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森に囲まれた!  作者: ちかず
68/233

狙え、一獲千金?!

今、ちょっと興奮状態です!!


だって、異世界の旅とか。

ま・さ・に!!


ラノベの世界そのもの。


目の前に広がる地平線は、畑が見える以外何もない。風が時折、畑の上を通り過ぎる。

長閑で、静かな景色。


おばあちゃんと一緒に暮らした青森の田舎町を思い出すわ。

私にとって、大切な思い出の景色。


そんな感傷に浸っていたら、サイラスから声が掛かる。


「雪菜ど…。

もう少し行けば、宿屋のある町に着くから。

野宿も今晩限りだ」


ん?

気を使ってくれてるみたいね。

野宿万歳よ!


アウトドアと言うには、あまりにもスペックの高い馬車のお陰で全然苦労なんて無いから。


しかし、サイラスは未だぎこちないわね。

町娘雪菜となるから、呼び捨てにして!って皆んなに頼んだら、サイラスとゲランだけは超ヘタなのよ。この町娘に変身して危険回避する作戦は、マティさんの発案。


それにしても。


宿屋かぁ…。


楽しみなのよね。

本の通りなのかしら?



は!!



お金は?

私ってば!!!


忘れてた…完全に無一文で旅に出たわ!!

ど、どうしよう…。


お金を稼ぐツテもないし。

うーん。


アレ?

馬車が突然止まったわ。

何だろう。


馬車の外に出ると、サイラス達がしゃがみ込んでる?

近くによると、老婆と娘さんの二人連れが座り込んでいて馬車が進めないみたい。


どうしたの?


「雪菜ど…。雪菜。

えっと、風邪薬を差し上げても構わないか?」


え?もちろんよ。

風邪なの?


近寄ると、確かに赤い顔をしてる。

声もガサガサだし、咳き込んでいる様子も。


よし。

風邪だと断定しても大丈夫そうね。

あ、もう風邪薬をあげてる。


「ねぇ、雪菜。

この近くの村で風邪が流行っているんだって。

風邪薬を配りに寄ろうよ!」


もちろんよ!

ブルーノ、ナイスアイデア!!


私達はそのまま細い道へと曲がる。

もちろん馬車には風邪の親子を乗せて。


「セランさん。

布団に横になって。ハンナさんも、咳き込んで苦しそうね」


お婆さんがセランさん。

娘さんがハンナさん。


お二人はこの辺りにある、親戚の家へ行く途中だったみたい。


遠慮がちな二人に私は、自慢の壺を差し出した。


「コレ。

薬と違うけど『のど飴』よ。

美味しいし、喉が潤うから食べてみて」


最近、アーノルドが頑張ってるお陰で果物の木も増えた。特に嬉しいのがレモン!

まぁ、名前は違うけど…。

色がね、ピンク色なの。


のど飴は、フルーツの味にしたの。

一押しはレモンよ!!

あら。

ハンナさんの頬に赤みが!

美味しいのだと、わかる笑顔に私も釣られて笑顔になる。


「沢山あるから、持って帰ってね。

喉が痛い時や咳の出る時に良いわよ」


ん?


な、な、泣いてる?!

待って…。


ただののど飴で…。


「あのね、雪菜。

飴事態が、食べた事のある人なんて殆どいないよ。

ましてや、のど飴なんて」


さすがのリカルドのツッコミ。

最近、一緒に旅するようになって知ったけど、意外にツッコミ体質みたいね。

特に、私にね。


でも、リカルドものど飴は気に入ったみたいで、風邪でもないけど味を確かめながら食べてるもの。



リカルドが一緒に行くって言った時驚いたわ。


図書館にいるものだと思ってたから。

(時折、私と一緒に帰って何日か不在だけどね…)

人見知りだけど、情報通で道案内も彼の役回り。

そのお陰で遠回りだけど安全らしいの。


あら?

着いたのね。



村はずれにあるハンナさんの家の前だ。

少し、屋根が崩れかけているけど大丈夫かしら?


「あの…」


いけない!!

つい、キョロキョロして遠慮がちな声に気づくのが遅れたわ。

ハンナさん。ごめんなさい!!


「そんな!!

さぁ、どうぞあばらやですが中へお入り下さい」


促されて入ると、僅かな食べ物があるだけでがらんとした部屋。


ハンナさんは、お母さんを寝かせると急いで飲み物を入れてくれた。


少し甘い飲み物。

サイラスの目配せから、恐らく取っておきのモノ。

私達の為に…。



考え込んでいた私に思いもかけないハンナさんの言葉が聞こえてきたわ。


「こんなに優しくして頂いたのに、こんな物しか差し上げられなくて」


恐らく、沢庵ね。

大根畑が広がってたから、お二人で作ったのだと理解する。


大切な食料。

お二人の手作り。


胸を突かれた私が黙っていたら。


「すみません。

こんな物はお口に合いませんよね…」


「そんな!!

嬉しいわ。ものすごーーく感激して声が出なかったのよ。

ありがとうございます。沢庵は大好きなので喜んで戴きます!」


手を握りしめてお礼を言ってたら。

ブルーノが。


「美味いね、この沢庵。

俺もお礼したいなあ。な、ピテレ!」


沢庵を齧ってたピテレが何回も頷いた。


ゴゴゴゴゴーー!!!


地面が揺れたかと思うと、屋根が吹っ飛んだ!!


ええーー!!

ピテレ…何をして。


と、思ってたら物凄い勢いで新しい屋根が完成した。

漆喰の壁とか知ってるけど、屋根も土?!


「雪菜ど…。

あ、あの屋根はバインガと言うモノで土から作られた軽石のようなモノです。

バインガの屋根はこの世界では最高級品。

壊れず、軽く。そして魔獣からも護ります」


サイラスの説明に納得した。

そうね、ピテレがあんなに沢庵を頬張ってたもの。

お礼したかったのね。



またもや泣き濡れたハンナさんを宥めて家を出た。

お邪魔している隙に、護衛のメゼルさんが村へは風邪薬を配ってくれたみたいね。



安心して、改めて出発する。


救急箱を餞別にして…。



あぁ、でも凄く収穫があったわ。

ハンナさんが言ってたあのセリフ…。


「こんな美味しい飴が、更に身体に良いなんて。

もし、王都で売り出したら凄い事になりますね」と。



よーし!!!

今日から、のど飴作りを頑張って。


狙え、一獲千金!!


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