3:00pm/二階堂私室
「仕留め損ねた」
慎弥に対して、圭一が不服そうにそう報告した。
「私は『仕留めろ』とは言ってないはずだけどね」
「『生死は問わない』とは言うてはったよ?」
「うんまあ、そうだね……うん」
圭一の言葉に、慎弥は困ったように笑った。
確かにそう言ったが、出来れば生かせ、と言う意味で言ったのだ。日本語とは難しい。
「まあそもそも田口が捕まるなんてそれこそ奇跡だ」
「……ボクじゃ力不足ってこと?」
「そうじゃない。それほど田口の能力が高いってことだよ」
「二階堂さんでも捕まえられない程?」
圭一の質問には答えず、慎弥はにっこりと笑った。
その反応に圭一は更に不服そうな顔をした。
「二人はお知り合いなんよね?」
「そうだね。腐れ縁ってとこかな?」
「仲悪いん?」
慎弥は圭一がこんなに此方のことを聞いてくるのは珍しいと少し驚いた。
まあこんなに幾度となく逃げられているのは田口のみだろうから、彼の中のプライドを刺激されたのだろう。
慎弥はふむ、と顎に手を当てて、圭一の質問について考えた。
「仲が悪い、とは違うかな。私は彼と話がしたいのだけれど、彼が私を毛嫌いして逃げ回っている、といったところかな」
「そういうのを一般的に仲が悪いっていうんと思うよ」
まさか圭一の口から一般的に、なんて言葉が出るとは。
教育の賜物かな、と慎弥は嬉しそうに笑い、ほなまた、とあっさりと帰っていく圭一の後ろ姿を見送った。




