1:00pm/北原森林中央
「大分降りて来たんじゃない?」
「そうですね。そろそろ……あっ! 三森さん! これ見てください!!」
そう言って興奮した様子で差し出す春陽の端末は、ついに長時間居座っていた圏外の文字が消え、辛うじて一本だが確かに電波があることを示していた。
「やった! これで連絡が……んん?」
同じように嬉しそうにした若葉だったが、すぐに何かに気付き眉間に皺を寄せた。
同じタイミングで春陽も気付いたようで、警戒するようにきょうすけを抱きしめた。
どこからか足音が聞こえる。
その軽さから判断して鬼の足音ではなさそうだが、千紘や恭介が助けに来るのであれば恐らくバイクを使うだろうと若葉も春陽も思った。
音からして複数人であり、若葉たちの方へと向かってくる。
結構なスピードだ。
音を消してないことから、何かから逃げているとも考えにくい。
最初に拐われた場所より下って来たとはいえ、まだ結構な森の奥だ。
もしかしたら千紘や恭介がバイクでは走り辛いと判断して、途中で乗り捨てたのかもしれない。
様々な可能性が若葉の頭を巡ったが、結局答えは出ないまま足音はもうすぐ側まで迫っていた。
防護布をしっかり掴んで音のする方向を見ていると――
「あれ? 三森の嬢ちゃんやん。こんなとこで何してはるの?」
「~~笠原さん!!」
茂みから飛び出してきた圭一と奈津美の姿を見て、若葉は一気に全身の力が抜けてへたりこんだ。
「なぁ田口見てへん? こっちの方に行ったと思ってんけど」
「えっと、誰も見てないですね」
若葉の様子などお構い無しに一方的に喋る圭一に、春陽は混乱したがとりあえず若葉の代わりに質問に答えた。
春陽は圭一と面識はなく、若葉を心配する様子もないことから組織外の若葉の知り合いだと判断した。
「そか、坊っちゃんおおきに! じゃあ嬢ちゃんまたな」
そう言って圭一と奈津美は来たときと同じように猛スピードで去って行った。
「……っは!! 笠原さん、助けに来てくれたんじゃなかったの!?」
漸く我に返った若葉がそう叫ぶが、既にそこに圭一の姿はない。
「えと、今の人達は誰なんですか?」
「一応対策課の先輩?」
「え」
それ以上春陽は言葉を諦めた。
一応という枕詞と疑問形であることが全てを表しているような気がしたし、それ以上何を聞けばいいのか分からなかったのだ。
再び複数の足音が近づいて来たのが聞こえたが、二人はもう警戒する気になれなかった。
圭一たちがあれだけ元気に走り回っているのだから、この辺りにもう危険はないのだろう。
隠れるでも恐れるでもなくただその場で待っていると、左右から同時に今度こそ待ち望んだ救助がやって来た。




