一攫千金を夢見て?!
街道と言れる場所だけを行くのは危険なんだって。
でも、それは思わぬ宝を見つける旅になったわ!
そう、言われ森を通るたびに出会う『望外な収穫』たち。。。
特に多いのは木の実。
他にも、薬草やキノコなど収穫しながらの旅で良かったー!!!
そう。
今、私は守銭奴になったのです!!
『飴』だけじゃね。
お客さん呼べないと思って。
考えた『未病』と、そのアイテム。
栄養のある様々なモノ。
例えば、栄養ドリンク、木の実のお菓子。
そして。
マスクや石鹸!!
実はね、この世界では石鹸ば高価な品物らしいの。
オリーブみたい木がうちの庭に生えたからその油で作ったのよ。
いい香りもして、ジェマにあげたら凄い喜んでくれたし、ちょっと褒められたから。
ふふふ。
沢山持ってきて良かったわ。
その他にも、氷嚢や氷枕といった日本では当たり前なモノがないから。
ギャビンさんに、お土産代わりにと思って色々なモノを開発したのが役に立つわ!
売りたいのもあるけど、提案的にオススメと言う意味もあるの。
あー。
売れるといいなぁとサイラスに言ったら何故か死んだ魚の目のようになってたけど。
初めての宿屋もある大きな街へ。
門が大きくて、門番さんがいたから少しビビっちゃった。
身分証と言われても、健康保険証なんて無いし。
と、狼狽る私を他所にサイラスが何かを差し出してあっけなく終了!!
どうやら、聖騎士の証のようなモノみたい。
門番さんは敬礼してたから。
そしたら、リカルドが。
「あのね、ルスタ国が特殊なだけでどの国でも聖騎士は尊敬を集める存在。
まぁ、いわば特権階級のようなモノ。
彼さえ居れば、どこでも大歓迎さ。
まぁ、それだけに町娘雪菜の扱いに早く慣れて欲しいけど。
ぎこちなさ過ぎるよ…アレ」
そう。リカルドもきごちないと思ってたのね。
やっぱり…。
それにしても聖騎士って凄いのね。
最初から身近に居たから、全然遠慮なく接してたけど。
あ!
それを言ったらギャビンさんもか。
なんたって、王様だものね。
そんな考え事をしている間に馬車は、宿屋に到着したわ。
ガーハレに変身した天馬達は、ガザハに見える様な幻影の魔法をマティさんが駆けつけてかけてくれたのよ。
まぁ。。。
アレはガーハレ見たさに来たと思うけど。
だって、めっちゃ興奮してて奇声を上げるからガーハレに嫌われてたもの。
だから、ガーハレは宿屋の裏の厩に繋いでも大丈夫みたいよ。
ガザハを盗む窃盗団もいるらしいけど例え狙われてもガーハレはどんな人間も敵わない存在らしいから大丈夫だって(サイラスが太鼓判を押してくれたから)
じゃあ何故変装を?
と、聞いたら窃盗団では無い他の存在を引き付けるからって。
他の存在?
ま、サイラスが笑顔だから大丈夫ね。
さあ!!
いよいよ、雪菜の屋台を始めなきゃ!
看板は『美味しい薬屋』
急ごしらえです!!とゲランさんが作ってくれた屋台は簡素だけど使いやすいわ。
ゲランさんは、顔に似合わず器用なのよ。
熊さんっぽい大柄なごっつい手であっという間よ!
有り難いわ。
やり方はフリーマーケット方式でテーブルに商品を並べて前に値札を立てる。
値札と売り文句はリカルドが担当!
何でも。
「雪菜は常識知らずだから、手伝うさ。
ま、こんなモンだろう!」と。
(なるほど…アレが有名なツンデレかぁ。
しまった、、私まで顔が赤くなるじゃない!!ツンデレ侮り難し…)
そんな訳で出来た店は、広場で商売をしたけど。
閑古鳥?!
そんな感じでだーれも来ないの。
試飲や試食の習慣もないらしく、警戒していて誰も遠巻きにしてる感じ。
これじゃ、私の一攫千金なんて単なる大ボラふきになるわね。
そんな時、一人のお爺さんが近づいてきたの。
咳が酷くて辛そうだから、試食ののど飴をあげたら。
「これは美味いし、喉にも嬉しいな。
しかし、こんな高級品がこの値段。
誰も紛い物と思っておるよ。何故、こんな値段で売り出したんだ?」と聞かれた。
確かにリカルドにはもう少し高めの値段を言われたわ。
でも。
それは金儲けの前に私の理念に反するのよ。
『薬屋は、庶民のモノであるべき』
それは、おばあちゃんからの教え。
そんな話をしたら。
お爺さんが俯いて暫く動かない?!
もしかして、飴が喉に詰まったの?
ヤバイわ。
大丈夫?!
焦る私をよそに、お爺さんは急に高笑いを始めたの。
んん???
「アンタのこの商品は、わしが全て買い取ろう」って、!!
ええーー!!
「ワシはこの辺りを治めてある領主じゃよ。
こんなに良い品は、領民の為になる。だから買い取って…」
「待ってお爺さん!!」
アラ。呼び方間違えたかしら。
でも!!
私にも譲れない事もあるから!!
「お爺さんに全部はお売り出来ないわ。
この商品は、一つ一つ説明してお売りしたいのよ。
のど飴はどんな時に舐めるとかから始まって、風邪の初期にすると良い事。
未病と言う言葉の意味。そして、その為の商品も揃えたわ。
伝えたい事もたくさんあるの。
だから…嬉しいんだけど…」
最初は勢い良く話始めたけど、お爺さんの厳しい表情に最後は尻つぼみになる。
一攫千金には、全部売るのかが一番よ。
でも。
この石鹸は、アーノルドが。
のど飴は、バーラド村の人たちが。
栄養ドリンクは、ブルーノやリカルドが。
沢山の人の協力で出来たモノだから。
「こりゃ参ったな。
若い小娘に一本取られたか。ワシも焼きが回ったかな。
よし!
それでは宣伝をしてやろう。どうだ?わしのお墨付きは効くぞ」
お爺さん!!ありがとう。
両手で握ると何度もお礼を言ったわ。
少し涙目だったのは、お愛嬌!
世界は違っても、分かってくれる人はいるって。
しみじみと嬉しさが募るわ。
その後…私はとうとう一攫千金!!を手に入れたけど。
サイラスに頼んで、お爺さんに少し持っていって貰ったの。
宣伝費よ?
って言ったら、サイラスが首を傾げるから説明しました。
あー。
これで、宿屋にゆっくり泊まれるわね。
楽しみだわ〜。
ーサイラス視点ー
びっくり箱のような雪菜殿。
旅は楽しいが、神経を尖らせるモノだった。
雪菜殿の噂は、諸外国に知れ渡り暗躍する者達も多い。
無論、護衛の騎士と私で万全の対策は取った。
が、正直リカルドがいてくれて助かった。
『ゼロ』の名は伊達ではないな。
街道から外れた旅は中々進まないが、雪菜殿は何か拾っては楽しそうにしていた。
不思議な人だ。
何処にいても変わらない。
そして、苦難の中でも楽しむ事が出来るとは…。
こんな若さで凄いな。
そう俺が言うと決まって「サイラス。三十路にそんなセリフ…。薬より毒になるわよ!!」とやたらと肩を叩いていたが…。
彼女が使うミソジと言うセリフ。
よく聞くが、何のことか理解出来ない。
異界では、美人をミソジと言うのだろうか。
やっと着いた『ゼンサル』
この街の領主は私もよく知る人物で、安心だ。
と、思っていたらまた、雪菜殿のびっくり箱が開いた。
なんと。
『美味しい薬屋』と名乗り商売を始めたではないか。
金銭なら気にしないで欲しいと何度も繰り返すも虚しく終わる。
彼女の矜持に関わる事らしいので俺もそのまま下がる事にする。
人にはそれぞれの矜持があるからだ。
広場での商売の邪魔にならない様離れで警護するもお客はあまり居ないようだ。
領主が、我々の様子見に来て飴を受け取っていた。
やがて二人でのやり取り始めたのを聞いた俺は始めて彼女の真意を知った。
虚を突かれた思いだった。
その夜。
私は一人、領主の館を訪ねた。
「お主も、ヒトが悪いわ。
あの様な御仁と前もって教えてくれぬとは。
要らぬ世話を焼いてしもうたわ」
難しい顔だが、恐らく内心は喜んでいるだろう。
あれだけの価値のある品物が領内に広まったのだ。
しかし、それもお金を差し出すまでの事。
「なんと。
こんな無粋なモノを持たせるとは、小娘もまだまだか」
ガッカリした様子の領主に彼女の真意を伝える。
宣伝費と言う考え方。
そして正当な支払いである事。
受け取るのを渋った場合は、領民の為に使って欲しい。この街の人々から頂いたお金なのだから、と。
「ふーむ。
こりゃ完敗と白旗を挙げた方が良いかな。
しかしこれだけの人物じゃ。
この先、ドルタの王都へ向かうとなると…」
彼女の目指す先を少し話すと彼は自分の机から一枚の紙を取り出し書付を作る。
何を…。
「餞別というには、些かショボイがな。
この辺りの領主は、ワシの部下や知り合いが多い。
危険なく街を巡る手伝いを少しは出来るだろう」
有り難く頂いて宿屋へ戻る。
やはり、ここへ寄って良かった。
前王の弟である彼が、王都から遠く離れこの地を治めて長い。
この地が平和な理由を今晩、改めて知ることになった。
ところが…宿屋では珍客があり大騒ぎになっていたのだった。




