アーノルドの特殊能力とは?
ーアーノルド視点ー
昨日は雪菜が夜はこっちで過ごしたが…。
何やら悩みごとを抱えだようだった。
何か聞きたかったが、話すつもりがないようで。
自分で思い立った事があるのか、顔を何回かパンパンと叩いたかと思うと大声で。
「さぁ。やるかぁーー!」と叫んだので驚いた。
結局…薬草や果物を沢山持って、元気に戻って行った。
あの日…この場所へ逃げ込もうと、いつも通りに馬鹿王子のフリをした。
そんな俺をあっさり怒って追い出した雪菜。
フローラだと思った俺は心底驚いたのだ。
そして。
ここに滞在して初めて自分らしく生きる事が許された気がしたのだ。
植物と触れ合い、人の役に立つ研究をする。
そんな途方もない夢を。
俺の持つ能力が、邪魔して夢見る事すら出来なかったそんな夢を…。
雪菜に頼まれて、今日はサイ村長の元へ頼み事をしにゆく。
以前、薬草を薬にするその過程を雪菜はこの村『バーラド』へ依頼した。
その懇切丁寧な説明と指導。
周りも驚くほどの徹底ぶりだった。
何故がと、俺が尋ねると…。
彼女は『薬は毒にもなり得るから』と。
植物を単なる学問として捉えていた俺には、驚きの回答だった。
雪菜の薬草に対する真摯な姿勢は、衝撃だった。
特に薬草と言う考え方自体があまりないこの世界では、画期的ない試みとなるだろう。
そんな事を考えていたせいか(注意力を散漫にするのか)明るい一本道を通り森から出たその時、突然周りを囲まれたのだ。
確実に玄人の集団に…。
敵うない。
これまで、幾度となく命を狙われてた身だ。すぐに分かるのだ。
しかし、相手に殺意は無い。
何が目的か…
「ふぅん。
甘ったれで有名なアーノルドってのは、ガセだな。
俺たちの気配に気付ける奴なんて、この世界に何人もいないからな…。
ま、それだけに価値ある人質なんだろうけどな」
人質…。
そんな価値があるはずは…。
!!
雪菜狙いか!!
不味いぞ。
それでは命に代えても、囚われる訳には行かぬな。
決心は一瞬だった。
指先に力を集め、光の刃を作り出す。
そう。
これこそが、俺の特殊能力。
生命エネルギーを光に換える。
その光を刃に換えた時。その刃に立ち向かえるモノがこの世界に存在しない。
そう言われる『破滅の刃』と言う力だ。
使えば、どんなモノでも破壊出来るが…自分自身の生命力も失われる。
それがこの力。
幼い頃から、嫌な力を持ったと恨んでいた事ばかりの人生だったが…
こんか場面が用意されていたとは。
今この時に、使えるとは。
「ほう、それがお前の最終手段か。
なるほど。
コイツは手強そうだ。
だが、コレならどうだ?」
なんと言う卑怯な!!
バーラド村の人々を人質にするとは…。
自滅もありかと思ったはずの心が千々に乱れる。
村人を犠牲にしたとなれば…雪菜が悲しむ。
「あら?
ようやく分かったのね。
精霊強国のお馬鹿さんは、少しは賢くなったようね。
理解出来てるかしら?
村人もアナタも、雪菜にとって変わらず大切なモノだと。
ふふふ。
いいわねぇ、その顔」
痛烈な皮肉と共に現れた味方は、ピンクの髪の女性。
しかしその内容にハッとする。
そうか。
彼女にとって、大切な村人と同じ様に…。
場にそぐわないが、ほんの少し嬉しさが込み上げると同時に愚かな自分も振り返る。
それにしても、この女性は?
もしや…
このゴテゴテとした服装は。。
「ほら。
アンタ達も詰めが甘いわね。
人質はもう、ぜーんぶ頂戴したわよ。
どうする?
まだ、やる気があるなら特別に私が相手になるわよ!!」
そのセリフの後、敵方は一斉に引き上げた。
それは、ほんの一瞬の出来事で。
あっという間の形勢逆転。
「なんでレジーが…」
敵方が消える前に一言漏らしたセリフにやはりと納得した。
この手際。
敵方の引き際。
恐らくは。。。
「ほら、アンタ!!
いつまでぼーっとしてんの?これだから男は嫌になる!!
あーーー!!
アタシの癒しの雪菜のいない所ばっかりとか嫌になるーー!!!
マティの馬鹿ーーーー!!!!」
間違いない。
この口の悪さ・男嫌い。
聖騎士の中でも暗部担当の実力者、レジーその人だ。




