてもやりづらい。前の主の場合は気に入らない相手を処分すれば満足していたのだ。だからといって凛が嫌になることはありえないが。

 とりあえず役に立っている黒崎千秋には約束通り情報を与えておく。


 また少したった頃、神の使いの力を使えるという人間が入ってきた。どうやら組織発足前に相原に処理させた人間の生き残りらしい。

 本当に力が使えるのか確かめるために青鬼の群れの相手をさせてみたところ、想定外のところで組織の評判が上がったのはうれしい誤算だった。定期的に青鬼の群れを出現させることに決めた。


 その頃には凛と黒崎千秋はとても仲良くなっており、凛の体のこと――凛が大人にならないことも凛本人から聞いたようだった。

 その上凛は、だから『凛が大人になるまで一緒に暮らす』という条件は破棄していいと言ったらしいが、私はその条件を破棄するつもりはなかった。

 どうやら神谷千尋と一緒に組織に入ってきた黒崎秋也が黒崎千秋の家族であるらしいので、()()()()()()()()()()()()()()黒崎秋也の安全は保障すると伝えたところ神妙な顔で頷いた。

 黒崎千秋には最初に尤もらしい理由をつけて行動制限をつけている。黒崎秋也と接触すると面倒なことになりそうだが、とても素直な彼女なら『これまで通り』の言葉を正確に実行してくれることだろう。


――

―――


 凛を利用した黒崎秋也を殺してやりたいが、凛が悲しむため殺すことができない。

 一緒に天体観測場に行って以降、黒崎秋也の予定を聞いてはヤツの研究室に入り浸っている。

 凛は私が消えたら他の鬼も一緒に消えると思っていたらしいが、既に生きている鬼たちは独立した生き物であり私が消えたからといって消えることはない。

 それを知った凛は、神の使いの力について神谷千尋に、鬼について黒崎秋也に教えてもらっているという。

 私と過ごせる幸せな未来を一緒に考えてもらっているの、と凛が嬉しそうに笑っているのはいいことだと思う。

 しかしやはり腹立たしいので、ヤツより先に私が、凛との幸せな未来とやらを見つけてやろうと思う。

はじめまして、またはお久しぶりです。はねうさぎです。

途中ずいぶん間が空いてしまったこともあり、もしかしたらところどころおかしな部分や矛盾した部分があるかもしれませんが、笑って流してもらえると嬉しいです。

ではここまで読んでいただきありがとうございました。

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