2:30pm/第三研究室
駆け込んで来た忠久の話を聞いて、準太は違和感を覚えた。
その特徴の全てが今まで認識されていた赤鬼のそれとはかけ離れていたからだ。
情報が間違っているか、或いは対象が赤鬼ではないか。
準太はその二つの可能性のどちらかだろうと考えたが、彼がそこまでの考えに至った時点で既に秋也には結論が出たらしい。
『カメレオン』
通信機の向こうから聞こえてきた女性二人の声を聞いて、楽しそうに彼女達に返事をした。
「カメレオンだぁ? 今回の赤鬼の正体はそんなツチノコみたいなモンだってのか?」
忠久が驚いて秋也に尋ねた。
「これまで捕獲例が一件しかないってだけで、そんなに珍しいものじゃないと僕は思ってるんです。カメレオンはその名の通り擬態します。あまり鬼についてよく知られていなかった頃、他の鬼として処理されていたとしても不思議じゃない」
「確かにそうだが、目撃者は口を揃えて赤鬼だと言っていたぞ? 黒崎が言うようにカメレオンだとしたら、何故わざわざ目立つ赤鬼になんて擬態したんだ?」
準太も同じように考えていたらしく忠久と共に秋也に視線を向けた。
「前列が少なすぎるためあくまで推測になるのですが、まずカメレオンはその特性、擬態出来ることから考えて、鬼の中でもあまり能力は高くないと考えられます。赤鬼の様に強ければそもそも擬態する必要はありませんから。そして擬態するということは、何に擬態すれば自分にとって利になるか、ということを考えることが出来るくらいには頭が良い。そして過去に一度しか捕獲例がないことから考えても、擬態能力があると同時に酷く警戒心が強く、慎重な性格ではないかと。だから今回赤鬼の目撃情報が多数出たのも、敢えて自分とほぼ正反対とも言える性質の赤鬼が出たと思わせてそれを追わせ、こちらが混乱している隙に目的を果たそうとしているカメレオンの仕業だという可能性が一番高いと思いますよ」
秋也の説明に準太と通信機の向こうの雲雀は納得したが、忠久と一華は一気にもたらされた情報の処理が追い付かなかったらしい。
忠久は黒崎がそう言うならそうなんだろうな、と考えるのを放棄し、一華は取り敢えず今回のターゲットはカメレオンってことね、と話の大筋のみ理解した。
『……ちょっと待って。てことは』
通信機の向こうの雲雀が硬い声で問いかけた。
『ターゲットはとっくに目的地に向かって行ったってこと?』
最後の目撃情報から随分時間が経ってしまっている。
一華は慌ててカメレオンの目的地であろう保育園にいる二人に連絡を入れた。