5:00pm/第三研究室
秋也は渡された駆除したカメレオンの細胞と今回の報告書を見ていた。
「どうしたんですか?」
解析も報告もとっくに終わったそれをじっと見つめて考え事をしている秋也に、何か問題でもあったのかと準太が尋ねた。
いつもは明確な答えか準太をからかうような言葉がすぐに返ってくるのだが、秋也にしては珍しくうーん、と唸って何とも歯切れの悪い返事だったことに準太は首を捻った。
「何で赤鬼だった?」
「え? 『僕らを欺くため』じゃなかったんですか?」
カメレオンの疑惑が浮上したときに秋也はそう言っていたはずだ。
すっかり自分の思考の中に没頭していた秋也だったが、そこで漸く顔を上げて準太を見た。
「そう、俺もあの時はそう思っていたんだが、目撃されたならもうその後は赤鬼でいる必要はないだろ? 現に藤咲の前に現れた時には擬態が剥がれて色以外は完全に元のカメレオンの姿だった」
駆除完了後に任意で目撃者に聴取を行ったところ、彼らは口を揃えて目撃した鬼はこっちだったと本物の赤鬼の写真を指差した。
「え? そうなんですか?」
準太はその情報は知らなかった。
「うーん、擬態細胞の不調か、思考の欠如か……」
「それともう一つ、西条達が南南峠で会ったじいさん」
「ああ、ハイキングに行こうとしていた」
突然の話題の転換に、準太はここまでの思考を一旦中断して瞬時に切り替えた。
秋也の話が飛ぶのはいつものことで、最初はついていけなかった準太だが、六年も一緒にいれば慣れたものだ。
「何で赤だと思ったんだろうな」
「ああ、確かにちょっと違和感はありましたけど。思い込みなんじゃないですかね? 出現率は赤鬼が圧倒的ですし、鬼と言えば赤鬼が描かれることが多い。だからご老人は鬼と聞いて赤鬼を思い浮かべたんじゃないかと僕は思ったんですが」
準太の予想に、秋也はその可能性もあるが、とやはり歯切れが悪い。
「……まぁまだ様子見、か」
「結局何が気になってたか教えてくれないんですか?」
準太の不満気な顔に、まだ話せるほどまとまってねーんだ、と秋也は苦笑した。
「そのうち話すよ」
少し面白くなさそうな準太だったが、そのうち話す、との言質をとれたのでとりあえずその場は諦めて頷いた。




