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森に囲まれた!  作者: ちかず
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サイラス視点

使者エイダムの毒に気づいた雪菜は、毒消しの薬膳料理を披露する。


エイダムが毒の卵を吐き出した途端、裏切り者達が騒ぐ。それを斬り捨てるエイダム。

そんな裏切り者を手当てする雪菜とブルーノ。


改めてエイダムに薬膳料理を振る舞い、その翻意を願う雪菜。


エイダムは無言のまま立ち去る


前話のあらすじはこの様になります。


別視点を載せます。よろしくお願いします。

「だから、たぶん毒だと思うの。

それも、遅延性の物。だとすると狙いは濡れ衣かなぁと。

だからこそ、私は薬膳料理で信頼回復してみたいの。

ただ、もしかすると部下の人に毒を盛った人がいて抵抗するかも。それが不安で…」


使者殿を迎えた後で、フローラの姿で会う約束をした雪菜殿に図書館へ連れてこられて開口一番がコレで。


唖然とする暇もない内容に、一同は暫く黙った。


その後、薬膳料理の手伝いを行いながら雪菜殿に尋ねた。

あのエイダムを信用するのか?と。


「あのね。私はエイダムさんを信頼している訳じゃないのよ。信頼を得ようとしてるの。

ここの世界の事情は分からないけど、味方は多いほどいいでしょ!

一人で出来る事なんてホントちょっぴりだものね」



胸を突かれた。

我々聖騎士は、各々の能力がズバ抜けている為か個人的行動が多いかもしれない。

頼るとか、信頼を得ようと努力するなど…。



しばらく考え込む俺に雪菜殿が少し頬を赤く染めて一言。


「なーんちゃって。

本当は不安いっぱいよ。サイラスとか皆んながいるからちょっと強気になってるだけ!」


姿を変えてからの彼女は、更にくるくる変わる表情の豊かさで我々を惹きつける。

心配りのあるセリフに己の未熟さを思う。


「雪菜殿。出来る限りをしましょう。

失敗を恐れず進むその力を眩しく感じます。

もちろん、サポートはお任せ下さい」


目の前の事をひとつづつか。


ルスタ国の靄鬼。

『大森林』の精霊。

『雪星の雫』。

そして、ドルタ帝国の皇位継承問題。


だが、今は使者殿の問題へ全力を。

気持ちを切り替えてサイ村長の元へ料理を運ぶ。



夕食会が開かれ、予想通りの展開となる。

裏切り者は、2名か。


いや、怪しい動きをする者がいる。

密かに当たりをつけて、ベレット殿に報告を。

こう言う事は彼が適任だ。


毒の抜けたエイダムは、薬膳料理を食べながら難しい表情を崩さない。

雪菜殿は気になるようだが、俺はそれこそが薬膳料理の本領だと感じた。


彼にとり世界が引っくり返る瞬間なのだから。

敵が味方に、味方だと信じた者達に裏切られ命を狙われる。



別れ際の雪菜殿の言葉が彼の中にどこまで入っているか。

それは、この後の展開にかかっている。


ギャビン殿と入室したベレット殿が部下に命じて裏切り者を連れ去る。

彼の異名が本当なら、イチコロだろう。


明日には敵の意図する場所が判るだろう。



見送る雪菜殿は、フローラ殿のお姿だがこちらの衣装も見事に似合っている。

柔らかに笑う彼女の表情を最大限に生かしている。


んーー。

初めてジェマの趣味を褒めたくなったな…。



ーベレット視点ー


スカウトしたい。


部下とは言わない。

出来れば同僚に…。



優秀さと、キッパリした信念の強さに久しぶりに胸が熱くなる。

知らない国の使者との対面。


しかも、あの横柄な態度なのに…。



彼女は誠意ある対応の傍らで、毒の特定までする有能さを併せ持つ。

更には毒消しを料理にまで高める技術。


あー、やっぱり我が陣営に絶対欲しい人材だ。



我が君の命の恩人である彼女。



俺の人生でも驚くべき人物に出会ったものだ。

エイダムなどどうでも良い。そんな風に気持ちを吹き飛ばす彼女の


「味方は多いければ多いほど良い」


とのセリフにやられた。

久しぶりに…な。



我が君からその話を聞いた時にハッとした。

まさか、自分の考えを改める日が来るとは。


敵を懐柔する。


その瞬間を手助けするべく、サイラス殿に指摘された者に当たりをつけた。

なるほど。


二重に三重に、部下を潜り込ませたか。


他にも怪しい者をある者は捉え、ある者は泳がせた。



そして宿へ戻って考え込むエイダムの部屋へ、その者が刀を手に乗り込んだ瞬間に我が手の者に捕らえさせる。



更にダメ押しの一言。



「雪菜殿からの心配りです」

と、クッキーとか言うお菓子を置いて。



このクッキーの旨さは、俺も初めて知り夢中になった。何せ美味い。


彼女の真意が伝わる。

そんな甘っちょろい日々を少しだけ夢見て、朝を待つ。



彼女はスノーの姿で出迎える予定らしい。



は!


まさか…我が君?!

見た事のないあの表情は…まさか。

遅すぎる、あまりにも遅すぎる春では?



動揺が激し過ぎて、出迎えの瞬間を見逃した。


だから、今の展開が読めない。



何故?

エイダムの奴は、「では、これにて」と去るのだ?



やっぱり…ダメだったと言う事か?






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