ドルタ帝国最高会議にてーベレット視点ー
ーベレット視点ー
「問題は、その場所が何処にあるのかではありません。
何故、今か。
と、言う事です」
ルスタの『大森林』
そして、我が国の離宮。
トトラルの異変。
世界に何かが起こっている。
その上、『秘密の扉』が開くとは思わなかった。高山への道…。
だが、真実がひとつある。
それは、そのどれもに雪菜殿が関わっていると言う事実だ。
「あの小娘に何をそんなに血相を変える事があるのだ?
重要な小娘ならば、陛下の側室にでもすれば良いのだ!」
あれは…ドタレス男爵か。
この会議に出席するメンバーでは、なかったはず。何故…あぁ、そうか。
あそこは、グース家の遠縁を奥方に持つ者。
コネを使って潜り込んだのか。
ネズミめ!!
「ほう。
ドタレス殿は、小娘をお気に召したのかな?
貴殿の物差しは、相変わらず濁っている。
ふぅ。
事は重大な局面だと言うのに、それに気付かねば奥方の遠縁と同じ憂き目に合いますぞ?」
クライス殿の祖父のダーゼン家御当主か。
助かる。
この様な会議を幾つ重ねても、まともな結論など出るはずも無い。
馬鹿ばっかりの会議など…。
「おや、ベレット殿にしては珍しくポーカーフェイスが崩れておられる。
さぁ、小娘の持つ意味を答えられる者とていまい。
この会議は、このへ…」
「待ってください!!」
ダーゼン殿の言葉にホッとしたその時だ。
横槍が入る。
誰だ?
見知らぬ者だが…。
「雪菜の見た絵をお見せしたい。
だから、ココにお持ちしました。
この絵の意味をよく考えて下さい。その意味を…」
小柄なその男は、それだけ言うと絵を置いて部屋を出ようとする。
慌てて、引き止めようと手を伸ばした、その時!!
『雪菜の声に耳を傾けよ。彼女だけが見える。いや、見えているモノがある』
こちらを振り向き様にそう言い捨てると扉から出てゆく。
止める為に伸ばした手は、動かない。
いや、身体も動かない。
これは…。
パン!!!!
音と共に、この会議室の全員が動き出した。
もちろん、手を打って我々を解放してのは…。
我が君…。
いったい、何があったかを尋ねれば。
「解けたか?
あれは、我々の手の届かぬモノ。
恐らく、碧殿の写見」との事。
本日、バズールと街へ出ている雪菜殿の肩には確かに碧殿の姿が。
ゾゾッ!!!
背中に走る怖気に慄く。
精霊でも無い。
妖精でも無い。
祝卵とは、いったい…。
「雪菜殿は、言われた。
精霊に頼らず、精霊と共に歩む道もある。
とな」
。。。
薬草を見て気づいたんだ。
精霊の齎すモノだと。
でも、それを見つけるのは人間だ。
雪菜殿はその価値を知るモノだ。
知りたいと努力した…その事実こそが重要だ!
「我々も知る努力を怠らず、積み重ねて行くぞ!!」
「「「はっ!!!」」」
全員が平伏して会議が終わりとなる。
例え、ドタレスの様な馬鹿者でも碧殿の凄さは理解出来るようだ。
我々の進むべき道を…。
ー雪菜視点ー
「えーー!!!
ココなの?」
私の叫びがこだまする。
何故なら、ギャビンから頼まれたお使い。
『オゼルの大刀』の受け取り。
それだけだったはずだったのに…。
「鍛冶屋のバンブル殿は、昨日より行方不明です」
って。




