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森に囲まれた!  作者: ちかず
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殺菌作戦開始!

ーラドン視点ー


いつもならば、いるはずの衛兵の姿が見えない。


おかしい…。


そう、後から思えばこの時に気付くべきだったのだ。静まり返る王城の様子も、外苑の並木までも全て枯れている異様な風景もおかしさのサインだった。


だが。

所詮、お抱えデザイナーであるしがない身の上。

首を切られれば、二度と陽の目は見られない。

その恐怖が、足を前へと進めた。


「ラドンか。こっちだ」


声を掛けられて、やっと人に会えたとホッとして振り返れば…なんと!


醜くぶよぶよに膨れた様な兵士らしき人の姿があった。

防衛本能だろうか…鈍臭いはずの私がすぐさま踵を返して慌てて走り去ろうとしたが時すでに遅し。


襟首を掴まれてそのまま引き摺られた。



その後の事は思い返したくは無い。

お茶を勧められ、王妃様を待つような指示だったと思うがとにかく、無理矢理飲まされた紅茶で意識が朦朧としたからだ。


家に紅茶を抱えて帰って。


独り身で良かったが、店子達に飲ませたかもしれない。



そんな独り言に近い状況説明を、何も言わずに聖騎士のお二人が聞いて下さった。

我が国では、あまり評判の良くない聖騎士。

やはり噂は、噂。嘘だったのだと理解した途端、申し訳なさが募る。



助けて頂いて、元の自分に戻った途端目の前にいた小さな鳥が言葉を発したのには驚いた。


そう言うとアレロア様からの返事は。


「あの方は、特別な人なのですよ。

丸鳥の身体を借りて、我々を助けに来て下さったのですから」だった。


確かに…あの時。


「良かったわね。でも、お風呂に入るといいな。

サイ村長さん。薬草茶を風呂に混ぜて下さい。

え?効果は薄いけど、コレも効くと思うので」


その言葉通り、お風呂にあった草たちのいい香り。意識も身体も完全に回復した感じがする。



そんな話し合いの最中に、小さな鳥とサイ村長が入室してきた。


「ねえ、アレロアさん。

いい作戦があるのよ!これなら、沢山救えるわ!」



その後の話し合いは、怒涛の展開だった。


殺菌成分のある薬草たちを抽出した水溶液を散布すると、靄鬼にやられた人々は近づいて来れない。服装にも散布して戦闘部隊を整える。


そうやって防護体制を整えたら、戦闘開始だとか。


丸鳥と。


アレロア様率いる魔法師隊[燐煌騎士団(リンコウキシダン)

ジェマ様率いる前線部隊(別名戦闘狂集団)[必護騎士団(ヒツゴキシダン)


聖騎士様直属の騎士団が、二つ動くのは稀なのだとか。


大量の薬草は、次々と『大森林』からバーラド村に運ばれてくる。


その薬草の製作の人出は、なぜかドルタ帝国の皇帝陛下の側近中の側近ベレット様が手配していた。


豪華過ぎる団体の力は、恐ろしい。

あまりの速さに、私の出来る事すら見つからない。


呆然と立ち尽くす私に、ジェマ様がポツリと。


「私は、貴方のデザイン好きよ。

貴方のデザインした服を着せたい人がいるの。

まだ、会えないけど。

いつか必ずお願いするから、よろしくね」


耳打ちしていたジェマ様は、アレロア様に怒られていた。


「まだ漏らすな。イーサンが到着するまで事の次第は不透明なのだ。

さあ、とにかくやるぞ」


落ち着いたアレロア様の発言でまさかの聖騎士イーサン殿の到着を知った。


王都に戻るまでに、出来る事をしたい。

と、サイ村長にお願いすると。


「では。

王都の地図を思い出せる限りお願いします。

それと。

王城の配置や、兵士の数など。

詳しい見取り図を作成して下さい」


私は頷いた。

覚悟は決まっていた。


店子を助けたい。

そして、命の恩人であるこの村の人々の役に立ちたいと。


デザイナーでなくても、生きてはいけるから。



そんな覚悟は、何故かこの先にデザイナーとして新たな顧客を得るキッカケになるのだが…。



ー雪菜視点ー


はぁ。

怒涛の展開だったわね。


紫蘇やドクダミなど、殺菌効果のある木々や草たちは沢山ある。

それを思い出して、散布用に殺虫剤?を作ったけど、効果が不安だったの。


良かったわ。

アレロアさんがバッチリだと言ってくれて。


ブルーノが、ベラの家の周りにある薬草を次々と運んでくれるから。

土の妖精って凄いのね。

神出鬼没とは、この事だと知ったわ。


アレロアさんの騎士団は、少し変わり種ね。

なんとなくヒョロヒョロしてない?


あ、そうか魔法使いなのか…。

なるほど。


それよりジェマさんの方よね!

あの騎士団は、無いわ。

そりゃムキムキは理解出来る。


でも。なんかゴツすぎるし、

ノリがおかしい。


返事が『ウッス!』と『おー!』だけって。

脳筋集団なの?

うーん。オタクの血が、違うんじゃない?って言うけど。


でも。

人は姿形じゃないわね。


その真価は、行動よね?!


素早くそして、しっかりとした統率は素晴らしい。近くの村から段々と王都への道へと近づいてるって報告は、数日後だもの。


どんだけなのよ。

沢山の村々の靄鬼にやられた人々は、全て回復。


さすがやるわね…筋肉集団と、魔法使い…。


その最中…。

私は、丸ちゃんに滞在出来る時間切れらしく気がつけば図書館だったわ。



隣に伸びてる丸ちゃんが無事でよかった。

(びっくりしたもの…)

今度は時間をちゃんと見なきゃね。


騎士団が王都へ近づく途中で、びっくりする情報が私達の元へ来たのよ。



イーサンさんが秘宝を持ってきたって!!

しかも、それがあれば『大森林』から脱出出来るかもと。



あの月影にあった『精霊樹』を救えるの?


高まる期待感と、少しの不安を胸に私はまた、丸ちゃんのお世話になる。


そして、

サイ村長の家へと…。



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