レジーの思惑は?!
ーサイ村長視点ー
村人が拐われた。
そう、駆け込まれ探そうと『大森林』の入り口近くは向かった。
物事が起きるならば、あそこだろうと。
予感は的中した。
最悪の形だが。
アーノルド殿と向かい合う手練れは、恐らく玄人。
我々とは、違い武器が手に馴染んでいる様子に助け出す隙を見いだせない。
狙われたのは、か弱い者達。
抵抗出来ない者達を狙うのなら、躊躇も無いだろう。
助けてたいと願ったその時。
アーノルド殿の手から光の剣が伸びた。
あんなモノは見たことば無いが、少し恐ろしさを感じて後ずさる。
決意に満ちた彼の顔から、一大決戦が始まると固唾を飲んで見守っていたら突然、新たな人物が登場したのだ!!
あの人物はいったい…。
彼女ば派手な衣装に目に眩しい色彩の奇抜なデザインで登場したのだ。
そして、現れてあっという間に、敵から村人を助け出してくれた。敵は逃走した。
凄腕だ。
助けられた村人と手を取り合い、怪我がないか確認するも、誰も無事な様子だ。
有り難い。
恩人の彼女に感謝を伝えたいと振り返る。
が。
お礼に側へ寄れない。
この状況は?
村人と向き合っていた数分の間に、おかしな風景に変化していた。
なんと。
彼女の足の下に人がいる。
もう少し正確に言うならば、足蹴にされているが正確だ。
時折、蹴りが入って、囚われた人の呻き声が聞こえる。
この状況にアーノルド殿ですら固まっている。
それにしても、彼女の正体は?
「ふふふ。
コイツをどうすれば良いのか分かっているわよね?
じゃあ、私はアーノルド殿とサイ村長に用事があるから解散しないさい!!」
!!!
いつの間にこんな人数がいたのだろか?
沢山の覆面の男達(部下らしき人々だ)が、足の下の人物を(助けて?!)連行していった。
ホッとした表情から、捕まった人物の恐怖の具合が伝わる。
まぁ…敵ながら理解出来るが…。
とにかく、お礼を述べて彼女を私の家に案内する。
もちろん、アーノルド殿とご一緒に。
フフサ殿と途中で出会ったのでまたもや話が長くなるかと思ったが、彼女の顔を見た瞬間、青くなって飛ぶように帰って行った。
不安が増す。いったい彼女は…。
でも、とにかくお礼を申し上げなくては。
「改めて御礼を申し上げます。
村人をお救い下さり、心より感謝申し上げます。
ご挨拶が遅くなりました。
私、バーラド村の村長をしておりますサイと申します」
彼女は、私を見つめて動かない。
どうしたのだろうか?
何か無礼でも…。
「サイ村長。
お名前はかねがね伺っておりますわ。
ふふふ。
大丈夫よ。男は取って食べないから!
あら、私とした事が。
自己紹介がまだだったわね?
聖騎士のレジーと言います。私の部下達は碧天騎士団と言うのよ。
宜しくね!」
なんと。。。
あの隠密部隊の碧天騎士団の長。レジー殿がこの方か。
悪名は…いや間違えた。
ご高名は、こんな田舎町まで聞こえていた。
徹底した完璧主義。
絶大な能力。
そして、容赦無い徹底主義と男嫌い。
しかし、そんな大物がこんな田舎の村長に何の用事だろうか?
「サイ村長。
貴方のお名前は色んなところへ広まっているわよ。
何と言っても、雪菜殿の信を得たのだから。
今日はね。
良くない情報で近くへ来たのよ。
そのお陰で、アーノルド殿を人質に取られなかったから良かったわ。
用件と言うのは靄鬼の事でね。いよいよ本体が動き出したらしいから暫くは我々がこの辺りの警護をするわ」
やはり…。
一旦は、下火になった靄鬼は王都には未だその勢力を持ちじわじわと勢力を広めでいるとか。
「靄鬼の事は理解した。
それよりも、先程の奴らはいったい…」
アーノルド殿が問いかけたその途端!!
彼女が笑みを深くした。
ゾワワ…、
間違いなく聞いてはいけない事だ。
アーノルド殿も「いや、何でも無い」とすぐさま答えた所をみると同じ感想だったのだろう。
しかし。
彼女程の人が出張るならば、靄鬼は理由の一つに過ぎないだろうが。
「サイ村長。
雪菜から伝言です。のど飴や薬草を沢山売ったそうです。
増産をお願いしますと」
アーノルド殿は完全にこちらを見つめたままで話し出した(諦めた…な)
「分かりました」
「きゃーーー」
ん?
同時に悲鳴が上がった??
「さすが雪菜ね。
そんな貴重品を売るなんて!!
あーー!!!
サイラスと交代したいーー!!
サイラスなんて演技もヘタだし、私の方がピッタリくっついて護衛しても目立たないのにぃーー!!」
いや、
絶対、目立つ。
レジー殿以外、こんかキテレツな服ば見た事がないのだから。
その日から、レジー殿はこの村に滞在する。
それがどれ程の事か理解するのは、まだ先の話となる。
今のところは、私の胃が痛み雪菜殿の薬草のお世話になる…くらいだ。




