ゲルガーの発見?!
暇だぁ…。
絶対、雪菜は俺の事を忘れてる!!
そりゃ、闇の精霊だし、ご飯無くても大丈夫だし。
でも。
力を失ったのは、本当だ。
失った力は人に影響するもののみかな?
要する、人を我らの仲間とする力が失われたんだ。
何故かも。
元に戻るかも。
全ては、謎。
だーれも最近はいないから(まぁ、雪菜以外の人間を警戒してるけど…)図書館へ入り浸る日々だ。
何せ、たった一人で残ってるリカルドは一切他のモノに頓着しない。
更にブルーレルは、俺の影響を恐れる存在じゃないしね。
いつもの様に、絵本コーナーに行く。
え?
文字なんて妖精には必要ないから!!
だから、絵本なら見ていても面白いんだ。
ただ、闇の妖精に関する本だけは開かない。
ものすごーーく悪者の絵なんだよ。
表紙からして。
あ!
今日はこの本にしよう!!
昨日の夜遅く、珍しく雪菜が家を出入りしてたけど『大森林』の精霊の存在を感じたから急いで離れた。
妖精如きじゃ、恐れ多いから。
雪菜は寝ぼけた顔で部屋へ戻って行った。
あれ…。
翌朝には、夢になるパターンだな。
そんな事を観察していたから、昨日の夜は遅くまで起きていた。
ん?
闇の妖精なのに、夜更かしとか言わないはず?
そうなんだ。
雪菜のところに来てから、めっきり朝晩逆転の体質が変わって。
昨日は珍しく夜更かしした訳。
寝ぼけているのは、俺も一緒。
だからかな?
絵本を掴んだはずなのに、変な本を持ってるし。
あーーー!!!!
なんで?
なんで雪菜が描かれてるの?
(ほら、昼間の雪菜の姿だよ!黒髪黒目の…)
俺は、何だか胸騒ぎがして雪菜の部屋へ駆け込んだ……「ぎぁゃーーーー!!!」
ち、違うんだ。
決して、乙女の寝室を覗こうとした訳じゃないんだ。
この本が。
ゴチン!!!
目から星が出た…。
「言い訳より、ごめんなさいが先よ!
でも。
私もゲルガーの事を…。
謝るのは、私の方ね。
ごめんなさい。ゲルガーを放ったらかしにして。
手に持ってるのは何?」
謝ってくれた。
闇の妖精なのに…。
「当たり前よ。悪な事をしたら詫びるのは基本中の基本ね。でも。本当はそんな事をしちゃダメよね」
びっくり顔で俺の言葉を聞いた雪菜のセリフ。
なるほど。
「雪菜、ごめん。
ドアをノックするの忘れたよ。
でも、凄い事があったから!
雪菜が描かれてる本を発見したんだ!!」
ミニテーブルの上に広げた本は、雪菜が星を掴む絵。
あの横顔は、間違いない。
あれ?
雪菜の顔色が悪いような…。
「これ…。
見た事あるわ。日本で…。
どこで見たかは覚えてないけど。
この絵本って…まさか日本語じゃないわよね…」
ニホンゴって何だろう。
雪菜の言葉は時折分からない。
でも、大切なモノを見つけてくれてありがとうって言われたよ。
それから、転移して外へ向かった。
バーラド村だな…きっと。
一人になったけど、待ち合わせの図書館へ向かう。
「待ってて」
初めての『待ってて』…。
図書館へ向かう足取りが、少しワクワクしてても仕方ないよね?
そう言えば、図書館のドアは誰でも開かれてるんだ。
なんと、雪菜がブルーレルを説得してベラの家に住むモノのみに許したからだ。
ま、だからこそ入り浸っでたんだけどね。
待つ間に、絵本コーナーを見渡しているとドドンと音がした。
あ、
団体さんが、一気に戻ったみたいだ。
雪菜が本を見せて説明していた。
絵本コーナーは二階にあるから見下ろしてたら、雪菜が俺に気付いて見上げて手を振り「ゲルガー!こっちに来て」と呼んだ。
それからは、質問攻めだったよ。
絵本のあった場所。
前から見ていたかとか。
他の本の事とか。
謎は深まるばかりだけどね。
いい案も出ないまま、全員暫く黙り込んでいると、
唸る雪菜は、最後に言い切った。
「この本は、星を取りに行くお話。
ストーリーも絵も全て同じなの。
違うのは主人公の男の子が私に変更されてる事以外のみ。
いくら聞いてもブルーレルは、無言を貫くし。
恐らくこの本は日本から来たんだわ。
そして、私はココヘいかなきゃいけないんだと思うの」
凄いな。
妖精でも無いのに、本の声が聞こえるのか?
ブルーレルが小声で『シッ!黙っておけ』と言う。
え?
雪菜は聞こえる事に気付いてないのか。
人間って不思議だ…。
「雪菜。見つけたよ。
この絵の場所を。
『カザエルの海の見える丘』だよ」
リカルドは地図の本を出す。
コイツ…人間以外の気配がするよな。
何者?
見つけた場所へ向かうべきだと主張する雪菜に、サイラスがとにかく、待ってくれと頼んでいる。
どうやら『雪星の雫』絡みらしい。
「私、行くわ。
たぶん、行くべきだと思うの。
それが今すぐじゃなくても」
雪菜の発言に、ブルーノとピテレが頷く。
本が少し、揺れた。
もちろん人間は誰も気づかないけど。
背後でブルーレルがニヤッと笑った気配がした…。




