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8:30am/別館屋上

「実はシュウが今どこにいるか、だいたい分かってるんだよね」

「へ?」


 第三研究室を出て広報課の事務所に戻ろうとしたところを千紘に止められ、連れられてきた屋上で予想外のことを告げられた春陽は目を丸くした。

「じゃあ七尾さんに教えてあげたらいいんじゃ……」

「教えてあげたいのは山々なんだけど、口止めされてるからねぇ」

「口止めされてるって、僕に話してるじゃないですか」

「ちゅんたに対してだけだから、はるちゃんはいいのー」

「そんな……七尾さん、あんなに心配してるのに」

 不満そうに口を尖らせる春陽に、千紘は困ったように笑った。


「はるちゃんさ、俺とシュウの昔話したときに『アキちゃん』って子が出てきたの覚えてる?」

「あ、はい。お二人の幼なじみさんですよね?」

 突然の話題転換だったが、春陽は素直に頷いた。

 アキのことは、二人が不自然に話を反らしたきりその後話題にすることはなかったため、聞かないほうがいいと思いつつも密かに気になっていたのだ。

 春陽の相槌に、千紘は少し考えるような素振りを見せた。

「うーん、まあ俺にとってはそうなんだけど。アキちゃんはね、シュウの双子の妹だよ」

「へー、黒崎さんって双子だったんですね!」

 春陽は驚いた。

 秋也は百年に一人の天才と呼ばれるほど頭がいい上、顔もいい。

 その秋也の双子の妹ということは、そのアキちゃんもさぞ頭も顔もいいのだろう。

 その考えがわかったかのように、千尋が自分の事のように誇らしげに胸を張った。

「アキちゃんもシュウと似ててすごい賢くて、すごい可愛かったんだよ」

 春陽は千紘がアキについて過去形で話していることに気づき、嫌な予感がした。

 そこで、それまで嬉しそうに話していた千紘の顔が寂しそうなものに変わった。

「アキちゃんはね、十年前から行方不明なんだよ」



「シュウとアキちゃんはね、俺の家族が死んでから、鬼について調べ始めたんだよ。それで十年前のあの日も、調査のために鬼が目撃されたっていう西区の天体観測場に二人で行ったらしいんだよね」

「千紘さんは一緒じゃなかったんですか?」

「俺は鬼に対してあの状態だったからねー」

 苦笑しながら言う千紘にハッとして、春陽は申し訳なさそうな顔をした。

「すいません」

 春陽が謝ると、千紘はきょとんとした後パッと笑顔になった。

「何言ってるの、はるちゃんのお陰で克服出来たんだからもう過去の事だよー」

 むしろ過去のヘタレっぷりを笑っていいくらいだよ、とけらけらと笑う千紘に、春陽も安心したように笑った。


「話が逸れちゃったね。ええと、俺はそこにいなかったからシュウから聞いた話になっちゃうんだけど……そこでアキちゃんが女の子を連れた黒鬼と会ったんだって」

「アキちゃんがって、黒崎さんは会ってないんですか?」

「らしいよ。別行動してた時にアキちゃんが会ったって言ってたみたい。当時は黒鬼なんて聞いたこともなかったからシュウがアキちゃんに聞いたら、本人がそう言ったんだって言われたらしいよ」

「本人がそう言ったって……黒鬼は人の言葉を話すってことですか!?」

 驚く春陽に千紘が笑った。

「やっぱりはるちゃんは素直だね」

「……アホだと思ってます?」

「違う違う! ただ俺もシュウもひねくれてるからさ。アキちゃんのその話を聞いて、それはアキちゃんが悪い人間に騙されたんだろうって思っちゃったんだよね。アキちゃんは人の言葉を話す鬼なんて絶対調査するべきだから一緒に会いに行こうってシュウに言ったんだけど、シュウは全く聞く耳を持たなくて。結局次の日アキちゃんは一人でその黒鬼に会いに行って、それっきり……」

「そうだったんですね」

 春陽はそれを聞いてあの時の二人の微妙な反応に納得した。


「シュウと俺がここに入ったのは、アキちゃんを探すためだよ。で、今シュウはアキちゃんを迎えに行ってる」

「! 見つかったんですか?」

「うーん、どうだろ? 実は俺も詳しくは聞いてないんだよね。俺が聞いたのは、アキちゃんの居場所がわかったかもしれないからしばらく留守にするっていうのと、ちゅんたに手伝わせるからちゅんたには何も言うなってことだけだから」

 千紘が首を捻って言った言葉に、春陽も同じように首を捻った。

「手伝わせるから言うなって言ったんですか?」

「そうなんだよねー……まぁシュウのことだから何か考えがあるんじゃないかな? ってことだから、はるちゃんも協力よろしくね」

「う、はい。けど罪悪感が……」

 先程の準太の意気消沈っぷりを見ている春陽は苦しそうに胸を押さえたが、それを見て千紘はニヤリと笑った。

「でしょ?」

「あ! 千紘さん、僕のこと巻き込みましたね!?」

「だってちゅんたが可哀想で可哀想で。この気持ちは相棒であるはるちゃんに共有してもらうしかないなって」

「絶対うそだ。千紘さんは楽しんでる」

 春陽の恨めしそうな言葉に、千紘は肯定も否定もせず、ただけらけらと楽しそうに笑った。

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