7:55am/第三研究室前廊下
秋也はその日久しぶりに自宅から出勤した。
実に半年ぶりの帰宅は、家事が壊滅的な上ほとんど家にいない家主の代わりに掃除やら草取りやらの管理をしてくれている幼なじみに、泥棒かと思った、と大変失礼な反応をされることとなった。
そもそも帰宅したこと自体、秋也が自発的に行った訳ではない。
春陽と若葉が緑鬼に拐われたあの事件から二週間が過ぎ、季節は夏から本格的な秋へと変わっていった。
朝晩が少し寒くなってきたことで体調を崩す子供が増え、小学校では高熱を伴う感染症が流行の兆しを見せているという。
充には小学生の娘がいるのだが、その娘も感染症にかかってしまったらしい。
基本的にその感染症が発症するのは子供だけだということで、充自身は特に体調を崩してはいなかった。
しかし充が第三研究室に来た次の日、準太が高熱を出した。
第一医務室の篠塚湊に見てもらったところ、例の感染症にかかっているとのこと。
大人でかかるのは珍しいと言われたが、そこは準太が準太であるが故に仕方がないと秋也は思った。
やらなければならないことが大量にあるため帰りたくないとぐずる準太が秋也に出した条件が、『ちゃんと秋也が自宅に帰って寝ること』だった。
秋也はそれを了承し、準太を帰宅させ、自分も約束通り帰宅したのだ。
余談だが、秋也の今回の連続泊まり日数の半年というのはこれまでの最長記録であった。
そんな訳で珍しくきちんと夜に睡眠をとり、珍しく爽やかな朝を迎えた秋也は、自身の職場である第三研究室の前という珍しい場所で雲雀に出会った。
「あ、おはようございます」
「おー、おはよう」
ここには結構な確率で広報課の二人がいるために、雲雀は基本的ににここに近寄ろうとしない。
恐らく秋也を待っていたのだろう。
普段なら秋也は泊まり込んでいる為いつでもいるから、もしかしたら結構長い間待っていたのかもしれない。
あまり接点がない自分に何の用事か秋也には全く検討もつかなかったが、とりあえず研究室の鍵を開けて雲雀を中へと促した。




