12:30pm/???
「三森さん、大丈夫ですか?」
「平気だよ。ありがとう」
「あ、あそこに良い感じに隠れられそうな横穴があります! 大丈夫そうだったらちょっと休憩しましょう」
三人が元居た場所から出て歩くこと数分、現在順調に山を下っている。
幸いなことに今のところまだ一度も鬼に遭遇していない。
「きょうすけくんも平気?」
「うん!」
何も居ないことを確認してから中に入り、抱えていたきょうすけを下ろして様子を確認する。
どうやら体調、精神共に問題なさそうだ。
「うーん、まだ駄目みたいだねぇ」
「ずいぶん運ばれましたしねー」
二人はいっこうに消えない圏外の文字を見て溜め息をついた。
「それにしても、鬼が全然いないですね」
歩き出してから暫くはいつ鬼の大群に出くわすかとひやひやしながら歩いていた二人だったが、幸いなことにここまで未だに一匹として出くわしていない。
それどころか気配さえ全く感じなかった。
「そうなんだよね。恐らくさっきの場所が巣だったんだと思ったから、何匹か出会うのも覚悟してたんだけど……」
「なんかこれだけいないと逆に不気味ですよね」
「そうだねぇ」
居たら居たで困るのだが、居ないと居ないで不安になる。複雑なものだ。
とりあえず再度周りを確認すべく、若葉が横穴から顔を出した丁度その時。
ドォン……ドォン……ドォン……
「爆音……!!」
遠くからだが確かに聞こえた大きな音と小さな地響きに、若葉は再び横穴の中に身を潜め、春陽はきょうすけをしっかりと抱きしめた。
そのまま暫くじっと耳を澄ませてみたが、それ以降爆音は聞こえない。
「……何だったんでしょう?」
春陽は不安そうにきょうすけを抱きしめている。
「うーん……とりあえず、この辺に鬼が居なかったのと今の音、関係あるかもね」
「え? 何でですか?」
仮定と言うよりほぼ確信めいた若葉の言葉に、春陽は不思議そうに首を傾げた。
「今の音、手榴弾の音だと思う。鬼相手でもない限り、そんな物騒なもの使わないと思うんだよね」
「! ってことは、誰か助けに来てくれたんですかね?」
春陽が期待に目を輝かせたが、対して若葉は複雑そうな顔だ。
「だったらいいんだけど、そうじゃなかった場合が問題なんだよね。私は今満足に動けないし、きょうすけくんもいる。最悪はさっきの音が過激派のものだった場合。まあ過激派が鬼相手に攻撃するとは考えられないんだけど、近づきすぎて襲われそうになったから威嚇、とかだったらあり得なくもないからねぇ」
それを聞いて、春陽の顔がサッと青ざめた。
春陽はまだ過激派に遭遇したことはないが、過激派がどれだけ危険かは一般人でも知っている。
「とりあえず音がしたのはここから結構遠かったと思うし、念のため別方向に向かおっか」
「そうですね」
春陽が若葉の提案に頷いて、二人は音の聞こえた東の方ではなく、南の方へと歩き出した。




