対峙の時!!
視点が目まぐるしく変わります。
同時進行をしております。
よろしくお願いします。
ー雪菜視点ー
もうすぐだわ。
確か明日かも…。
もう、奥の手しか無い。
お願いね…慶ちゃん!!
ーベレット視点ー
大詰めに来た。
私の思い描いたモノを既に越えて動き出した。
この王都のビルゼンス広場に集まった民衆の数。
減るどころか、増える一方の民衆の真ん中にいるのは、我が君。
眼前に跪くのは、警護団のバズール隊長だ。
この時、この瞬間に間に合う様に影を使って脱獄させたのだ。
まぁ、影を使うまでも無く彼の警護団の団員が既に動いていたが。
それでも、拷問に遭っただろうと思われる傷だらけのバズールの姿は、この場にぴったりだった。
警護団は普段から街の民に好かれている。
貴族以外からの出身者のみで作られ、王都の安全の為に働いて来たのだ。
当然と言えよう。
「立つべき時が来た。
我が国の、本当の主役は君たち民衆だ。
この国を支え作っているのは、貴族では無い。
ましてや、皇帝でも無い!!
君たちの手に、この国を取り戻す時が来たのだ。
さぁ、これから王宮へ向かおう。
もし、君たちを害する者達が居たなら、このギャビン全力で守ると誓おう。
我々の進む道は、今拓かれたのだ!!」
おぉーーー!!!!!!!!!
大歓声と共に全員が王宮へ向かう。
この先、騎士団と対峙したその時こそ決着の時。
ーオースティン視点ー
離宮は、今日も変わらず静かだ。
??
いや、前言撤回。
モノ凄い騒がしい。
この場所に似合わない明るい子供達の声。
離宮を見回る兵士は居ない。
侵入は、簡単だ。
だが。
真っ赤な花のみが咲き乱れるこの地は、禍々しさが…何!!!
赤い花…何処だ??
「いい?
こっちがちびっこチームよ。
お兄さんチームが開けた穴に、一つ一つ丁寧に種を植えるの。
お兄さんチームは、言われた通りこの道具で耕して。畝を作るのよ!!
お姉さんチームは、お握り作りよ!
皆んなのお昼ご飯は、貴方たちの肩にかかってる!!
さぁ!行くわよ!!!」
素晴らしい庭で知られる離宮は、あの事件以降赤い花しか咲かない。
白い花を植えても、黄色の花を植えても。
全て赤い花になる。
まるであの日に流れた血の様に…。
で、それは何処の話し??
目の前に広がる畑や果樹園は何年も丹精したかの様だ。
雪菜が攫われて数日。
いったい、何が…。
雪菜の肩にいる丸鳥が我々に気づき大きな声で鳴いた。
ピィーーー!!!
ーギャビン視点ー
目の前に陣を構える騎士団。
アレは確か第三騎士団か?
第一騎士団は、恐らく奴の周りにいるだろう。
それこそが、倒すべき相手だ!
一列に並び、守るべき民衆へ刀を向けた。
それだけでも、無用の長物だというモノだ。
一歩前に出る。
「おぉ、首謀者が名乗りでたなだな。
殊勝な心掛けだ。さぁ デルトライト前皇帝陛下のそっくりさん。
貴様ら如き、刀の錆にしてくれるわ!!」
やっぱり、本物じゃないとか。
やっぱり、無理だとか。
後ろの民衆からの騒めきがする。
当然だ。
彼らは善良な市民。刀や武器など無縁の生活。
それを突きつけられては、怯んでも当然!
さぁ。出番だ!!
私は、私の仕事をするか。
「我が眼前にありながら、膝もつかぬとはボケたのか?ザックよ。
其方の刀は、この国を守る為のもの。
それをこの様に。
だから。其方は『たわけ』だと言うのだ!!」
私の声に聞き覚えがある者も多いのだろう。
今度は、第三騎士団に動揺が走る。
「ええい。
生意気な奴らだ!!
我々を第三騎士団と知っての暴言か!!
我らは、そこなゴロツキもどきとは違う。
貴族出身者のみで作られたのだ。
さあ、お前達此奴らを思い知らせてやれ!!」
命令は下された!!
刀を手に、我々に襲い掛かる彼らを迎え撃とうと手に力を入れると…。
アレは…。
慶鳥!!!
しかも、一羽でなく数羽連なって飛んでいる。
その後ろから丸鳥が真っ黒に空を埋め尽くす!!
その様は、圧巻。
唖然となる一同。
それは。
襲い掛かろうとしていた第三騎士団とて同じ事。
『ピィ!』
一際大きく鳴いた後、我が頭上を回旋する。
「慶鳥は、我らのお味方。
さぁ、いざ進め!!
我らに敵なし!!!」
狼狽る騎士団から、数人が飛び出すもあえなく吹き飛ばされる。
慶鳥の羽ばたき一つだ。
目の前に、一本の大きな道が出来た。
それは王宮へと続くモノ。
そして、それを遮るモノは何処にも無い。
二つに割れた第三騎士団の真ん中を堂々と王宮へ向かう。
雪菜…。
遠く離れても、君は私を…。
今…胸に改めて感謝を抱きつつ。
再び皇帝になる為に王宮へ。
最後の皇帝になる為に…。




