ジェマの誓い…。
オマツリ。
その本当の意味を思い知る。
その情景が、今目の前に広がっていた。
雪菜の笛の音は、風魔法でアレロアが拡散していた。
しかし、必要あったのか?と思うほど広がる笛の音は、田畑を駆け抜けてどこまでも響いていたのだから。
彼女のマツリは、沢山の事を動かした。
彼女は気づいていないだろうが。
戦わず事を為す彼女に、憧憬の念が増す。
私もあの日、そんな戦士になりたいと誓ったのだから…。
私は山深く、隠れ住む戦闘部族の生まれた。
その中でも部族長の娘として、あらゆる戦い方や武器の使い方を教わった。
父は、大変厳しい師匠だった。
時には血だらけになる事も。
無論助けは無い。
そんな時の対処方法すら教えの一つだからだ。
15歳の頃には部族の中に私に敵う者は居なくなった。
父はその夜初めて褒めてくれた。
良くやったと…。
涙を見せない我々の掟に従って、私は一礼した。
そして。
その実力を世の中に問おうとドルタ帝国へ向かうと聖騎士と言うこの世で一番強い者達が居ると知る。
私はその足で彼らの下に向かい、戦いを挑む。
だが、結果は…。
リーダーであるマティにあしらわれただけで。
部族以外の者に初めて負けたのだ。
私は、燃えた。
そんな全く敵わない相手に燃え上がる私の挑戦を何度も受けてくれたマティがある日、私に問うた。
何故戦うのか?
なんの為に戦うのか?と。
それは、父から幾度も問われた事だった。
私の答えは…『誰よりも強くなる為』だ。
そう答えた私に彼は苦笑する。
「それならば、この挑戦は無駄だ。
私に勝つ事は決して出来ない。
もし、その答えを分かったら再び挑戦を受けよう。」
噛み締めた唇からは、血が流れる。
それでも、心の痛みに比べればマシ。
悔しい。
敵わない相手の問いかけにすら、答えられないとは。
生きてきた人生そのものが霞んでゆく気がした。
それから道場破りの様な真似をしたり。
とにかく、相手を選ばず戦っては勝ち続けるも虚しさは益々募る。
そして、あの日が来た。
小さな子供を相手にする日が。
魔法には、相手を操るものがある。
なんと、悪党共は彼ら(浮浪児)を標的としたのだ。国同士の戦いに利用する為に。
手に手に武器を持った(奴らが与えていた…)子供達が街の人々を次々に襲う。
まるで地獄絵。
何とかするべく気絶させる。
無駄だった。彼らは生命活動が止まるまで、襲う事をやめない。
そう言う類の魔法なのだ。
止める術を失い立ち尽くす自分の目の前で悲劇は止まらない。
子供達に倒される人々。
反撃に倒れる子供達。
その時だ。
聖騎士がその場に来たのだ。
一瞬だった。
躊躇いなど感じられないまま、子供達は凍りついていた。
「魔法が解けるまで、そのまま眠っていて」
と、マティが優しく氷の像となった子供達に囁いた。
え?
凍りついたのに?
驚く私に、別の聖騎士が囁いた。
「あれこそ、マティだけが出来る魔法だ。
仮死状態にする魔法だ。
この魔法を使った者を倒せば子供達は元通りだ。
だがな。
覚悟が無ければ我々はこの場にはいない…」
覚悟…。
それは命懸けで戦う覚悟だけじゃ無い。
恐らく…。
その後、一人きりで修行に打ち込んだ。
そんな私の下にふらりとマティがやってきた。
そしてなんと。
「ジェマ。
君を聖騎士にスカウトしたい。
仲間にならないか?」と言うではないか。
何故?
「答えは君自身が知ってるだろ。
覚悟は出来たんだね」
そして私は、真なる戦士となったのだ。
誓いを立てて…。
でも。
彼女のドレス姿は最高だった。
ラドンは、真の天才なんだろう。
彼女の沢山の落書きを、あのドレスにしたのだから。
私には、どちらが上かも分からなかったのに…。




