浴室から出たいのですが…。
ー雪菜視点ー
さぁ、どうするのよ。雪菜!!
この状況…。
大浴場。
温泉。
それは、日本人の魂。
特に。。。
灰だらけとか。
汗まみれとか。
そんな時は、魅力満載の場所となる。
だけど。
脱衣所で立ち尽くす今の私は我に帰りましたから!!
そりゃ、さっきの衣装は着れないわよ。
灰だらけだもの。
でもね。
この着替え。
用意してくれたのは、まさかのギャビン?!
ベレットかしら。
とにかく。
コレ間違いだらけですから!!
伝統衣装なのかなぁ。
出るところがちゃんとしてる人専用の服よね。
ヒラヒラとしたドレスは、身体にピッタリ沿っているタイプ。
それに、この布。
高級な香りがするもの。
さらっとした肌触りは、そりょ心地よいから満足感いっぱい。
でもね。
風呂上りの格好じゃないよね。
と、戸惑っていた私はすっかり時の経つのも忘れていたら…
ざわざわざわざわ…。
あら?
外からヒソヒソ声と沢山人の気配が?
「頼む。
其方でなくては、出来ぬのだ。
正直、レジー殿に頼むのは雪菜殿に後から恨まれそうな気がするのだ。
もしかしたら、中で具合が悪くなっているかもしれない。一刻を争うのだ!」
ええーー!!
ま、不味いわ。
お風呂をお借りした身でありながら、家主に心配かけるなんて。
ガラ。
私は急いで扉を開けて、また固まった。
人・人・人。
何?
そんな大騒動になったの?!
「ギャビン。ごめんね。
ちょっと、この服が間違えて出して貰ったみたいで。
着ていいのか考えてたら、時間を忘れてしまったのよ。
皆さん。ご心配をおかけしました」
頭を下げて謝るもシーンとした場の雰囲気に冷や汗が背中を伝う。
せっかくお風呂であったまったのに。
あまりの静かさと、ギャビンの返事のない事に焦れた私はそろりと顔を上げると。
ん?
真っ赤な顔のギャビンが立ち尽くしていたけど。
もしかして、風邪?
具合が悪いのかと、急いで駆け寄った私が額を触って熱を測っていると。
え?
ガクッと膝をつくギャビン?!
「ねぇ。
息苦しさがある?
熱は無いけど、何処か痛みがあるかしら。
あ!
ベレットさん。
ギャビンをベットに連れてゆく用意をしてあげて!!」
人混みの中にベレットさんを見つけた私は慌てて頼む。
急がなきゃ。
肩を抱くようにして立つ手伝いをしようとしたら…ギャビンが私の手首を掴んで一人で立ち上がる。
「ありがとうございます。雪菜殿。
私は大丈夫です。
雪菜殿こそ、お身体は大丈夫ですか?
長きに渡ってお姿が見えず皆、心配をしておりました」
立ち上がったギャビンの顔色はいつもの様になってホッとしたけど、油断は禁物、と。
えーと。
お姿が見えないとは?
え?行方不明って、誰が?
私ーーー?!
え?
アーノルドのところから転移して。
『僕、役に立ったでしょ』
あ、碧!!
肩にいたのは、確かあの時のあおむし。
あら?
ちょっと大きくなった?
もしかして…貴方が?
『うん!
これから僕がいっぱい頑張るから、沢山頂戴ね』
ツッコミ処満載だね。
何を頑張るのかしら?
頂戴って…葉っぱじゃないわよね…。
うーん。。
「雪菜殿。まさかそれは…」
ギャビン!!
今度は顔色が青いじゃない!!
やっぱり、休んだ方がいいかも。
「いえ。ご心配無用でお願いします。
それより、それは祝卵から生まれたのですか?」
しゅくらん?!
ああ、慶ちゃんが産んだやつね。
そんな名前があるの。
そうよ。
って答えたら、周りが響めいた。
それにしても、この人達誰?
ココは何処?
かなり遅れた当たり前の質問に。
「ここは、ドルタ帝国の王宮。
そして、貴方はあれから数ヶ月も行方不明だったのです…」
そう。
王宮に碧は連れてきてくれたのね。
ん?
えーと、数ヶ月?!
ええーー!!
あの真っ直ぐな廊下に数ヶ月も居たの!!!!
『大丈夫。
雪菜にとっては、半日だから!!』
碧。。。
ツッコミ担当になれそうよ…私。。。




