表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森に囲まれた!  作者: ちかず
76/233

雪菜、攫われる?!

時間は無い。


焦りもあるが、それ以上にこの長蛇の列は緊張を齎した。

その先にある危険がどうしても安全な国にいた人間には恐ろしく思えたから。



目の前に聳え立つ王都の門。

なるほど…。

ドルタ帝国がこの世界でも随一の巨大帝国と言われる訳が一発で分かる迫力満点の門。


この国に逆らえる国は無いと言わしめる。

その権威を代表する正門。


丸の内のビル街に勤めていた私でも、少し後退りするような巨大な門には大きさだけでない迫力を感じる。

周辺を警備する兵士の数や物々しさ。

聳える門は全木造。

それは既に芸術の域にある美しさすらあり、物見遊山ならば見惚れるだろう。


が…


このスタイルでは全く違う緊張しかない。



なのに…

無理だからと、何回もレジーさんに訴えるも、全然相手にされず今に至るのよ。


ゴスロリファッションとか異世界でもあったのね。。。



『カレス・ウィンバード』


誰ソレと聞きたくなるこの名前は、今や私の名前。

なんと!!

貴族の令嬢なのよ、私が!!!

(その上、ゴスロリが似合わない!!)


お付きの女中のラン(ブルーノ)


後は雇われ護衛兵と言う設定みたい。

無理のあるのは、私くらいよ。

ブルーノの女装ですら、違和感ないもの!

(ブルーノに似合うと言ったゲランさんは、一発お腹にキックが入ってたわ。)


因みに有名人のサイラスは別部隊行き。

かなりレジーさんと揉めてたけど、私の安全の為と言われて引き下がったみたい。



長蛇の列は中々先へ進まない。

その事実が示すものは、念入りな検問

私の俄か貴族令嬢は、危険な臭いがプンプンするわ!


丸1日掛けてようやく近付いた検問所。

あ…胃が痛い。


ん?

何だか騒がしいわ。

もしかして、誰か捕まったの?とそっと覗くと(お嬢様おやめください!!とブルーノに言われたけど)




捕まったのは、どうやら子供2名だった。


15歳くらいの男の子、8歳くらいの女の子。

衛兵に睨まれて女の子は既に泣き顔だ。


あっ。危ない!!


衛兵が槍を遊び半分でその子に向けたわ!!



余計に泣く女の子と宥めようと必死のお兄ちゃん。

泣き止まない女の子にイライラしている衛兵が更に槍で脅しをかけ出したわ!!


私は慌てて馬車から飛び降りた。

制止の声が聞こえた声が聞こえた気がするけど。

それとこれとは違うから。

こんな小さな子供達が危険に晒されているなんて見過ごせないから!!



「おやめなさい!!」


私の声に驚く衛兵が槍を構えて振り返って、固まった。


「貴方達。どれだけ私を待たせるの?

そんな子供達などを脅して、貴族令嬢である私を待たせるなんて。お父様に申し上げる事柄が多過ぎるわ!!」


いく筋も背中に冷や汗が流れるけど、やめる訳にはいかない。

キョトンとして泣き止んだ女の子をレジーがそっと抱えて後ろへ下がったわ。


良かった…私の気持ちが通じたのね。



「貴方はどなたですかな?」



しまった…後ろから親玉が出てきちゃった。

あからさまに今までの雑魚キャラの衛兵と違うもの。



「まぁ!私の名前を尋ねる礼儀作法が全くなってないわ」

手が震えないように最大限の努力してるけど、出来てるかも分からない。

もう後はラノベで読んだ悪役令嬢のマネを必死にするのみ!!と。



静まり返る場に、そぐわぬ笑い声??


「こんな時期に貴族の御令嬢を拝見するとは、奇異な事ですな。

では、作法に従って名を名乗りましょう。

私は、第一騎士団 ジョゼフ・アルベルト。

お嬢様のお名前をお聞かせ願いますか?」



わ、笑い声が超気になるけど、今更やめられないもの。


「私の名はカレス・ウィンバードと申します。

さて、名乗りも既に済ましたからにはサッサと手続きを済ませて頂戴。

もう、待ちくたびれたわ」


この名前をレジーから付けられた時に、実在の女性だと教わったわ。

なんでも、ウィンバード家は辺境伯と呼ばれる大貴族であるにも関わらず、滅多に王都には出てこないみたい。


年頃が一緒の令嬢がいると言う理由から、カレスに扮装したのよ。


でも…沈黙が痛いわ。

もしかして、もう見破られたのかしら?



「アルベルト様。

身分証はこちらに…」


えっ!!


レジーの目配せで、理解したわ。

衛兵達に、こっそり身分証を渡したのね。

アルベルトさんも衛兵から手渡された身分証を確認してる。



ふぅ。

レジーなら手抜かりは無いわね。


少し肩の荷を下ろした私に通行許可が降りた。

ドサクサに紛れて子供達も保護!!!


馬車に戻ろうとした私にアルベルトさんが耳打ちした。


「カレス。

幼馴染の僕に挨拶無しとは寂しいね。

まぁ随分可愛らしくなった君を見れて良かったよ」


。。。



そりゃ、もう真っ青になったわよ。

「ご機嫌よう」と言う貴族定番の挨拶だけは出来たのは、奇跡。



馬車に乗り込むとブルーノに「バレた」と一言言って倒れ込んだ。

ブルーノがすかさず、バレンに報告していたが、それどころじゃ無い伸び上がった私は、椅子に転がった。


ん?

声がする?


振り向けば先ほどの子供達がいた。

私を前に緊張してるようで。


「お助け下さりありがとうございます」とお礼を言えたお兄さんは、恐らく庶民。


と、言うか切羽詰まった状態と見たわ。


ボロ布と言える服。

足はサンダル?のような。

この寒いのに??


「ブルーノ!そこの薬草茶を2杯入れて」

ブルーノが何やら呟いてるけど、まずは体調回復よ!



二人が薬草茶を飲む間にバレンが今後の指示を仰ぎに行って戻って来たわ。


「カレス殿。

今後の予定変更となりました。

まずは、王宮で拝謁の儀式となります」


え?


ええーーーー!!!!


何をしれっと言ってるの??

王宮とか…拝謁とか…。


んん??


目配せしているみたいな。。


「分かったわ。いつものようにして頂戴」


ホッとしたバレンの表情から『壁に耳あり障子に目あり』と言う日本古来の諺を思いだしたわ。


あの正門をこの私が貴族令嬢として通ったんだもの。そりゃ、影とかスパイとか暗躍するわよね。


でも…その後どうするの?

王宮へ行ったら嘘がバレるのに。


「そこの者達。

武器を捨てて、そこの貴族令嬢を寄越せ!!」


え?

もしかして、コレも演出?


青ざめたその表情も演出だよね…。

まさか、本物の誘拐犯とかじゃ無いよね。


現実逃避してる隙に、外でガキン!とかドカッ!!とか聞こえるけど。

レジーも付いてるしね…。


「申し訳ありません。

あの方はサイラス様の通過を確認する為に今は離れております。

また、部下の方々も正門通過するにはバラバラになる必要があり今は、我々三人のみ。

外でゲランとメゼルが防いでおりますが、派手に暴れる訳には行かず苦戦をしております。


ですから、此処より私がお連れしますのでお逃げ下さい」


!!!


外の音と、時折聞こえる呻き声。

ゲランやメゼルの声じゃないと思うけど、胸の鼓動が煩いのは気のせいじゃない。


「早国降参して、令嬢を引き渡せ!!

貴族なんかにゃ、命を懸ける価値もねぇ、そうだろ!!」


うっ。

貴族令嬢として狙われてるとすると、斬り捨てる訳には行かないから苦戦してるんだわ。


身体の震えを堪えてふと見れば。


あ!!

子供達…。


「バレン。大変な所悪いけどこの子達を先に逃してあげて。巻き込まれちゃったもの」


隅で震える子供達をバレンに託すと、一瞬苦々しい顔をしたけど頷いてくれた!


「ごめんね。

勝手に連れて来てこんな目に合わせて。

コレ…飴よ。お腹空いたら舐めてね」


二人の子供達に飴を持たせて急いで馬車から逃した。


バレン。。お願いね。



ドスン!!


「メゼル!!」

人の倒れる音と共にゲランの叫び声がする。


どうしよう。

私のせいで、メゼルに何かあったら。

しーんと静まり返った状態が悪い予感しか連れて来ない。


私は、震える手でそっと馬車のドアを開けた。


「わ、私はココよ!!

その人達に酷いことしないで!!」


見れば肩から血を流したメゼルをゲランが庇って刀を構えていた。

ゲランも額から血が一筋流れてる。


下卑た雰囲気を漂わせた一団は数十人いたと思う。

倒れてる人なんて、見ないようにしないと気絶とかしそう。


叫ぶゲランを他所に、男達が近寄って来た。


「始めから出てくりゃコイツらも怪我しなくて済むのによ。これだから貴族令嬢なんてロクなもんじゃねぇ!!

ほら、こっちに来な!!」


足を前に出すのも、正直出来るか不安なくらい震えるけど。

メゼルの真っ青な顔と必死に止めるゲランに決意は固まるわ。


「わ、分かったわ。今、行く…」


下卑た一団は、薄笑いを浮かべ私の来るのを待っていたその時!!!



ブワァッと一陣の風が吹いて、私の身体が空高く舞い上がる!!


その先?


無論、きちんと気絶しました!!


だって、単なるOLにはこれ以上は無理だから…!!



ーメゼル視点ー


正門通過は、かなりの難題。


念入りな打ち合わせは雪菜殿を除いて数夜行われた。

計画はレジー様がたてるから不安は無い。


雪菜殿の性格も見越した素晴らしいモノだ。



予定外の場合も、様々折り込み済み。

雪菜殿の偽名も念入りに準備されたモノ。

家紋の入った馬車まで何処からか用意したレジー様の手腕。

聞いていた通り素晴らしい。


早速予定外発生!


レジー様の言われた通り、雪菜殿はアグレッシブに動いた。

ジッとしている約束のはずが門番に危害を加えられそうな子供達を匿うと飛び出して行く。

しかも、貴族令嬢として演じる態度も堂々として中々のモノだ。


ただ…あれは貴族令嬢にしては多少優し過ぎる。

雪菜殿のあの性格で、偉そうな貴族令嬢を演じるのは元々無理だ。

だから、優しいと噂の辺境伯の御令嬢に扮装したのだからな。



門番も、貴族にしては優しい言い方を怪しみ始めたが、レジー様偽造の身分証は本物と全く差異のない素晴らしいモノ。


騎士団の出現にひゃっとしたモノの無事通過する。


さぁ。ここからが勝負だ。

雪菜殿も知らない我々の作戦。



予定通りに賊に囲まれる。


門番など気づいても、貴族などまずは助けない。

貴族を嫌うモノ達は多いのだ。


王宮へ行くまで付く影を撒くための偽装工作。

ゲラン以外は分かっている。


敵に扮するのもレジー様の部下。

さすがの出来栄えだ。


怪我で済ますように戦うも、必死になるゲランが邪魔で上手く行かない。

それにバレンはどうしたのだ?


ココで出て来る予定では?

あー。子供達か。


ゲラン!!

相手の命を奪わせる訳には行かない!!


慌てて前に出て、うっかり肩に傷を負う。

不味いな。

かなり深いか…。


だが、ゲランの叫び声がきっかけとなり雪菜殿は無事敵方に攫われる。


痛みを堪えてつつ、ホッとしたその時だ!!



風魔法。


それも相当強力な魔法で、一瞬にして雪菜殿を本当に攫われてしまった!!


「ゲラン!!追えるか?」


と、叫ぶも敵方に化けていた数人も動いた気配があるが間に合うどうか…。


駆け出すゲランを見送りつつ、自分で止血をする。


このままでは、足手まといとなると焦りながらも雪菜殿特製の傷数を肩に当てながら、辺りを見回した。



何かヒントは?



あれは…。



子供達が遊んでいるのが目に入る。

それ自体は、普通の景色だが。



戦いのあった現場で子供達が遊ぶ姿は…あまりにも不自然…。


考えが纏まらない。

不味いな…出血し過ぎて、意識が遠のく。


掠れゆく意識の中で、最後に目に入ったのはレジー様が子供達を捕まえようとして逃げられた瞬間だった気がするが…。



雪菜殿…必ずや…。

そのまま、俺の意識は途絶えた…。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ