護衛役になってークライス視点ー
ークライス視点ー
雪菜殿の帰還。
その一報は城内を一瞬で駆け巡った。
雪菜殿を知る者は当然のことながら、
雪菜殿に会ったことのない人間達も、その一報に歓喜した。
彼女は、ドルタの救世主。
それは…
まさに妖精ゼーラン様の復活であり
離宮のあの驚愕の復活…。
更に、慶鳥を遣わし『祝卵』が顕現する。
その癒しの風は我が友バズールの命のみならず、周辺にいた全ての人々を癒したのだ。
これを奇跡と言わずして何を言うか。
我が国は変わった。
まず、陛下自身が変わった。
人々あっての、国。
市井の人々を守るため、ある『騎士団』。
市井の人々の為の税と使い道。
皇帝陛下自らが、市井の人々に仕える者だと言い放つ姿に胸を突かれた。
俺は俺自身の生き方を問われた気がしたのだ。
騎士団の隊長となって、何を守るのかと。
陛下について行くには、考えねばならない。
その答えを探す中でのこの一報だ。
私は直にお会いした事のない方、雪菜殿。
今日がその初めての出会いとなる。
雪菜さんに我が王宮を案内する。
陛下自ら買ってでた案内役。
当然の事ながら、ご一緒のベレット殿。
そして、我が騎士団数人と何故かバズール。
しかし…。
前を歩く人物は、どうも奇天烈な雰囲気を醸し出すながら進んでいる。
聞いた通りの小柄な可愛らしさ抜群の女性。
思わず、妖精なのではと疑いたくなるほどの可憐な雰囲気に呑まれそうになる。
が…。
あれは、何をしているのだろうか。
壁や床を触っては「フッカフカだぁ」とか「本物の王宮なのね!」と言う奇声を上げている。
その為、中々先へと進まない。
バズールが私に囁く。
「あれは、感激しておられるのだ。
彼女は、純真な方だからな」
くぅ。
あれからコイツはこうだ。
やたらと、雪菜殿の事を語る。語る。
純真な方だと…。
そんなモノ見れば一発だよ。
更には、
「あ、ごめんなさい。興奮して騒ぎ過ぎちゃって。
次へお願いします」
そう言って頭を下げる雪菜殿の姿は、気配りのある方とすぐ分かる。
しかし…そんな時私は見てはいけないモノを見てしまったのだ。
アレは…。
陛下、何というお顔を!!
マジで初恋ボーイの様ですよ!
あのデレた顔…
顔面崩壊か?!
我が君…。
不味い、誠に遺憾な限りだ。あの顔は全てを物語っている。
気づかないのは、恐らく鈍感な我が君とその上をゆく雪菜殿のみだ。
生暖かい目を浮かべつつ護衛にあたる我が隊員。
我が君の威厳がピンチだ。
死活問題ではないのか、我が君への憧憬は…。
なんだ?!
増えたのか、恋煩いチームが…。
「分かる。
何にでも感激するウブなお姿!」
おい。心の声がダダ漏れだぞ?!
そんな中、彼女の凄さを知る事態が発生する。
「え?
碧ってば、そんなの悪いじゃない…分かったわ。
ギャビンに頼んでみるわ」
何やら独り言を言った後彼女は壁を指差して。
「あのね、もし出来たらお願いがあるの。
この部屋に入れさせて貰いたいの」
はにかむ姿が可愛らしいが。
雪菜殿、そこは壁ですよ?
あっさりOKを出す我が君も我が君だ…ん??
ガチャ????
か、壁に突如現れた扉????
「お邪魔します」
あくまで行儀の良い雪菜殿だが、それに感心する者も無い。
湧いてでた部屋は、驚きに満ちていたからだ…。




