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9:30am/対策課事務所

「瀬戸さん、デートしましょデート!」


 恭介が事務所に入ると、若葉が突然そんなことを言い出したので恭介は眉間にシワを寄せてそんな彼女を見た。

 些か朝イチにはテンションが高すぎるが、彼女の可愛らしいお願いに対してあんまりな恭介の態度にも若葉は気にした様子はない。

「はぁ? 朝っぱらから何言ってんだアホ。仕事しろ」

「アホじゃないですー」

「アホだろ。突然訳わからんこと言い出すんじゃねーよ」

「訳わかんなくないですよ! コイビトなんだからデートしてもいいじゃないですか! だって……」


「「「はぁぁ!?」」」


 いつものように微笑ましく見守っていた対策課の面々が揃って大声を出した為、恭介と若葉はびくりと肩を揺らした。

 若葉が反射的に声のした方を振り返ると、鬼気迫る表情でこちらを見る複数の目があり、ひくりと顔を引つらせて彼らと一歩距離を置いた。


「え? な、何?」

「何、じゃねーよ! いつの間に!?」

「若葉ちゃんは裏切らないって信じてたのに!!」

「瀬戸は何だかんだ言って俺たちの仲間だと思ってたのに!!」

「微笑ましく見守ってたのに!!」

 怒涛の勢いで迫りくる同僚に気圧されて、若葉は助けを求めて恭介を振り返ったのだが。

「あーめんどくせぇ……三森、お前の責任だ。後は任せた」

「えぇ!? ちょっと瀬戸さん!?」

 焦る若葉を置いて恭介がさっさと部屋を出てしまったため、残された若葉は小一時間仲間達の熱い祝福を受けることになってしまった。




「うー……ひどい目にあった……」

 ようやく質問攻めから逃げ出した若葉がぐったりしながら第一演習室の恭介の元へやって来た。

 そんな若葉の様子に恭介が呆れた目を向ける。


「考えなしに発言するからだアホ。ああなることくらい想像ついただろうが」

「あそこまで食い付かれるなんて思わないですよー」

「何言ってんだ。あいつらいつもアホほどお前のこと可愛がってんだろーが」

「……可愛いがられてるのは私だけじゃないですからね?」

「ンな訳あるか」

「あるんですー! もー! 瀬戸さんももうちょっと自分の彼女の言うことを信用してください!」

 恭介は自分が他人から好かれる筈が無いと本気で思っているところがある。

 確かに若葉が恭介と組まされた当時、恭介は周りから遠巻きにされていた。それは恭介の言うように好意的ではない意味も含まれていたのかもしれないが、大半は畏怖と密かな尊敬からだったことを若葉は知っている。

 それに最近では若葉といるおかげで以前のような他人を寄せ付けないオーラのようなものが無くなり、顔が良いのもあり陰で結構な人気があり若葉をやきもきさせているくらいである。


「そういや何で急にあんなこと言い出した?」

「へ?」

「デートだよ」

 恭介の人気について一人モヤモヤしているところに別の話題を振られて、若葉はポカンと間抜けな顔をした。

 騒ぎの元凶となった話題は既に若葉の頭の中には無かったらしく、少しの間の後漸く思い出したようでポンッと手を打った。

「だからそのまんまの意味ですよ。一緒にお出かけしませんかってことです」

「だから何で」

「だからデートだって言ってるじゃないですかー」

 埒が明かない会話に恭介は溜め息をついて、若葉から答えを聞くのを諦めた。


「言っとくが、俺がアイツを心配してるとか思ってるんだったらそれはとんだ勘違いだぞ?」

「へ? 心配じゃないんですか?」

 先程とは違い突然の話題変換にも戸惑い無く返された相槌に、やっぱりか、と恭介は眉間にシワを寄せた。

 その反応に若葉は不自然に自然だった会話に気付き、しまった、と乾いた笑い声をあげた。

 つまりデートしましょう、イコール黒崎さん探しに行きたいですよね? ということだ。

「だって幼馴染みなんですよね?」

 バレてしまっては仕方がない、と若葉は直球で聞いてみる事にした。

「それはただの事実だろ。何で俺がアイツを心配しなきゃなんねーんだ」

「えー? だって何だかんだ言って仲いいじゃないですか」

「とんだ侮辱だな」

「どこがですか!?」

 あくまで険悪だと言う恭介に、若葉は納得がいかないらしく不満顔だ。

 若葉からしたら二人が顔を合わせる度に罵り合い、殴りあっているのは大型肉食動物がじゃれ合っているようにしか見えず、ケンカするほどなんとやら、以外の何物でもない。

 まあ準太あたりからするとじゃれ合いなんて可愛らしいものではないと言われそうだが、実際は若葉の見立ての方が的を射ているだろう。


「分かったら余計な気を使うな。外出も必要ない。いいな?」

「……はーい」

 若葉は渋々返事をした。


 確かに若葉には恭介の予想通りの思惑があった。

 しかし同時に、それを言い訳にしてデートしたかったという気持ちも少なからずあったのだ。

 自分に対する好意にはとことん鈍い恭介がそんな若葉の気持ちに気づく筈も無く、戻るぞ、と言って事務所の方に歩き出してしまった為、仕方なく若葉も諦めてその後を追った。

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