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森に囲まれた!  作者: ちかず
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雪菜の護衛は?ーゲラン視点ー

「ウッス!!」


返事をした俺は手に持った『薬草茶』を近隣の街々に配るべく駆け回る。


靄鬼に浸食された場所を特定する為の散布は、かなり捗った。薬草をサッキンザイとする?

意味など分からない。

でも、ジェマ様の指令に従う。

それこそ、我が壁護騎士団の誇り。


まぁ、よその騎士団からは脳筋などと揶揄われるが、我々は意にも返さない。

ジェマ様こそ、我らの正義!!


しかも、あの靄鬼は不気味過ぎる。

我々の筋力では太刀打ち出来ないとなると…。

ブルル…背筋に寒いものが走る。

本体は、一人のみに取り付くと聞くが未だその人物を特定出来ずに拡散を防ぐに留まっている。

薬草茶とサッキンザイのコンボは最高の効果を齎した。バーラド村の周辺の靄鬼に浸食された人々は完全回復した。

丸鳥の活躍も功を奏していた。


そんな中にあって『ラドン』というデザイナーが何故かジェマ様のお抱えになったのだ。

正義であるジェマ様に疑問を持つなど、隊員として恥ずべき行為だが…何故だ?と言う思いも捨てきれない。


デザイナーは、我々壁護騎士団に相応しくない!!


言うに言えない想いを抱えていたら、先輩に声を掛けられた。


「おい、ジェマ様のお呼びだ。

すぐさま、サイ村長の家へ急げ!!」


おおーーー!!


なんと言う事だろう。

態々のお呼びとは。。



3つ離れた村にいたので、とにかくひたすら走った。全力疾走をしたので、昼前にはサイ村長の家の前にあった。


トントン。


「あ、確かゲラン様でしたか?

ジェマ様なら、いつもの部屋におられます」


田舎の町長であるサイ殿は中々の人柄だ。

礼儀正しく、そして村人も親切だ。

ルスタ国という色眼鏡を持っていた自分が恥ずかしいくらいだ。


サイ村長の家の一角は今や対策本部となっていた。


その対策本部の扉を叩く。


トントン。


「壁護騎士団のゲランであります。

ジェマ様のお呼びにより参上しました!」


「入れ」

ジェマ様のお声に「ハッ!」と答えて入室する。


いらした…ジェマ様??


なんと、ジェマ様が見慣れない女性を羽交い締めにしているではないか!!

女性は「やめてー!そんなヒラヒラ似合わないから。干物にヒラヒラはキツすぎるー!!」


騒いでいる内容の殆どは、意味不明だが嫌がっているのは理解出来る。

か弱い女性だ。


もちろんジェマ様は論外!!

我々はもちろん叶わない。あらゆる武器に精通し、重い槍とて重さを全く感じさせずに操るその姿に惚れ惚れする隊員は多いのだ。


そのジェマ様がか弱い女性を…悩む俺の耳に気楽な声が聞こえる。



「大丈夫だ。もうすぐ決着はつく。

どうせジェマの負けだ」


何ーーーー!!

怒りに任せで勢いよく振り向いた先にいたのは、なんとイーサン様だった。


何故ココに?

『雪星の雫』の捜索をしていたのでは?


混乱する俺の目に信じられない展開が見えた。

なんと、ジェマ様が敗北したのだ。



ジェマ様が負けた。



「合気道よ。

小さな力で相手を倒すの。力が強いほど有効なのよ!」


小さな女性は、珍しい真っ黒な髪と瞳をしていた。

小さな身長より、その可愛らしさが目につく。

これは、ジェマ様のツボ。

その上、不思議な技でジェマ様に勝つ。

間違いない。



ジェマ様は、完全に彼女に落ちた…。

ジェマ様。もしかして自分も女性だと忘れたのでは?



「ねぇ。

貴方からも言ってよ。

私に警護なんて必要ないって!!」



「ダメだ。何度も言った通り雪菜には警護を付ける。我が壁護騎士団からはこのゲランだ。

探索と言う魔法を使うので敵を発見する確率が高い。無論武力も兼ね備える。どうだ!かなり有能だろう?

ゲラン!良いな、雪菜を守れ!」

 


ジェマ様……。


何と有り難いお言葉。

なんしても、この任務やり遂げてみせる!!

そんな想いと共に跪いて「必ずや」と返事をすれば隣から声がする。


「さすが壁護騎士団。この跪くスキル無しでは語れないわな。

ま、いいか。

俺なら自己紹介するか。イーサン様傘下賢樹騎士団(ケンキキシダン)のバレンだ。

俺も雪菜殿の警護となる。

あ、それからあっちがアレロア様傘下燐煌騎士団のメゼルだ。当然ながら魔法使いだ」


なんと。

各騎士団からそれぞれとは…。

ユキナ殿とは、それほどの方なのか。


それにしても腹立たしい賢樹騎士団め。

いつも、脳筋と馬鹿にする。

まぁ、あっちはその頭脳こそ武器と言う奴らだからな。


「だからー!

サイラスも何とか言ってよ。私はちゃんと無理しないしギャビンさんも居るんだよ!」


☆□×☆?????


しまった。取り乱した。

ギャビンさんと気軽に呼んでいるのは、確かにドルタ石皇帝陛下その人ではないのか?


その方をまさかの護衛にするとは…。


ユキナ殿とは…。



「雪菜。それは君の我が儘だよ。

この世界は、まだ怪しい人間もいるんだ。

君の危機が世界の危機に成りかねない。

そこを理解した方がいいな」


ええーー??

お次は精霊強国の確か王子だったような気がする。



人口密度に変化は無いが、急に空気が薄くなった気がした。


俺。やっていけるのか。

張り切って返事はしたが。



は!

目の前にあの女性が?!



「ゲランさん。

ごめんね。護衛をお願いします。

皆さんを危ない目に合わせないよう気をつけるわ」



これが。

この先の人生を変える雪菜殿との出会いだった。




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