人は変われる…。
ー雪菜視点ー
優しいお味のお茶は、ハーブティーかしら?
あの後、私達が案内されたのは今、エイダムさんが使ってる別荘。
さすがお金持ち!!
別荘とか…。
と、言ったら隠れ家だと。
貴族は危険と隣り合わせだから、必ず幾つか持っているらしいの。
さて。
どうしてココに私がいるかと言うと。
あの時、エイダムさんだと理解して私は凄いと思う。
それほどにエイダムさんは、様変わりしていたの。
精悍な顔つきは、見た目を10歳は若返らせた。長くカッコをつけた髪の毛は短く切り揃えられ逃亡生活の厳しさも物語っていた。
そして。
最も変わったのは表情。
斜め横に、人を見ていた目つきは真っ直ぐな瞳となり信じるに値する人間だと私に教えてくれる。
「雪菜殿。
我が故郷をお救い頂きありがとうございます。
逃亡者として永遠に彷徨う身かと思っておりましたが再びこの国に戻る事が叶いました」
そう言うエイダムさんをバズールはかなり疑っていたけど、敵の目を欺く為に都合良いと誘いに乗ることにしたみたい。
大丈夫なのに。
人間は変われる動物。
私はそう信じる。
エイダムさんの横顔は、それを裏付けるモノに見える。
お付きのジェイダムさんに手配させていたと言う通り、偽物の私とバズールさんが登場して目眩しとなる。
私達の変装道具も容易万端で。
あのー。
また、ゴスロリ?!
もう!!
罰ゲーム!!と言ったら。
「確かに。
忍耐力のテストの様なモノですな」ってバズール。
正直過ぎる!!ってツッコミたい。
けど。
分かります。
分かってますから。
三十路のOLは夢みがちじゃ生きていけないから!!
と、言ってる間に別荘で、今ココ!!
バズールは屋敷を確認した後で、ギャビンの元へ。
事は急ぐ。
バンブルさんの安否は一刻を争うモノ。
国境封鎖を頼んできます。と駆け出すバズールにエイダムが一言。
「後手に回っていると思います。
あの一味は、特別な業を持っている」
苦虫を噛み潰したようなバズールが。
「それも含めて陛下の采配を仰ぎます。
バンブル殿は陛下の信頼を寄せる相手。恐らく先頭に立って采配を振るわれるでしょう」
と、一先ず姿を消したバズール。
エイダムさんと、差し向かいになった私は、気になる事を尋ねた。
「逃亡者となってからどうされていたのですか?」
そう聞く私にエイダムさんは苦笑いを浮かべながらジェイダムさんの実家に匿われていたと。そこで再び私に救われたと。
何で?!
私と会ってもいないのに…。
「薬箱です。
ジェイダムの故郷の村で流行病が起きました。なす術のない我々をあの『カゼグスリ』が救ってくれたのです。
あの箱に、他にも何人が救われたか…」
目を閉じてしみじみとするエイダムさんの様子に私の胸も熱くなったわ。
薬箱。
それは薬草に携わる私にとって大切なモノ。
この世界に広めたい。
そう願うモノ。
思わずエイダムさんの手を握りしめ「ありがとう…」と言ったら。
あら、いけない。
図書館に、エイダムさんごと来ちゃったわ。
無意識だったのに。
は!!!!
ネコババ…。
そんな事を思っていた私は図書館の変質に気付かないまま。
一人で焦っていた…




