9:00am/対策課事務所
ここ最近、対策課の面々の間でちょっとした話題となっているのが『恭介と若葉の間に何があったのか』だ。
先日の緑鬼の一件での出来事は、その場にいた人間の配慮により、一部例外を除き他言無用となっている。
それは自身の意思ではなく事故的に想いを告げることになった恭介への同情と、唐突に告げられた内容に対処しきれない若葉への優しさからだ。
元凶である秋也もそれについては異論はないようで、特にあれからアクションを起こす様子はない。
そんなこととは知らない彼らの同僚達は、彼らの様子がおかしいことにはすぐに気づいたのだが、その理由の特定までには至っていない。
元々恭介の若葉への気持ちは、単に気に入っている、という意見と、恋愛的に好いている、という意見に分かれてはいたが、少なからず好意的に思っていることは周知の事実だった。
それでも今回の不審な態度の理由はそういった類いの話とは誰も思わなかった。
その一番の原因が、恭介の態度にある。
現在様子がおかしいのは若葉一人だけであり、想いを告げた筈の恭介の態度は以前と全く変わらないのだ。
若葉の態度も、一挙手一投足も見逃すまいと常に恭介のことを険しい顔で見つめているくせ、恭介と目が合えば過剰なまでに肩を跳ねさせ挙動不審になるという、恋に悩む乙女と言うより肉食獣の出方を警戒する草食動物のそれに近い。
二人の間に恋とか愛とかいう空気が全く感じとれないのだ。
今の所彼らの間では、若葉が緑鬼の一件で何かとんでもないことをやらかしてしまい、現在恭介の断罪待ちである、というのが最有力候補だ。
内容は広義的に見て当たらずとも遠からず。
しかしその予想の配役が全くの逆であるとは、渦中の二人の態度を見てしまえば気づく者などいないだろう。
「三森」
「なななななんですか!?」
今日も今日とて過剰なまでの反応を見せる若葉に、恭介は内心で盛大に溜め息をついた。
「トレーニングルーム行くぞ」
「ははははい! 合点承知之助!」
「キャラ迷子になってんぞ」
そのうち落ち着くだろうと思っていたが、落ち着くどころか日に日に酷くなっていく様子に、恭介は今度こそ心の中だけでなく盛大に溜め息をついた。




