表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森に囲まれた!  作者: ちかず
64/233

お出かけの準備!!

ガザハ。


要するに馬。

ま、馬と言うには大きさがアレですけど。

(数倍はあるかなぁ…でも大人しい…)


私はサイ村長と、隣町まで来てるの。

用事は、馬。


この世界の馬は、馬車を引く為の家畜。

コレなら…。


先日頼んだ鍛冶屋のゼムさんに、実は農機具も頼んだのよ。

だって、鍬とか鋤と道具立てが大切よね?


この世界は全部木製…、

しかも、形や角度が微妙にね…。

更に、馬に引かせるタイプの農機具も頼んだから。



問題はこのガザハ。

いやね。


サイラス曰く…「気性が荒いので有名で、御者の訓練をした騎士でないと扱えない」って。

それじゃあ、役に立たないし。


とにかく、実物を見る為に来たけど顔をスリスリして来て超可愛いよ。

穏やかじゃない?って言ったら護衛のゲランが


「自分が側に寄ってみて、実際のガザハを見せるっす!!」って張り切るからお願いしてみた。


ブヒィーーン!!!!!


おぉ、本当だわ。

大暴れとかしてるし、目がヤバイ系よね。


「コレがコイツらの本性ですから!!」


うーん。

ロバっぽいのいないの?


「残念ながら、小型のガザハも同じです。他の家畜は大型のモノがいませんから」

と、もう一人の護衛のバレン。


困ったわ。


ん?

アレは…。


私の目線が理解されたのか、三人目の護衛のメゼルの答えは…。


「アレは、臆病でとても人間に懐くなど…あ!!」



ええーー!!

集団で寄って来たじゃない。

それに大分小さいけど、牛だよね?


何?

寄って来た牛達が、私の懐に鼻を突っ込むし…。

ゲランが必死に蹴散らしてるけど、寄って来る数は増える一方で。


あ、これね。

チコリの実。


石版の後から生えた木が、美味しい実を付けたのよ。赤くて小さな甘〜い実!!

ジャムにしようと持ってきてたの忘れてた…。


よし!!

餌付け作戦開始!!


。。。終了。。


簡単過ぎません?コレ…


「貴方達、美味しいモノを貰ったならココで働いてよね?大丈夫だよね?!」

と、チコリの実を食べさせて言ったら…。


なんと!!

一列に並んでる牛(本当の名前は、バーラブですって!)


でも、本当にちゃんと懐いたのかなあ?と不安に思ってたら…。


「その実を貰ったモノは必ず言う事を聞くから大丈夫だよ。一年に一個くらいで沢山働いてくれるから!!」


え?いつの間に?!


ブルーノとピテレが側にいた!!

するとサイ村長が。


「ピテレ殿に後から駆けつけたいと、行く場所を聞かれましたから」


ええ!!ピテレの方なの?

あの篠笛から、やたら近くに出現するわよね。

妖精って、祭り好きなのね。


「とにかく、農機具を付けてやってみようよ!」ブルーノの提案で護衛の皆さんがバーラブに取り付けてくれた。


私は、休耕地を借りてゲランさんに土起こしを頼んだ。私じゃ、力不足で転びそうになったから。

護衛さんが、買って出てくれたのよ。



ものの1時間で広い休耕地が、素晴らしい農地になった。



良かった。大成功!!


あら…珍しくサイ村長が涙目になって感激してる?


「雪菜殿。我々農民にとり、コレがどんなに画期的ない事かしれません」


そうか…毎日の農作業は手作業だものね。

だからこそ、収穫が少なくて苦労してたのだから当然よね。


それから…。


沢山の農機具をゼムさんに頼んだら、仲間にも声掛けてくれてあっという間に大量に出来たわ。

チコリの実で手懐ける作業だけは、何故か私の専門らしく。


近隣の町や村に沢山行き渡った。



私は、引き換えに10頭のガザハを貰い受けた。

馬車を引かせる為にね…。


数の少ないガザハは、農家の人々にも貴重な家畜なのに快く譲ってくれた。



うん!!

よし、着々とドルタへ向かう用意が整ってるわね。



ギャビンさん。

沢山の薬を救急箱に入れ、見送ったけど。

あんな怪我をする場所に、帰らせてしまったから。


そりゃ、自分から言ってくれたけど…心配なのよ。


だから。

気が急くわ。


足を引っ張らない用意をする。


サイラスから「準備をせずに行けば、かえって足手まといになります。焦らず整えましょう」って言われて目が覚めたわ。


見知らぬ世界だったし。

魔獣もいる危険な旅だし。


準備は着々と進んでるわ。


もうすぐ行くわね…ギャビンさん!!


ーバレン視点ー


賢樹騎士団に入団してから、こんなにも自分の力不足を感じる日々はない。


私がイーサン様から直接指令を受けた『雪菜殿』の護衛についてから、あらゆる方向から敵は襲って来た。無論、そんなものは擦りもさせない。


力自慢のゲランや魔法自慢のメゼルも居る。

雪菜殿に気取らせないように、闇から闇へと消えてもらう。


簡単な仕事だ。



だが、それよりもこの規格外の雪菜殿。


靄鬼。

ドルタの軍勢。


どちらも彼女が防ぐ手立てをしては、完全なる無血勝利という奇跡が。


更に祭り。

そして、農地開拓。


次から次へとパワフルな彼女の改革に、付いて行くだけで精一杯の日々だ。



更に今日、驚きの物体を目にした。


あの『チコリの実』だ。


『精霊の食べ物』と言われ、幻となって早数百年。

誰も実物を知らないはず。


ジャムにしようと思っていたらしい。


「だって、大量に取れるのよ。

取ると一晩でワサワサ生ってるから!!

パンに塗ると美味しいわよ!」


サイ村長の土産にするつもりだったらしい。

サイ村長…大物だ。


全て、笑顔でスルーとは。

良く「雪菜殿ですから」と言っているが、今は納得する。


その晩、我々の控え室に雪菜殿が訪ねて来られた。


珍しい…何事だろうか?



「あのね。

日頃からお世話になってるから、コレお礼に煮たの。ほら、昼間のチコリのジャムよ。

あのね、動物も食べるけど、人間も食べられるから大丈夫よ!!

サイラスとかも大好きだから。

良かったら食べてね」


固まった俺たちが、必死に礼を言ってる隙に図書館へ戻られた。


チコリのジャムを見つめながら、ボソリとゲランが呟く。


「あまりに…無防備な…」


全員が何度も頷く。


寝巻きで訪ねて来られたが、自分の容姿を本当に理解しているのだろうか…。


無言のまま、全員でため息をついた。


あまりの危険性に明日からの訓練を更に強化する事にして…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ