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森に囲まれた!  作者: ちかず
89/233

あの時、サイラス達は?!

ーゲラン視点ー


襲われた…。

俺を庇って仲間が傷ついたその隙に…


雪菜殿を攫われた。



ジェマ様よりの勅命。

優しい雪菜殿を何より俺自身が守りたいと望んだのに。


ぐったりと倒れた瞬間の雪菜殿のお姿が頭の中を何度も何度も繰り返し過ぎてゆく。


俺を庇い血を流すメゼルを助け起こすも「追え!俺に構うな!!」の声に頭を下げ俺は前へと進む。

すまない。


とにかく。

手掛かりが消えない間に…と。



消えた方向は、チラリと確認済みだ。

駆けつけたサイラス様にメゼルを託すとひたすら駆け出す。



雪菜殿の元へと。



角を曲がると敵の気配を探る。


逃げる者達はかなり慌てている。

必ずや、痕跡を残すはずだ。


痕跡を…。



どこだ?


駆け出した足跡が複数あるも、突然ピタっと消えている。

まるで、魔法だと言いたいがその気配すら無い。

いったい…。


呆然と立ち尽くす俺は突然声を掛けられる。

しかも…女性??


何だ…いったい誰だ?!



「ここはいいから、すぐさまサイラスの所へお戻り。今晩には、必ず足取りを掴むよ」


え?ええーー!!


レジー様?

何故ココに?


混乱する頭を整理する間もなく、レジー様の指示に従うのみ。

とにかく…レジー様の命令は絶対なのだ。

聖騎士団に所属した者なら必ずや知るレジー様の凄さ(ある意味最強だと言われている…)


戸惑いながらも、指定された宿屋へと急ぐ。



宿屋には全員が揃っていた。

心配したバレンの怪我もリカルド殿の処置が素早く回復する程度のモノだと。

しかし、あれほどの深手が?!


と、思えばやはり…雪菜印の傷薬。


最近、雪菜殿がマークをつけたのだ。

新商品(薬)には、印が良いわねと。



雪菜殿…。



「ゲラン。

焦る気持ちは分かる。全員が同じ心持ちだ。

だが。

既に雪菜殿が攫われた事実の前にレジー以上にその当てがある者はいない。

彼女が確約したのだ。

今夜必ず、見つけてくると…」


サイラス様。

ギャビン殿に雪菜殿を託されたのに、ずいぶん落ち着いて…。


いないか。

握りしめた手のひらから、滴る血。


この中で一番忸怩たる想いを持っているのは、当然サイラス様か。



その晩。

レジー様が驚くべき事実を我々に告げたのだ。



ーサイラス視点ー


完全に裏目に出た。


雪菜殿を攫われた事にして匿う手筈は、本当に攫われると言う最悪の事態となる。


ただ…。



アレは子供の仕業では。

ならば…。



レジーに託すと宿屋へバレンを運ぶ。

リカルドの適切な処置で安定した状態だが、ゆっくり休ませる必要があると。


雪菜の薬は、彼の命を守ったのだ。

 


その晩。

レジーが告げた内容は、予測範囲内で。

裏町で最近囁かれる噂。


力を持つ子供達。


先程助けた子供達も仲間だろうと。


道理で雪菜殿をまんまと攫われたはずだ。

マティに言われた『甘いんだよ。お前は』と言う言葉が蘇る。


今すぐ乗り込みたい所、レジーにして歯切れが悪い。



ん?



場所の特定が難しいと。

だが、子供達が攫ったのなら必ず動きが出る。

雪菜ならば、必ず…。



話を聞きながら、焦りは身体中を蠢くも。

その先の話が、その先の俺の行動を決めた。



「サイラス。

悔しいと思うわ。見通しが甘かった私も同じ思いだもの。

でもね。

ここを離れてマティを助けて欲しいの。

イーサンとアレロアに合流して!」


は・な・れ・る?!


そんな事。

出来ようはずも。



「雪菜の探す『幻景園』と関係があるの。

いち早く、我々でその場所を特定出来れば。ね?

彼女も喜ぶはずよ。

それに。

言いにくいけど、この先の作戦に貴方は向いてないしね。

さぁ、どうする?」


迷う俺より先に名乗り出た者が二人。


「「俺が行きたい!!」」


リカルドとブルーノ。



俺は懐から石を取り出すと気を込めた。


それは、俺の能力。

自分の気を石に付与する事が出来る。



知らぬ間に彼女に持たせて、守ろうとしていたのだが砕けたかもしれない。



「これを、彼女に。

いち早く、『幻景園』の報告を持って戻りますと…」



真顔のレジー。


珍しいその顔に、決意は固まる。

仲間は理解してくれた。


ここを離れるのがどれ程の痛手か。


引き裂かれる想いを胸に『王者の剣』をレジーに預けようとすると…。



「それは、貴方が持っていた方が良いわ。

素敵な気が入ってるから。

とにかく、そのまま持って行ってね。

ギャビン殿には、私からちゃんと話します」



3人で駆け抜ける夜道の中に、付ける者達が居たのをリカルドと俺とで気づく。


マティ…。


もしかしたら、事は最悪の事態かもしれぬと予感が走る。

行方不明はよくある。

彼自身で、勝手にそう、なるから。



しかし。


万が一、それが彼の意思とは別の所で起こっていたとしたら…。


リカルドと目線を微かに合わせると大きく踏み込む。



リカルドはブルーノ(ピテレも…)を抱えて飛び退る。




「うりぁぁぁ!!」



大きく振るった剣をそのまま、付けてきた者達目掛けて振り下ろす。


かなりの距離あるが、今の充実した気に満ちた剣の状態ならば可能だろう。




風圧はそのまま、敵全体に襲いかかった。

バタバタと倒れる敵・敵・敵!!

ただ一人を除いて。


もちろん、その一人を残したのも俺。


聞きたい事は山ほどあるのだから…。



(後からリカルドにずっと揶揄われることになる。

鬼の形相と…雪菜が絡むと人が変わる!…と)

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