秘密の入り口?!
ー雪菜視点ー
『回して、早く回して!!』
え?
何を回すの?
曇った鏡だったはずの鏡面には、ドアのノブが見えているし。
私の手は、誰かに鏡の中で握られたままだし。
足は震えるけど、女は度胸!!
えーい!!
左手もズボッと鏡の中へ突っ込むとノブへと伸ばしてガチャと回した。
バチッ!!!!!
イッターーーイ!!
感電?!
バチっていったから。
この鏡って電気が流れてるの?
ん??
鏡がない?
真っ暗な空間が目の前にあるのみで、今まであったはずの鏡が消え去っていた。
あ!
私の右手!!
ふぅ、無事ね。
でも、誰が握って……あーー。。
考えるのやめよう。
後ろを振り向いて、ドキリとしたわ。
だって、アーノルドもエイダムさんは固まっていたから。
え?
違うわよ。
石膏のように、完全に固まってたのよ!!
いや、違うわ。
この部屋全体が固まってる?
コツコツコツ…。
や・め・てーーーー!!!!!!
足音が響くとかって、安物のホラーじゃない!!
ダメよー!!
私ってば、コマーシャルでも目を瞑るくらいなのに…。
足音は間違いなく暗闇の中から響いていたわ。
近づいてくる…。
アーノルドもエイダムさんも、固まったままで助けにならない。
手を握って飛びたくても、全く反応しない。
その上、図書館は灯りが消えて薄暗いから出口も見えないなんて!!
足が震える…。
『雪菜…』
ぎゃぁ!!!
名前呼ばれた!!
お化けに名前呼ばれたなんて、もうダメだわ。私もお化けになっちゃうよ!!
「なんて早とちりなんだ。
雪菜ってば、相変わらずだね。
ちゃんと見て!!
僕が分からないの?」
目を声のする方へ恐る恐る向ければ、そこには、巨大な何か。。。
えっと、間違いなくペンギン風ではあるけど、大きさがね。
正直、私より大きいもの。
身長180センチとか。
イケメン俳優並みの背に、鶏冠のような毛がピンっと立っている。
見た事のない、巨大ペンギン?!
まさかのブルーレル?!
「ふぅ。
スーパー鈍感な雪菜も少しは大人になったね。そうに決まってるだろ?
図書館にいるのは、俺!!
ブルーレルのみ。
あ、ゲルガーもいるけどね。
とは言え、助かったよ。
秘密の部屋に入ったは良いけど出れなくなっちゃって」
ん?
秘密の部屋って?
まさか、出れなくてずっと中にいたの?
鏡ってば、その入り口?!
「まあ、厳密に言えば違うけどね。
まぁ…そうかな。
出れたよ。ただ、気付ける人間を発見する為に閉じ込められたフリをしてただけさ!」
ブルーレル…。
それってば、鈍感か私にも分かるわ。
出れなかったのね。
図書館の番人ともあろう者が…。
クス。
でも、良かった。
無事だし、何よりホラーじゃないし、
あ!!
ゲルガーは?
アーノルドとエイダムさんは何でこのまま??
「もう!
次から次へと。
入り口が開く時は、僕の他にはこの図書館の主人のみしか動けない。
そう言う仕掛けだよ。
えっと。
あ、ゲルガーだっけ。
付いてきちゃったけど、暗闇の中にずっといたせいか前より元気そうだよ。
ちょっと雰囲気が変わったかも。
秘密の部屋にいるよ」
そんな説明の最中に急に、固まってたアーノルドやエイダムさんが動き出した。
慌ているアーノルドは、秘密の入り口やら、大きくなったブルーレルやらで混乱してたわ。
落ち着いてツッコんだのは、エイダムさん。
「初めまして。
エイダムも申します。
噂は、かねがねお聞きしております。
『最果ての一味』がこちらのモノを狙っております。彼奴らは手が届く雪菜殿へ狙いを定めた様子。御助力を雪菜殿へお願い致します」
やっぱり…偽物じゃ。。
ううん。
違うわね。体験は大きく人を変えるもの。
ブルーレルとエイダムさん。そしてアーノルドの深刻な話は続いてる。
でも、私を置き去りよね。
「ねぇ。ブルーレル。
どうして図書館はこうなったの?」
蜘蛛の巣だらけの図書館は未だ変わらすだもの。
「これは、防御。
この図書館は管理者たる者が一定期間いなければ、自動的に防御体制になる。
その中で侵入可能なのは、主人のみ!!
ま、とにかくアーノルドもエイダムも秘密の部屋へ行こうか。
敵が迫ってる。
この『大森林』にも間もなく侵入するだろうからね」
それは、誰も予想しない事態!!
精霊が護るこの空間に?
どうやって??
「なるほど、『オゼルの大刀』を悪用するのか…しかも、鍛冶屋のバンブルもとなると…」
考え込むアーノルド。
どうしよう。
だいたい、せっかくお買い物に付き添ってくれたバズールに言わないままだもの。
きっと心配してるわね。
「ゲルガーが役に立つよ。
変な才能を開花させたからね。
さぁ、とにかく中へ」
そう、言われた私たちが進む先には下の階段。
下の方は、真っ暗だわ。
でも。
左右を護るように立つアーノルドとエイダムさん。
案内には、巨大ブルーレル。
負けないわよ。
ホラーにだって…たぶん…




